リニア中央新幹線の長野県大鹿村での着工への抗議声明
リニア中央新幹線計画における南アルプス長野県側工事開始についての抗議声明(PDF/107KB)
2016年11月1日
リニア中央新幹線計画における南アルプス長野県側工事開始についての抗議声明
公益財団法人日本自然保護協会
理事長 亀山 章
本日(2016年11月1日)、長野県大鹿村でリニア中央新幹線のトンネル工事の起工式が行われた。2015年の12月には山梨県側の早川町で起工式が行われ、工事が開始されている。これで、南アルプスの東西両側からトンネル工事が開始されたことになる。
日本自然保護協会はこれまで、JR東海の実施した環境影響評価に対して、自然環境保全の立場から、南アルプスの隆起量評価が科学的に誤っており、横断するトンネルは常に断層変位や隆起による地殻変位によって破壊される危険を有していると指摘してきた。
さらに、南アルプス一帯は、国立公園をはじめ、原生自然としての厳重な保全が求められる「大井川源流部原生自然環境保全地域」も存在する大規模な山塊の保護地域で、長大な道路・鉄道トンネルが全く存在しない場所は、本州では南アルプス以外にはないことから、日本の生物多様性を支え、後世に引き継ぐべき財産であると指摘してきた。科学的な誤りを認めずに、かつ後世に引き継ぐべき価値を考慮することなく工事着工に至ったことは看過できない。
2014年に南アルプスは世界的な価値が認められユネスコのエコパークに登録された。このユネスコエコパークは、10年ごとに定期的検討を受けなければならない。その際に、リニア中央新幹線の建設工事が審査基準の「自然環境の保全と調和した持続可能な発展の国内外のモデルとなりうる取組が行われていること」に整合しないとされる可能性が十分に考えられる。
地域沿線住民の不安の声や疑念、自然環境保全の立場からの多くの疑問や疑念に対して耳を傾けることなく進めてきたJR東海の態度が、世界的な価値を本来認められてきた南アルプスの価値を根本から崩すことになれば、未来世代への責任放棄である。
公益財団法人日本自然保護協会は以上の観点から、今回の工事着工に際し緊急の抗議声明を発表するものである。
以上