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沖縄防衛局による岩礁破砕の有無の確認に関する沖縄県の判断についての質問と岩礁破砕許可取り消しの要望

2015.12.11
要望・声明

2015年12月10日

沖縄県知事  翁長 雄志 様

沖縄・生物多様性市民ネットワーク
代表 吉川 秀樹
ヘリ基地反対協議会 ダイビングチーム・レインボー
代表 牧志 治
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

沖縄防衛局による岩礁破砕の有無の確認に関する沖縄県の判断についての質問と岩礁破砕許可取り消しの要望

辺野古・大浦湾の環境保全に沖縄県がご尽力いただいていることに感謝しております。特に、日本政府との代執行訴訟の口頭弁論や国地方係争処理委員会などの対応を心強く思っており、県のさらなる取り組みに期待しております。

そのうえで、環境保全の立場から同事業に関与を重ねてきた環境団体として、さる11月17日の、沖縄防衛局の設置したコンクリートによる「岩礁の破砕を確認できなかった」という沖縄県の判断に対して、以下の質問をいたします。そして昨年8月に沖縄県知事が沖縄防衛局に与えた岩礁破砕許可の取り消しを要望いたします。

1.岩礁破砕の有無を判断できなかったとする根拠について説明してください。特にその判断の過程で、環境団体等の外部から提供された情報をどのように扱ったのか、具体的に説明してください。

沖縄県のウェブサイトにて公表された「平成26年度大浦湾コンクリート製構造物等設置状況確認業務報告書(平成27年3月)」と「キャンプ・シュワブ臨時制限区域内立入調査業務実績報告書(平成27年9月)」は、写真が並べられているのみで、調査結果の説明や考察が書かれておらず、写真のどの部分をどのように判断した結果、岩礁破砕の有無を判断できなかった、という結論になったのか不明確です。

概略版には写真の解説がつけられている部分があり、本年2月の調査結果では、「構造物が砂に埋もれている」、「構造物の下敷きになって砕けたサンゴ」が確認されており、8~9月の調査においても、「構造物がほとんど埋まっている」「砂が移動し、大きく傾いている」「構造物の海底の状況が変化している」「構造物が海底にめり込んでいる」などのようすが確認されています。これらは海底に影響が及んでいるようすです。

また、環境団体の調査においてもコンクリートブロックがサンゴを破壊し、海底の環境に影響を与えているようすが今年2月に最初に確認されて以降、確認されています。概略版や報告書本編に掲載されている多くの写真や、私達が目にしてきたものは「岩礁が破砕されている」光景です。

さらには、県の判断において、コンクリートブロックが入れられる前の状況と比較したのかどうか不明確です。コンクリートブロックが入れられる前の状況と比較して、はじめて破砕実態の解明につながるものです。従ってコンクリートブロックが投入された後の写真のみを比較しても、サンゴ礁破砕の実態を掴むことはできないと思われます。

これらの状況のどの部分をどのように判断されたのか、明確にしていただきたく思います。

2.生物の生息基盤としてのサンゴ礁が壊され、潮流を変化させている可能性があることについての沖縄県の見解を示してください。

サンゴは他の生き物の生息基盤となる生物です。その上に、他の生物が棲み場所を構成し、多様で複雑なサンゴ礁生態系が構築されていくことが知られています(西平、1998)。魚類や貝類などの漁業資源となる生物たちも、このような棲み込み連鎖(西平、1998)の環の中に位置します。また死んだ生物由来の岩盤も生きたサンゴ同様に生物に住み場所を提供する役割を果たしています。上記1に述べたことは、コンクリートブロックにより生物たちの足場が奪われているようすです。

コンクリートブロック設置による直接の破壊も問題ではありますが、コンクリートブロック設置に伴う潮流の変化を示すシミュレーションがなされていないことも問題です。今回用いられているコンクリートブロックは他の事業では用いないほどの大きさを有するものです(今年3月26日 参院内閣委員会 山下芳生議員)。設置自体により潮流が変化することも十分に考えられます。人工構造物の設置による潮流の変化により、サンゴ礁に広く影響が出た事例は数多く存在します(例:中城湾港泡瀬地区埋立事業)。また潮流の変化による影響は設置後すぐに出るとは限らず、長期的になる可能性も高いものです。

