リニア中央新幹線計画の南アルプスでの工事着工について
保護室の辻村です。
本日、12月18日、リニア中央新幹線計画南アルプス区間のトンネル工事が、山梨県早川町で着工されました。沿線住民の方々や、登山者の会など多くの国民の疑問や懸念、不安に一つも真摯に答えることなく着工されたことに非常に強い憤りを覚えます。
日本自然保護協会はこれまで、国交省による中央新幹線小委員会や環境影響評価の手続きの中でも世界的にも突出した隆起量である南アルプスにトンネルを掘ることの危険性を科学的に指摘し続けてきました。
また、受け入れ先も決定していない大量に発生する建設残土による重金属汚染の危険性や、破砕帯での地下水の大量出水の危険性も繰り返し指摘してきました。
もし、事故や災害が発生した場合、だれが責任をとるのでしょうか。繰り返し指摘してきたわけですから、想定外などとは言わせません。しかし、国交省や事業者であるJR東海から、科学的な説得力のある回答は一度もありません。
南アルプスは人工構造物のほとんどない本州唯一の山塊であり、国立公園に指定されているだけでなく、ユネスコのエコパークにも指定された生物多様性豊かな自然環境が残された我が国の財産です。
日本列島の成り立ちとともに形成されてきたこの自然は、一度改変されれば、二度ともとに戻すことなどできません。事業者自身が認めているとおり、地下は掘ってみないと何がおきるかわからないのなら、予防原則に立ち南アルプスにトンネルを掘ることを中止するべきです。
環境大臣が、「本事業が近年稀にみる大規模開発事業であり、我が国の生物多様性に深刻な影響を及ぼす可能性を認識したうえで、個々の問題点とともに、「技術の発展の歴史を俯瞰すれば、環境の保全を内部化しない技術に未来はない。」と指摘したこの事業は、現行の新幹線の3倍から4倍の電力を使用することからも、気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定にも反する行為だといえます。即時の工事中止を求めます。