【配布資料】今日からはじめる自然観察「ミツバチ? あれ、マルハナバチだ!」
<会報『自然保護』No.550(2016年3・4月号)より転載>
このページは、筆者の方に教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可)。
ダウンロードして、自然観察などでご活用ください。
花に寄ってくるハチというとミツバチを連想する方が多いかもしれませんが、
ミツバチに比べて大きくまるまるとして全身が毛むくじゃらなマルハナバチもたくさんいます。
花が咲き乱れる春、彼らの行動を観察してみましょう。
横山 潤(山形大学教授)
マルハナバチとミツバチは同じ仲間(ミツバチ科)で、女王蜂を中心とする多くの働き蜂からなる巣(コロニー)をつくる点は似ています。花から餌(蜜や花粉)を集めて生活している点も同じです。しかし、ミツバチはダンスなどで情報を伝えて、みんなで餌を集めるのに対して、マルハナバチは一頭一頭がそれぞれ餌を集めて巣に持ち帰ります。ミツバチの巣は数年にわたって使われますが、マルハナバチの巣は長くても春から晩秋までしか使われず、その巣の女王は秋までに死んでしまいます。女王が死ぬ前に新しい女王が生まれ、雄蜂と交尾したあと、土の中で単独で冬を越します。
春はマルハナバチの女王が冬眠から目覚めて活動を始める時期です。最初は地面すれすれに飛んで、時々穴に潜り込みながら、ネズミの古巣など巣をつくるのに適当な広さのある穴を探します(自分で穴は掘りません)。お腹が空くと近くに咲いている花を訪れて蜜を吸っていきます。やがて巣の場所が決まると、この後の働き手となる最初の働き蜂の卵を産みます。この時期になると、女王は自分自身だけでなく、子どもたちのためにせっせと餌を採りに花に訪れる姿が観察されます。
花の上で何してる?
マルハナバチは実に多くの花から餌を採っていきますが、身近な植物ではキイチゴ類、オドリコソウ、ツツジ類(ドウダンツツジを含む)、エゴノキ、シロツメクサ・ムラサキツメクサ、ギボウシ類、ツリフネソウ、アザミ類などでよく見られます。
アザミのような花の上では、ひとつひとつの花に口を挿し込んで蜜を吸っていく様子をゆっくり観察できます。ハマナスやシモツケの花の上では、歩き回って花粉を体に付ける様子を見ることができます。体中に花粉が付くと、蜜を少しだけ吐き戻して、脚で体をぬぐって、後脚の平らな所に花粉を集めて団子(左ページ参照)をつくります。蜜は自分のエネルギー源とするほか、巣に持ち帰った蜜や花粉は巣の中の仲間、特に幼虫の餌となります。
ミツバチやマルハナバチのように、花から餌を採って暮らしている虫は、花粉を運ぶことで植物の繁殖を手助けしています。地球上に生育する植物の多くは、ハチ類などの虫が花粉を運ばないと繁殖できません。果樹や野菜などにも実りに虫の活動が欠かせない種類がたくさん知られています。
マルハナバチもミツバチも、スズメバチのように刺すハチの仲間です。ただ、よほどのことがなければハチの方から攻撃してくることはありませんので、特に花に訪れているところなどはゆっくり観察できます。ただし近づきすぎると、逃げてしまいます。特に春先の女王は敏感です。
マルハナバチ国勢調査協力のお願い
それぞれのマルハナバチの生息状況は、実はあまりよく分かっていません。基本的には寒い所に多いハチですので、これから温暖化の影響を受けることも心配されています。そこで、マルハナバチ国勢調査グループでは、撮った写真(GPSデータ付き)を投稿できるサイトを開設して、皆さんからの情報をお寄せいただくことで一緒に日本のマルハナバチを調べるプロジェクトを進めています。詳しくは下記ウェブサイトをぜひご覧ください。
クイズの答え:花に穴をあけて、蜜を吸っている(盗蜜)。クマバチや一部のマルハナバチなどがこのように花粉に触れずに蜜を吸ってしまうことがある。植物にとっては送粉してもらえず迷惑な行為。