漁業資源に直接の影響が目に見える形であらわれずとも、多くの生き物が幼魚、幼生の時期を過ごすサンゴ礁や海草藻場への影響は計り知れません。漁業資源の減少やサンゴ礁の劣化が顕著にみられる沖縄県としては、少しでも多くこのような場所を残すべきであり、それが漁業資源の保護・回復につながるものであると考えます。長期的な影響や予防原則も考慮していただきたいと思います。

3.「細心の注意を払っている」かどうか、沖縄県の見解とその根拠を示してください。

今年3月の国会の答弁で沖縄県が沖縄県漁業調整規則の解釈権を持つことが確認されており(3月25日 衆議院外交委員会 赤嶺政賢議員)、また沖縄県が内規でサンゴ礁の保護を重視する立場から岩礁破砕について「細心の注意を払う必要がある」と定めていることの正当性が確認されました。

岩礁という言葉の定義は用いる学術書等によって記述が異なる場合があり、本年2月のコンクリートブロックによるサンゴ破壊が岩礁の破砕に相当するかどうか新聞紙面上等で議論になりました。しかし今回のように法制度に関わる場合、沖縄県内の岩礁については沖縄県知事が解釈権をもつ、つまり沖縄県が大切であると判断したものは他者も守る義務がある、という意味になります。

また、通常では行われない最大で45トンのコンクリートブロックが設置されたこと自体、「細心の注意を払う必要がある」とする県の指針を無視したものだと言えます。巨大コンクリートブロックの設置は、沖縄防衛局が設置した普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境監視等委員会からも「委員会の意向ではなく遺憾だ」(今年4月9日、環境監視等委員会)と指摘されています。

1、2に述べましたようにすでにサンゴ群体もサンゴ礁も破壊されており、長期的に及ぶ影響については計り知れない状況です。このような無謀な工事と事業者の姿勢は沖縄県が大切にしているサンゴ礁を「細心の注意をもって」扱ったとは到底言えません。

4.岩礁破砕の有無について誰が判断を下したのか明確にしてください

膨大な写真を照合して、弁護士に相談して、認定できなかったと報道されていますが、どのような分野のどのような見識を有する弁護士が確認されたのでしょうか。海洋や地理の分野の専門家に意見を聞いたことが報道には書かれていないことに危惧しております。

5. 昨年8月に沖縄県が沖縄防衛局に与えた岩礁破砕許可を取り消すことを要望します。

以上の質問とその質問の根拠となる議論で示したように、沖縄防衛局のコンクリートブロック投入は、サンゴ群体とサンゴ礁を破砕し、潮流の変化を生じさせる可能性を高め、沖縄県が内規で定めた「細心の注意を払う必要がある」ことを無視したものです。これでは、岩礁破砕許可を与え続けることはできないはずです。

岩礁破砕許可は県知事が持つ大事な権限の一つであり、事業者が今後さらなるコンクリートブロックを投入する際にも必要な手続きの一つとなります。沖縄県の漁業資源をはじめとする自然を、将来に渡り市民がその恩恵を享受できるよう、大切にしていただくようにご判断をいただきたく思います。

参考文献:
西平守孝(1996)足場の生態学。平凡社
沖縄・生物多様性市民ネットワーク、日本自然保護協会(2015年7月8日)普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境保全措置に伴う問題への対応についての要望書

 

参考資料(写真提供:ダイビングチーム・レインボー)

▼2015年2月撮影

20151211henoko1.jpg

20151211henoko2.jpg

▼2015年11月撮影

201512113henoko.JPG

20151211heoko4.JPG

以上


参考:普天間飛行場代替施設建設工事に係る岩礁破砕許可関連
http://www.pref.okinawa.jp/site/norin/suisan/henoko_ganshohasai/index.html

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