イヌワシ3ペアが利用する草原での大規模風力発電所建設計画の現状
岩手県釜石市、遠野市、大槌町にかけて広がる採草地に建設計画がある(仮称)釜石広域風力発電事業拡張計画(最大出力114000kW(2000kW級のタワー×57基設置))について、環境影響評価の国の勧告が出され、新たな段階に入っています。
ご参考:イヌワシの衝突事故も起きている岩手県の風力発電所の増設計画に対応しています
事業者による環境影響評価準備書は2015年2月27日に出され、7月2日に環境大臣意見、そしてそれを受けた経済産業省からの勧告が7月10日に返されました(インターネットで事業名で検索すれば、全文を誰でも閲覧することができます)。
この計画が特に注目されるのは、事業区域は絶滅危惧種イヌワシの少なくとも3ペアの行動圏内であり、現在も西側を中心に飛来しハンティング行動が確認されていること。また、現在稼働している2002年につくられた風力発電設備には、その時の環境影響評価では「発生は考えられない」とされていた日本初のイヌワシの衝突死が2008年に起きてしまった場所であるためです。
本来ならば、増設など認められない場所のはずなのですが、勧告では、施設建設によって利用できなくなると考えられるイヌワシの餌場の「利用が確認された代替餌場を確保する」こと、イヌワシの衝突に関しては「発生した場合には、設備を停止するとともに、原因解明と原因を解決させた上で稼動再開とする」という条件付きで認められています。さらに勧告は、環境保全措置が十全なものとなるよう客観的かつ科学的な検討と、検討に参加した専門家の助言や論点、対応方針などの報告書の作成と公開を条件づけています。
これらの勧告がどのように処理されていくか、NACS-Jは注視を続けていきます。
(参与 横山隆一)