「自然しらべ2015 砂浜ビンゴ」関連企画
写真コンテスト 入賞作品発表!
「自然しらべ2015 砂浜ビンゴ」関連企画
写真コンテスト 入賞作品発表!
お子さんから研究者まで、誰もが気軽に参加できる自然しらべでは、参加者の皆さんに「対象の生きものや自然の写真」を撮って送っていただいています。写真があることで、専門家が1枚1枚写真を見て、生きものの種類や自然の状態を確認することができるため、文字だけの情報とは異なり、高い精度の調査記録を得ることができています。
送られてきた写真には、親子で楽しく自然しらべにチャレンジしている様子や、記録写真として優れたもの、芸術的な写真まで、アッと!と驚く画像がたくさんあります。 そこで、調査期間中に撮影・投稿された写真を対象に、写真コンテストを行いました。
今年は5名の方が入賞されましたのでご紹介します。
■グランプリ賞
林重雄さん (愛知県)
●愛知県田原市堀切、堀切海岸東 撮影日:2015月 7月11日
<撮影者感想>
愛知県渥美半島の太平洋側は、表浜と呼ばれ古くからアカウミガメの産卵地として知られています。アカウミガメの産卵は初夏から始まります。そのころから南方と東方からの風が吹き出し、ビーチコーミングに最適な季節となります。
ビーチコーミングの好きな私は、初夏から秋口にかけ表浜を歩きますので、アカウミガメが産卵のために上陸したトラックに出会うことがあります。アカウミガメは上陸すると産卵に適した砂丘上に穴を掘り、産卵後は砂をかぶせて、海に戻っていきます。
この日見かけたトラックは、汀線に戻る寸前に、くるりと一回転していました。こんなトラックは初めて見たので、カメラに収めました。一回転の理由は分かりませんが、浦島太郎に呼ばれたからでしょうか?
これからもアカウミガメが安心して産卵に来ることのできる環境であることを願っています。
<講評>
2015年7月、相次いで台風が襲来、林さんは愛知県田原市で、様々に表情を変える海辺の姿をカメラに収めました。一枚は7月11日、台風が近づく中、例年の通りに産卵を行ったウミガメの足跡です。たくましく産卵を行った、その跡を追いました。ストレスを与えないように産卵の写真は撮らないようにしているそうです。
もう一枚は、台風11号が去った19日、同じ海岸で、大量に打ち上げられたゴミにカメラを向けました。商品の包装に使われたビニールゴミが多かったものの、いずれもバーコードがないことから、埋められていた古いゴミが台風で流されて来たと林さんは考えています。田原市の話では、県、市、地元住民が手作業でゴミを集め、合計3㌧半の量になったそうです。
林さんは漂着物に注目して海岸を歩くことをライフワークにしています。携帯電話や土器など、時代を超えて海に流れ着くものもあれば、ウミガメの死体を発見することもあるそうです。漂着物を通して自然環境や時代を見つめる目でグランプリをものにしました。
(秋元和夫 読売新聞教育ネットワーク事務局)
■ナイスショット賞
橋本達也さん (愛知県)
●撮影場所:愛知県常滑市多屋海岸 撮影日2015年8月15日
<撮影者感想>
私が住む知多はそれなりに大きな半島を形成しているので海岸線も長いです。伊良湖岬によって外洋の影響を軽減されている一方で上流には木曽三川が流れ込んでおり、海苔の養殖が盛んです。
もう一つの特徴が砂浜が少なく、あっても奥行きがきわめて狭いというものです。そんな凝縮された浜辺を観察してみたところ、クルミを見つけたわけです。実を落としてから果てしなく旅をし、最後にこんな海岸で居場所を見つけたかと思うと感慨深いものがあります。
自然しらべ2015の砂浜ビンゴという「課題」を通じて、砂浜の観察ポイントを子どもと共有できたことが一番の成果だったと思います。クルミの他、バッタも見つけたりと様々なハッケンがあり、夏の良い思い出となりました。
<講評>
砂浜にたたずむような小さなクルミをくっきりと捉えました。クルミを強調するため、奥行きが出るように寝そべって撮影した作品です。小さなクルミに可能な限り接近して撮影したことで、砂の質感も伝わってきます。クルミのまわりに自生する低草、砂とのバランスや色合いも良く、クルミの存在感を際立たせる構図となっています。
撮影した橋本達也さんは、子どもと自転車を走らせながら、砂浜を観察するのにどこが良いのか探し回り、多屋海岸に行き着いたそうです。そこで目に入ったクルミに「こんな所まで!」と驚きながらシャッターを押し、山から海、そして浜辺へというクルミの“旅”に思いをはせたといいます。登山を通じて自然観察を始め、一眼レフを購入してから約20年、鋭い観察力と自然に対するやさしい眼差しを感じるナイスショットです。
(五味稔典 読売新聞教育ネットワーク事務局)
■海岸エコトーン賞
重松尚紀さん (福岡県)
●福岡県福岡市西区今津 長浜海岸 撮影日:2015年8月26日
<撮影者感想>
台風15号が通過した翌日に行きました。風向きや立地のせいか、思ったよりもゴミの漂着は少なく、台風一過で南国ヤシなども期待していましたが見つかりませんでした。海岸護岸は西方向に一部だけ、砂浜の背後に防風柵があり、その内側はクロマツ樹林。ちなみに、クロマツ樹林の砂の下には、元寇の防塁跡があります。探し物を目的に海岸を歩いたことがなかったので、とても楽しかったです。
