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2-1=0の意味するところ

2016.03.14
活動報告
 icon_satou.jpg エコシステムマネジメント室の佐藤です。
 
7日(月)より、IUCNグリーンリストに関するワークショップに参加するためベトナムに来ています。
11日は、保護地域管理の現場視察として、ベトナムで最も古い国立公園であるCuc Phuong国立公園と野生生物保護センターを訪れました。
 
突然ですが、「2-1=0」、何を指しているか想像できますか。
 

Cuc-Phuong1.jpg
 
これは、公園内の休憩エリアにあった看板にあった記述なのですが、「生き物はみな関わりあって生きているので、関わりあって生きているうちの1種を絶滅させれば、残りの種が生き残るのではなく、誰も生きられない世界になる」ということを意味しています。
一見しただけではわかりませんでしたが、腑に落ちた内容でした。ちなみに、この看板の左上にいる、パンツを履いたようなサルは、この保護地域が象徴種として掲げている「シロジリクロリーフモンキー」です。
 

Cuc-Phuong2.jpg
 
さて、Cuc Phuong国立公園の話に戻ります。
この保護地域では特に、「種の保存」に力を入れた活動が行われています。センザンコウを中心とした小・中型哺乳類・サル類・カメ類の保全が中心的に行われ、それぞれ特別な施設を持っています。1)漢方薬やペットなどとして密売されそうになっていた(された)個体の保護 2)保護した個体を野生復帰させるためのトレーニング 3)繁殖飼育を行うための施設です。
 
例えばカメに関しては、ベトナムで確認されている種が25種、内21種がこの保護地域の「カメ保護センター」で保護・繁殖されており、近隣国でもトップクラスの技術を持っています。ベトナムでは、カメを含め、少し変わった貴重な動物を飼うことが、富裕層のある種ステータスのような扱いとなっているとのことでした。しかし、ベトナムで確認されている25種のうち、24種は、ペットなどとして所有することが禁じられています。最も高い種(アンナンガメ)で、1匹約40~100万円程度(4千ドル~1万ドル)とのこと。その価格から、一獲千金を狙う密猟者が後を絶ちません。かつては保護センターにまで強盗が押し入り、カメが盗まれる事件も何度かあったそうです。そのため、このセンターには、2人の保護地域管理官が銃を持って警備にあたっています。保護・繁殖された個体は、ラジオ発信機を付けて野生に戻され、集められるデータは今後の研究や保全に活用されます。
 

Cuc-Phuong3.jpg
▲右の大きな甲羅が、約20年前のもの。左の小さな甲羅が、近年の同種のもの。乱獲により、年々見つけられる個体のサイズが小さくなっているとのこと。
 
サルに関しても、「シロジリクロリーフモンキー」を象徴種として、テナガザル類など中心とした保護、野生復帰、繁殖飼育が行われています。特に野生復帰に関しては、保護していた個体を一旦慣らすための、電柵で囲われた数haの地域をいくつか管理し、その中で徐々に慣らしてから野生に戻すとのことでした。こちらでも、野生復帰させた個体にはラジオ発信機を付け、少なくとも1年は動きを確認し、研究に活用しているとのことです。
 
シロジリクロリーフモンキーも、アンナンガメも、IUCNレッドリストでは絶滅危惧ⅠA類として記載されています。個体数の減少に歯止めをかけるべく、現場で日々カメのふ卵器の温度を調節し、サル達の餌(1日約350kgの葉)を調達し、銃を持って警備にあたり、野生復帰させた個体からの電波を探しながら深い森を歩き回る人がいます。こういった人たちの日々の仕事を支え、今後の活動をより効率よく推進していくためにIUCNグリーンリストはあるのだなと実感した一日でした。
 
 

Cuc-Phuong4.jpg
▲サルの餌を用意する現地の人達
 

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