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那覇空港滑走路増設事業による沖縄と奄美の自然破壊について再考を求める要望書を出しました。

2015.07.17
要望・声明

那覇空港滑走路増設事業による沖縄と奄美の自然破壊について再考を求める要望書(PDF/193KB)

 


2015年7月17日

沖縄県知事 翁長 雄志 様

沖縄・生物多様性市民ネットワーク
代表 吉川 秀樹
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

那覇空港滑走路増設事業による沖縄と奄美の自然破壊について再考を求める要望書

沖縄県は、今月15日、那覇空港滑走路増設事業の事業者の沖縄総合事務局が申請していた県外からの石材調達を承認した。県外からの石材調達は、外来種の導入というリスクを含む。滑走路増設事業自体でも環境への大きな負荷が避けられないなか、なぜ外来種の導入という更なるリスクを沖縄県は背負うのか、県民に説明がないまま承認がなされた。

県外調達の理由として2014年の台風や冬場の高波等の影響による工期の遅れがあげられている。しかし沖縄県には、毎年台風が「接近」しており、2014年には10回の接近があったが、2013年には9回、2012年には12回、2011年には7回の接近があった(注1)。また冬場の高波も沖縄においては通常の自然現象であり、他の年の冬場の「波浪概要」を比較すると、2014年の冬場に高波が顕著であったという判断はつきにくい(注2)。よって2014年における台風と冬場の高波の影響により工期が遅れたという説明は納得し難い。これは、工事施行スケジュールの設定が沖縄の気象状況を考慮したものではなかったという不備を示すものであり、県外からの石材調達の理由には成り得ない。

以前に報道されたように(琉球新報 2013年1月15日)、工期を短縮することにより環境への負荷が増える。その理由として1)夜間作業,複数箇所の同時施行、2)新たな仮設航路設置のための浚渫、3)ダンプの通行量が1日400台増えるなどの工法の変更があげられており、国土交通省の担当者(当時)も、工期短縮により環境負荷が増大することを認めていた。

また、今回の判断は、7月13日、沖縄県議会が可決したばかりの県外土砂規制条例の精神にも反する。これまでも様々な対策を取ってきたにも関わらず侵入してきた数々の外来種に対して、沖縄県はさらなる対応を強いられてきた。可決された同条例や県の外来種対策の経験が今回の判断に生かされなかったことは大変遺憾である。

今回の承認にあたり、県外産石材使用の際の環境対策については、6月4日の環境監視委員会において示された「県外産の石材は、(中略)ダンプに乗せた状態でシャワーで水を流す予定であり、90秒から180秒間洗い流す」「港から搬出する際の目視確認を行う」とあるが、これらの対策で十分に効果があるのか疑問に思わざるを得ない。

環境保全の視点からは、那覇空港滑走路増設事業の遂行自体を中止いただきたいが、それがかなわない場合でも、同事業による環境への影響を、時間をかけて丁寧に検証して、影響を最小限にとどめるべきである。

さらには、奄美の山を削って沖縄の海を埋めるということは自然保護上、許されることではない。日本が議長国をつとめ2010年に開催された第10回生物多様性条約締約国会議(COP10)で合意された目標「愛知ターゲット」の目標9「外来種の根絶」、目標10「脆弱なサンゴ礁の保全」、目標12「絶滅危惧種の保全」のいずれにも背く行為である。両島は豊かな自然を守るため、世界自然遺産登録を目指す活動を続けている。しかし、このままでは、2つの島の貴重な自然を同時に失うことになり、二重の自然破壊を招くこととなる。

沖縄県21世紀ビジョンや生物多様性おきなわ戦略には、沖縄らしい自然と歴史、伝統、文化を大切にする島を目指すと記されている。生物多様性豊かな沖縄の自然を守り、兄弟島とも言われる奄美大島も同様に扱っていただきたい。奄美大島と沖縄の自然を大きく破壊する本事業について再考し、最低限でも、今回制定された県外土砂規制条例がきちんと適用されることを求める。両島が自然を守り、真の意味で世界自然遺産登録されることを切に願う。

よって以下を沖縄県に要望する。

  • 1)県外からの石材調達について、総合事務局の理由を沖縄県はなぜ受け入れたのか、また外来種の導入という大きなリスクをおかしてまで、前知事のもと決められた工期通りに事業を実施させようとするのか、県民に説明すること。
  • 2)奄美大島と沖縄の自然を大きく破壊する本事業について再考すること。少なくとも本事業における県外からの石材調達については、県外土砂規制条例の施行前の搬入であっても、同条例を十分に反映させること。
  • 3)世界自然遺産登録の取り組みに向けて、県外からの石材調達事業を含む本事業がどのような影響をもたらすのか、県民に説明すること。

注1:台風の発生数と沖縄県への接近数(1951年〜)沖縄気象台
http://www.jma-net.go.jp/okinawa/menu/syokai/toukei/data/hassei_sekkin.pdf
注2:月別波浪概要 気象庁(国土交通省)
http://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/db/wave/monthly/monthlywave.html?year=2014&month=10

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