ナミノコガイやフジノハナガイは多分何気なく見た事はあった気がしましたが、名前を知ったのは初めてでした。最初はなかなか見つからなかったので、見つけられてとてもうれしかったです。サクラガイ!!だと思って拾った貝殻は、調べてみるとモモノハナガイにも似ていて、どちらなのか謎のままですがとても美しい色に感動しました。また、来年の自然しらべも楽しみにしておきます。
<講評>
日本海側には、各地に長い砂浜海岸がありますが、残念ながらその多くのところで砂浜が減少しており、そのために護岸や離岸堤などの人工構築物が設置されています。その中では、福岡県の日本海側の砂浜海岸は、自然海岸を残しているところです。その美しい自然海岸をうまく切り取って表現できたと思います。
かつて古代には、この海岸は中国大陸や朝鮮半島からの渡来人が、新天地を求めて、もしくは船が漂着して、後には日本を攻めるためにしばしば上陸したところで、この海岸にも元寇の防塁跡が残っているそうですね。長い歴史を見つめてきた海岸と言うことができるでしょう。
人だけではなく、この海岸に流れ着く生き物も多く、大陸や半島の影響の強い日本の砂浜の中でも特徴ある生き物が見つかることがあります。自然しらべのように、目的をもって海へ出かけるときっと素敵な発見があると思います。こんな素敵な自然海岸をぜひ残していきたいですね。
(向井宏 海の生き物を守る会代表、自然しらべ学術協力者)
■守りたい海辺の風景賞
日野沙織さん (徳島県)
●徳島県海部郡美波町田井の浜2015年8月1日
<撮影者感想>
子供主体で調べました。海水浴で馴染みのある海岸ですが、生き物に注目して歩いたことがなかったので新鮮でした。子供はすぐにカニ探しに夢中になり水がひき、水鉄砲のように水が飛んでいるところを狙っては捕まえようとしていました。浜からすぐに堤防、堤防脇はすぐに道路があり植物が見えなかったのが残念でした。
<講評>
波打ち際で楽しそうに歩く子どもたち。微笑ましい夏休みの風景です。縦長の構図の中に広がる空と、静かに打ち寄せる波が作った砂のもようが印象的な一枚。海に囲まれた日本では昔から絶えず繰り返されてきた夏の風物詩で、砂浜ならではの開放感が伝わってきます。
全国どこにでもあったこんな素敵な場所が、次第に護岸などで埋め立てられてなくなりつつあります。
今回、日野さんがご家族で自然しらべに取組んでくださった田井の浜は、必ずしも「海岸エコトーン」が良好に残る砂浜ではないようですが、きれいな砂浜はなんとか残された、地域の人々に愛されている砂浜のようです。
子どもたちと一緒に安心して遊ぶことができるこんな海岸の風景を、ずっと残していければと思います。
(萩原正朗 日本自然保護協会自然保護部保護室)
■楽しくしらべました賞
西尾 晶子さん (福岡県)
●福岡県北九州市小倉南区吉田海岸 撮影日:2015年7月19日
<撮影者感想>
身近な海に、図鑑でしか見たことのないカブトガニが生息していることを知り、早速、北九州市主催の観察
ツアーに参加しました。つやっとした大きく丸い甲羅や頑丈な尻尾に触れ、最後は子供たち皆で海にリリースするという感動的な体験ができました。さすがに息子も、裏返しの標本の足にはギョッとした様子で、その瞬間を撮ったのが今回の写真です。
親としては笑った写真がほしかったのですが、距離感と表情で、息子の正直な気持ちの現れた1枚になりました。今回の受賞に、息子はちょっと恥ずかしそうでしたが、カブトガニとの思い出が、この受賞によって更に思い出深いものとなりました。
<講評>
つやっとした甲羅からは想像していなかったであろう、カブトガニの腹側を見てしまったときの、抜群の瞬間をとらえたカットです。砂浜の生きものの不思議さが、息子さんの表情から伝わってきます。初めての生きものとの出会いは、ギョッ!であったり、わくわくであったり、いろんな気持ちがわきあがるものですが、こんな絶妙な表情を捉えられるのも、ご家族だからこそではないかと思います。
カブトガニにとって砂浜は産卵に欠かせない重要な環境です。カブトガニだけでなく、いろいろな生きものがくらしている素敵な海辺だろうと思います。カブトガニが産卵に来て命をつないでいくように、私たちも砂浜の自然を、こども達に伝えていきたいと思います。
(志村智子 日本自然保護協会 自然保護部長)
入賞された方のうち3名には株式会社ニコンよりご提供いただいたカメラを、2名の方には書籍や海のグッズを副賞として贈呈いたしました。
【副賞】デジタルカメラ(提供:株式会社ニコン)
①Nikon1 J5標準セット(ブラック)(写真左):1台
②COOLPIX AW130(オレンジ)(写真右):2台
【副賞】図鑑(提供:学研)
○ まるごと海の生きもの (学研もちあるき図鑑) 2冊
【副賞】海のぬいぐるみ(提供:カロラータ) 2個
○海の生物のぬいぐるみ
自然しらべ2015砂浜ビンゴ!写真コンテスト選考会(2015年12月10日、株式会社ニコン会議室)
審査委員(敬称略)
共催: 五味稔典 読売新聞教育ネットワーク事務局
秋元和夫 読売新聞教育ネットワーク事務局
学術協力: 向井 宏 海の生き物を守る会代表、自然しらべ学術協力者
NACS-J事務局:志村智子 日本自然保護協会 自然保護部長
萩原正朗 日本自然保護協会 自然保護部保護室
オブザーバ(敬称略)
協力: 立木秀成 株式会社ニコン経営戦略本部CSR推進部社会貢献室長