「普天間飛行場代替施設建設事業に係る 環境保全措置に伴う問題への対応についての要望書」を出しました。
普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境保全措置に伴う問題への対応についての要望書(PDF/197KB)
2015年7月8日
沖縄県知事 翁長 雄志 様
知事公室長 町田 優 様
辺野古新基地建設問題対策課長 池田 竹州 様
土木建築部長 末吉 幸満 様
農林水産部長 島田 勉 様
普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認手続に関する第三者委員会委員長
大城 浩 様
沖縄・生物多様性市民ネットワーク
代表 吉川 秀樹
河村 雅美
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境保全措置に伴う問題への対応についての要望書
辺野古・大浦湾の環境保全に沖縄県がご尽力いただいていることに感謝しております。特に、沖縄防衛局への海上作業調査停止の指示や日本政府との交渉などの対応を心強く思っており、県のさらなる取り組みに期待しております。
そのうえで、私たち沖縄・生物多様性市民ネットワークと公益財団法人日本自然保護協会は、環境保全の立場から同事業に関与を重ねてきた環境団体として、沖縄県に以下の2点を要望いたします。
1. 現在ある資料に基づいて岩礁破砕許可の早期取り消しを
知事は、沖縄防衛局が行ったボーリング調査に伴う巨大コンクリートブロック投入のサンゴ礁への影響について、県独自の調査結果を得るために臨時制限区域内に入れるよう、米軍との調整を外務省に依頼し続けています。しかし、私達は、この時点での臨時制限区域内の調査は不要であると考えます。4月21日に公開された普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境監視等委員会で用いられた資料「ボーリング調査(浮標設置)に伴うサンゴ類への影響について」によってある程度のことは分かります。その資料をもって、県が与えた「岩礁破砕許可」の条件「細心の注意を払う必要がある」を沖縄防衛局が遵守してこなかったことは結論づけられると私達は考えます。
沖縄防衛局が海域調査を実施した今年2月より、もう5か月以上も時間が経っているため海の中の様子は変わっていると思われます。米軍の許可を求め続け、許可が下りる日が来ても、県独自の調査の目的や意義が明確ではありません。従って、今、手中にある資料を元に判断することを要望致します。
今年3月の国会の答弁で「都道府県漁業調整規則の解釈については、各都道府県が判断する」ことが確認されており(3月25日 赤嶺政賢議員)、沖縄県が内規でサンゴ礁の保護を重視する立場から岩礁破砕について、「細心の注意を払う必要がある」と定めていることの正当性が確認されました。
また、沖縄防衛局が浮具や浮標の固定のために使うコンクリートブロックの具体的な重さや大きさを県側に説明していなかったことも、国会の答弁で明らかにされています(3月26日 山下芳生議員)。さらに県内の同種事業で通常使用されるものを上回る大きさのブロックが辺野古沖に投下されているという実態、つまり、那覇空港滑走路増設事業と比べ、辺野古沖では15~45倍の重量のブロックが浮標の固定用に使われているということも明らかになりました。
このような無謀な工事と事業者の姿勢は沖縄県が大切にしているサンゴ礁を「細心の注意をもって」扱ったとは到底思えません。私達は県が沖縄防衛局に出した岩礁破砕許可をただちに取り消すことを求めます。
2. 環境監視等委員会に対してさらに積極的な関与を
私達の要望に応えていただき普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境監視等委員会に対してより積極的に関与いただきありがとうございます。議事録を事業者に提出、公表させることは重要かつ本質的なことであり、県の関与により、少なくとも議事要旨の提出や公表に対する姿勢が以前よりは改善されました。
しかしながら、これまでに公表されてきた議事要旨、特に6月26日に公表された第4回の会議の議事要旨においては、委員が自らの役割を理解していないことが、より明確になりました。この1点だけでも、公有水面埋立承認の取り消しもしくは撤回に値すべき重大な事項であると私達は考えます。
環境監視等委員会を有効に機能させるためには、必要な情報が適時に提供され、委員の説明責任が担保された運営体制のもとで議論が行われることが必要です。沖縄県は、留意事項を求めた当事者であることを再度認識し、沖縄防衛局の同委員会の運営姿勢を厳しく監視することを求めます。2015年4月30日付けで提出致しました「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境保全措置の監視をより積極的に行うことを求める要望書」に記しましたように、沖縄防衛局に対して、工事中の環境保全対策等について県や関係市町村への報告(資料提出を含む)を適時に確実に行うよう要求していただきたい。さらにその内容を県として検証し、検証内容を沖縄防衛局と環境監視等委員会に提出し、市民に公開して下さい。
日本生態学会をはじめとする19の学術団体から2014年11月に「著しく高い生物多様性を擁する沖縄県大浦湾の環境保全を求める19学会合同要望書」が前知事や沖縄防衛局長宛に提出され、生物多様性に富む同海域の重要性とその保護の必要性が示されています。さらに最近公表されましたKasuya-Abe Document(2015)においては、前知事による埋立承認において科学的根拠と位置付けられた環境アセスメント(環境影響評価)におけるジュゴンや海草藻場の検証に多くの問題があることが指摘され、かつ同海域の重要性が説明されています。
しかし、この貴重な生物が多く棲む同海域は今、法的手続きの条件を無視したボーリング調査と事業者自身が不要であると述べている仮設岸壁の建設により日々失われています。そしてその後には、科学的正当性を欠いた環境アセスメントに基づいた埋立工事の開始という、沖縄にとって取り返しのつかない状況が待っています。一刻も早く作業が中止されるよう、動いていただくことお願いいたします。
参考:
1)辺野古岩礁破砕 巨大ブロック隠して手続き
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-03-27/2015032701_02_1.html
2)米国を相手に行ってきたジュゴン訴訟の過程で作成された文書
For the Sake of Okinawa Dugongs: The Kasuya-Abe Document(PDF/2.5MB)
now available on the internet
http://okinawaoutreach.blogspot.jp/2015/06/for-sake-of-okinawa-dugongs-kasuya-abe.html