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緊急避難させた湿地の植物のゆくえ(その5)と気仙沼の湿地や防潮堤の状況

2015.09.03
活動報告

icon_syumiya.jpg エコシステムマネジメント室の朱宮です。

 

8月28日~9月1日、宮城県の南三陸町戸倉地区寺浜で2014年4月に移植した湿地植物群落のモニタリング調査を実施しました(これまでの移植作業の様子はこちらのページの下部をご覧ください)。
 
移植から1年半が経過し、寺浜のミズアオイ(準絶滅危惧種)は今年もきれいな花を咲かせていました。昨年より開花した個体が増えていました。ただ、周辺のヨシやコガマが繁茂し、少し離れて見ると目立たないかと思います。ヨシに関しては草刈りなど管理が必要ですが、労力がかかることから今後の課題となっています。
 
 
▼2015年4月23日の寺浜の湿地

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▼2015年8月30日の寺浜の湿地

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▼寺浜の移植したミズアオイは今年も無事に開花。


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隣では「南三陸おらほの酒づくり」が行われています。この取り組みは、復旧した農地を活用して酒米をつくり、お酒を生産・販売して放棄耕作地、雇用創出、田園風景の復活、そして絶滅危惧種の保全という大きな目標のために行われています。
 
減農薬で米づくりを行っていることから、いもち病が発生したり、今年はスズメが多く実が熟す前に中の液を吸ってしまうため全部の実の一部が茶色く変色してしまっていました。去年は7反歩でしたが、今年は波伝谷と寺浜で20反歩と面積を拡大して作付けしています。被害を受けることを前提に面積を拡大しているとのことですが、せっかく植え付けたコメの収量が減ってしまうことにもなり非常にたいへんな作業だと思います。
 

▼寺浜の湿地のとなりで作付けされたイネ



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移植元である波伝谷の復旧道路工事は急ピッチで進んでおり、復元した湿地は完全に消滅しました。しかし、波伝谷では農地復旧した田んぼでおらほの酒づくりが進められており、減農薬でコメづくりが行われていることから、耕起した田んぼからミズアオイやその他の湿地の植物が復元しました。
 
当初は高台の造成ででた山土を入れていることから、復元は難しいと思われていましたが、もともと周辺に多かったミズアオイをはじめとした湿地の植物が耕起されることにより、また減農薬で米づくりが行われていたことにより、再度回復してきたと考えられます。引き続き注目していきたいと思います。
 
▼波伝谷の復旧道路
 

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▼イネと共存するミズアオイ

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28日には、「山さ、ございん」(山においでよ)プロジェクト実行委員会(南三陸森林組合、南三陸山の会、博報堂など)が主催の南三陸杉デザイン塾が開講し、その記念講演会が南三陸森林組合で開かれました。
 
塾は南三陸杉をより洗練されたデザインで加工する技術を持った人材を育てることが目的となっています。産業が根付けば人工林の活用も進むのではないかと期待されています。
 
実は、南三陸はイヌワシが見られる地域として知られており、町の鳥にイヌワシがなっていたり、戦後イヌワシの観察が始まった最初の場所があることからイヌワシ保全の象徴的な場所でもあります。日本自然保護協会は、赤谷プロジェクトでイヌワシの保全に取り組んでいることから、南三陸でも地元の林業家の方と協働した取り組みができないか模索しています。
 
 
▼「山さ、ございん」プロジェクトのセミナーでイヌワシの講演する鈴木卓也氏
 
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今回は気仙沼の西舞根の湿地の調査も行いました。
途中、小泉海岸、大谷海岸、野々下の防潮堤、陸前高田市長部漁港の防潮堤の様子も見てきたので報告します。
 
小泉海岸は14.6mの最大の防潮堤ができることで知られていますが、現在では防潮堤の工事が始まり、海岸の中には入れなくなっています。防潮堤の基礎となる土の搬入が始まっていました。
 
大谷海岸は、まだ工事が始まっておらず去年と同じ状態でした。林野庁、国交省、県、JRの土地が錯綜し、地元から代替案の提案なども出されていることから工事が進まず、去年と同じ状態のままでした。
小泉海岸の砂浜が工事により消失したので、大谷海岸が周辺では唯一にして最後の大規模な砂浜ということになります。
 
野々下の防潮堤は、去年は県が設置した防潮堤が半分完成しており、残りの半分は林野庁が設置することになっているようですが、形が違うために中間の接続部の形状に苦労したようです。現在はその中間部の工事が行われていました。
 
 
▼小泉海岸のホテルの周辺のようす。すでに防潮堤の工事が始まり砂浜は消失した。

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▼大谷海岸は、地元の調整が進まずまだ工事が始まっていないため去年と同じ状態だった。

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▼野々下の防潮堤



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▼陸前高田市気仙町長部の漁港に設置された防潮堤

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31日は、気仙沼市西舞根に移動し、去年調査した湿地のモニタリングを行いました。

高台移転やトンネルの工事により回復した湿地の一部は失われてしまいました。サンショウモやヒルムシロなどが見られた湧水湿地も農地復旧により消失しました。しかし、NPO法人森は海の恋人の畠山さんの土地はそのままの状態で保存されています。

 

▼トンネル工事の様子。



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▼農地復旧により消失した湿地跡

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▼高台からみた西舞根



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