普天間飛行場代替施設建設事業に係る工事の実施設計及び環境保全対策等についての回答文書に関して、沖縄防衛局長に抗議文書を出しました。
普天間飛行場代替施設建設事業に係る工事の実施設計及び環境保全対策等についての回答文書に関して、沖縄防衛局長に抗議文(PDF145KB)
2015年8月4日
沖縄防衛局長 井上 一徳 様
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章>
8月3日に沖縄防衛局から沖縄県に出された普天間飛行場代替施設建設事業に係る工事の実施設計及び環境保全対策等についての回答文書に関して、日本自然保護協会は沖縄防衛局に強く抗議する。
そもそも地域の自然環境は一体のものとして捉えるべきものであることから、それを改変する場合には改変区域全体の実施設計に関する情報が必要であるとする沖縄県の意見が正しいと考える。
沖縄防衛局が作成した事前協議書には建設が予定されている護岸のうち半数以下についてのみの情報が記載されているだけである。また美謝川の切り替えや土砂運搬方法の変更などの、今後県知事の許可を必要とする最終的な設計が決まっていない項目も残っている。さらに、これらについては環境監視等委員会での議論もまだ途上である。
従って、沖縄県が総合的な判断をするためには計画の全てについての最終的な情報が必要であるとする沖縄県の主張を支持する。
沖縄防衛局は那覇空港滑走路増設事業の際の協議を引き合いに出し、一部の情報をもとに段階的に協議を行うことが正当であるとしているが、この2つの事業を同列に扱うことは適切ではない。
沖縄島周辺海域のサンゴ礁は危機的な状況にあり、いずれのサンゴ礁も沖縄県の大事な資源であり保全を必要とするが、普天間飛行場代替施設建設事業と那覇空港滑走路増設事業の対象地を比較した場合、保全すべき自然の状態には大きな差がある。
これは沖縄県自然環境保全に関する指針からも明らかであり、普天間飛行場代替施設建設事業の対象地は同指針のランクⅠに相当する。一方で那覇空港滑走路増設事業の方はランクⅠにかかる部分もあるものの、大部分はランクⅢである。
沖縄島周辺で最大の規模を誇る海草藻場や、絶滅危惧種であり国の天然記念物であるジュゴン及び新種や国内初記録の生物種が多く発見されている普天間飛行場代替施設建設事業の対象地と、すでに滑走路が1本ある那覇空港滑走路増設事業とでは対象地の自然度が異なることから、前者について沖縄県の扱いがより慎重になることは当然である。
また、当協会をはじめとする環境団体や専門家が指摘しているように、埋め立て承認願書に書かれている環境保全措置および環境監視等委員会で検討されている環境保全措置では、生物多様性豊かな辺野古・大浦湾の生態系を守ることは困難である。
沖縄防衛局には事前協議書の取り下げを求め、また沖縄県には総合的に判断ができる情報が提供されるまで協議に応じないこと、及び、同事業の早期取り消し又は撤回を求める。
写し:沖縄県知事