政府による米軍普天間飛行場代替施設建設事業の強行に対する抗議
政府による米軍普天間飛行場代替施設建設事業の強行に対する抗議(PDF/559KB)
2015年10月29日
内閣総理大臣 安倍 晋三 様
内閣官房長官 菅 義偉 様
国土交通大臣 石井 啓一 様
防衛大臣 中谷 元 様
沖縄防衛局長 井上 一徳 様
環境大臣 丸川 珠代 様
沖縄・北方担当大臣 島尻安伊子 様
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
政府による米軍普天間飛行場代替施設建設事業の強行に対する抗議
これらの決定とそれに基づく処分により、沖縄県知事が有していた知事権限が失われることとなる。知事権限には、設計概要変更承認申請への判断、埋立工事開始前の事前協議、岩礁破砕許可の取り消し、造礁サンゴの特別採捕許可申請への判断など環境保全に関する重要な事項が含まれている。
今回の措置は沖縄県が日本政府に要求してきた環境保全の基準を日本政府が満たせないことを露呈したものである。
2014年、沖縄防衛局から提出された設計概要変更承認申請書のうち、美謝川の切り替え工事や辺野古ダム周辺の土砂運搬方法は、仲井真県政でさえ許可することができない至らないレベルのものであり、2014年10月に沖縄県に提出された沖縄県環境生活部長意見でも環境保全に対する懸念が払しょくできないことが示され、美謝川の切り替え工事の申請は取り下げられた。
承認の権限を県知事から取り上げた国は、今後、設計概要変更を自らの判断で承認することになるのであろうが、そのときに環境保全への対処が担保されるとは考えにくい。
また、同事業に伴う環境保全を担保するため、仲井真元知事が埋め立て承認の条件として設置された普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境監視等委員会(以下、「同委員会」)は、新聞等でも指摘されているように、中立で科学的な判断ができない状態である。
同委員会の議論をみても、成功事例の存在しない海草藻場造成や、成功の可否の確認が不可能な生物の移動を唯一の環境保全措置としてあげているが、生物の移動・移植・造成の技術は確立しておらず、確立していない技術を唯一の環境保全措置とする同委員会の姿勢は適切ではない。また、これらの環境保全措置は、事業を実施した場合にも埋立による潮流の変化はないというシミュレーションや、ジュゴンやウミガメが辺野古の海草藻場を利用する可能性が低いなど誤った推測に基づいており、このような判断を追認する、同委員会が、今後は中立で科学的な判断をし、環境保全を担う能力を有するとは到底考え難い。
沖縄県外および県内から調達する予定の2,100万立方メートルにも及ぶ埋め立て土砂に関しては、まだ環境分野の専門家との議論さえ行われておらず、2009年に沖縄防衛局が非公開で設置した普天間飛行場代替施設建設事業資材調達検討委員会において匿名の専門家が決定した事項が進められている。同事業に伴う作業が土砂調達地および埋め立て地の環境に与える影響は、科学的に検証されたものではない。
これらのことから、本計画を遂行することにより、想定外の規模で環境への影響が及ぶことが考えられる。
さらには、沖縄県知事のもとで設置された普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認手続に関する第三者委員会は、この事業の手続きにおいて法的な瑕疵があることを公表している。
今回の決定により同事業を進めることは、法律的観点、環境保全上の観点、地方自治のいずれの観点からも許されるものではない。
以上
写し:沖縄県知事 翁長 雄志様
名護市長 稲嶺 進 様