博物館、指導員連絡会と共催で「里やまの市民調査交流会in三重」を開催しました(1月23日)
市民活動推進室の福田真由子です。
NACS-Jでは、地域の自然を守る手段の1つとして、市民自身が身近な自然の変化を見つめて保全につなげるための自然環境調査(市民調査)を推進しています。その一環で、三重県総合博物館にて、市民調査の意義を伝え、地域の市民調査活動の成果を発信するイベントを環境省生物多様性センター・自然観察指導員三重連絡会・三重県総合博物館と共催で開催しました。当日は三重県内の方を中心に、スタッフ合わせて61人が集まりました。
午前中のシンポジウムでは、モニ1000里地調査の検討委員でもある、中部大学教授の村上哲生氏に『水環境調査からみる「市民調査」の可能性」と題してお話いただきました。水環境については、特に人によって「きれい」「汚い」というものを主観的に認識しがちです。村上先生自身が関わってきた長良川河口堰やダム問題を例に、正確な情報を知り、改善の議論をするために市民調査がいかに大切かをお話いただきました。三重県は長良川河口堰も隣接し、河川や海での市民活動も多いため、「水」を通した市民調査のお話は参加者にとって身近に感じたようでした。
▲中部大学 村上氏
その後NACS-J福田真由子よりモニ1000里地調査のプロジェクトの紹介と各調査地による地域戦略や保全計画づくりにつなげた事例をご紹介し、三重県総合博物館の大島康宏氏からは、「博物館利用者と行う野外展示を活用した昆虫類調査~みんなでつくろう!ミュージアムフィールドの実物昆虫図鑑~」と題して子ども達を主な対象に、博物館の自然エリアでのチョウのモニタリング調査と標本による図鑑作成の事業をご発表いただきました。
このプロジェクトでは子ども達が調査して結果をまとめるとともに、捕獲した昆虫の標本づくりや調査結果の発表会も行うというものです。この事業でチョウの発生時期を調べてみると、図鑑で書いてあるものと違い、地域特有の状況が明らかになったそうです。子ども達のこのような体験は、すべての物事を「自ら考える」という姿勢の基礎になることでしょう。
さらに、子ども達に発表してもらうことで、自分の中に落とし込みができるというお話もいただきました。そのお話を聞いて、私もモニ1000里地調査でも積極的に若手に発表いただく機会をつくろう!と改めて思いました。発表の最後に、自然観察指導員三重連絡会の前田竜矢氏より地域の自然保護の担い手育成のための指導員講習会やフォローアップ研修会、活動団体への助成などの活動をご報告いただきました。
地域に自然保護の志を持つ指導員仲間のネットワークがあり研修も継続されている三重は市民活動も活発だと感じました。地域の自然保護を担う人材育成をされている博物館や指導員連絡会の存在は、100年事業のモニ1000里地調査にとっても重要なパートナーとなることが改めて実感できました。
▲三重県総合博物館 大島氏
▲自然観察指導員三重連絡会 前田氏
午後の活動発表会では、インターン生の木村一平さんが中心となって進行しました。今回はモニ1000里地調査をしている三重、愛知、岐阜、そして遠方の愛媛から8団体と自然観察指導員三重連絡会の会員で市民調査を行っている2団体、合計10団体が活動を発表をしてくださいました。発表者の方は、何度も説明するので大変だったかもしれませんが、直接活動者同士で話ができたことでお互いが自分のことのように話しを聞き、考えることができたのではないかと思います。また、普段は地域でコツコツと調査することが多い調査員の方にとって、他者から反応が聞けることで自分の活動への自信や次なる活動の意欲になったのではないかと思います。
現在、三重県総合博物館の学習交流スペース(無料)にて活動を紹介するポスター展「身近な自然を調べて守る『市民調査』」を2月28日まで開催中です。ポスター展では各調査団体へのメッセージも募集していますので、博物館の本展示と合わせてぜひ足を運んでいただき、地域の自然を守る団体への応援もいただければ幸いです。今回は、博物館と地域の指導員連絡会と共催で開催したことでNACS-J単独ではできなかった活動の広がりができました。今後も、多くの方と協力して、市民調査による自然保護活動を広げていきたいと思います。
▲ポスター発表会の様子
●【1/23 三重】シンポジウム・ポスター発表会
「里やまの市民調査交流会in 三重」
●三重県総合博物館