身近な水鳥「ホシハジロ」も絶滅危惧種に。
国際担当の道家です。
1月10日前後に、環境省がとりまとめる全国一斉ガンカモ調査が行われました。この調査に参加している方もいらっしゃるのではないでしょうか?
さて、ガンカモの仲間で、ホシハジロ(Aythya ferina)というカモがいます。オスの頭が茶褐色・ヒトミも情熱的な赤い色なので、この時期、素人目にも目立つ身近な水鳥です。潜水が得意なカモで、越冬期に日本の河川や湖沼で見ることができます。
昨年秋のIUCNレッドリストの報道ではマンボウやアユモドキが注目されたこともあり、殆ど注目されなかったのですが、実はこのホシハジロ、今回の改訂の際に「絶滅危惧Ⅱ類」と評価されました。
これまでの評価が「軽度懸念」。要は問題なしという判定でしたので、「準絶滅危惧種」という要注意の判定を飛び越えての絶滅危惧種指定です。判定理由を細かく見ると、「過去3世代にわたり30%以上減少しており、その減少原因が不明か解決されていない」「今後3世代にわたり30%以上の減少が予期される」とのことです。
原因は、狩猟やレクリエーション、河川や湖の富栄養化などによる、水辺環境の悪化が原因とされ、減少傾向はほぼ世界的に観測され、現在の個体数は195万羽から225万羽と推計されています(バードライフ調べ、2012)。これらの根拠データには、市民によるモニタリングサイト1000のガンカモ調査のデータも活用されました。
たいていの絶滅危惧種はそもそも生息域が限定されていたりするなど環境変化に影響を受けやすい生きものであることが多いのですが、このような非常に広い地域で(アジアからヨーロッパまで)見られる身近な鳥類の絶滅危機というのは、研究者の間でも驚きをもって受け止められています。
(写真:IUCN Redlist 2015.4ウェブサイトより)
2015年秋のレッドリストではそのほかにも、ミミカイツブリ(Podiceps auritus)が同様に軽度懸念から絶滅危惧Ⅱ類に指定され、オバシギ(Calidris tenuirostris)、ホウロクシギ(Numenius madagascariensis)が危機度を絶滅危惧Ⅱ類からⅠB類へと格上げされるなどの変更がありました。
IUCNレッドリストは、世界規模の環境変化を示す「ものさし」です。身近な生き物であるホシハジロの動向を観察・記録していくとともに、これ以上、ホシハジロの減少要因となる水辺の環境悪化が進まないよう取り組むことが大切です。