リニア中央新幹線問題で講演と現地視察をしてきました。
保護室の辻村です。
6月6日の土曜日、「南アルプスとリニアを考える市民ネットワーク静岡」主催の勉強会に参加し、講演させて頂きました。この勉強会は静岡県内の山岳4団体の共催で、登山関係の方も多く参加されていました。
南アルプスはこれまで、道路や鉄道といった横断工作物がほとんどなく、まとまった自然が残る山塊としては本州唯一といっていい場所です。この何もないことが高い価値であり、国立公園をより拡充するべき場所であることをお話しました。また、環境影響評価の手続きにも課題は多く、守るべき自然が決して守られないことや、大井川の水位が減少して下流の受益地には大きな影響が出ることもお話しました。
現状では工事の認可が出されていますので、この計画を止めることは非常に難しい局面であることは事実ですが、この状況の中でできることは何か、という建設的な議論ができたと思います。
大きな地震がいつおきても不思議でない状況で、いくつもの活断層を横切るこの計画は見直すべきですし、今は新規のインフラ整備よりも既存のインフラの見直しを優先するべき時だと思います。
▲大鹿村から赤石岳を望む
翌7日の日曜日は、リニアのトンネルの坑口ができる大鹿村で野鳥の会主催の探鳥会があり、これにも参加してリニアの問題をお話させて頂きました。
探鳥の時間は2時間弱でしたが、イヌワシやクマタカなどの希少猛禽類の飛翔を確認することができ、改めて大鹿村の自然の豊かさを実感しました。
つい先日まで地質調査の水平ボーリングが実施されていた場所も見に行きましたが、しっかりと閉めた穴から地下水がしみ出しており、小規模な工事ですでに水脈を切っていることがわかりました。本格工事が始まったときにはどうなるのか、想像に難くないと思います。
この場所は小規模な扇状地のようになっている緩斜面で、もともと浅部の地下水が豊富な場所であることが地形的に読み取れます。南アルプス周辺ではこうした地形や、地下水を豊富に含む破砕帯(断層で岩が破砕された地質)が広く存在します。
▲水平ボーリングの穴
▲ボーリング地点の地形
自然は一度失うと、元通りの姿に戻すのは至難の業…というよりも不可能だと思います。後世に残すべき風景は何なのか、現在を生きている私達一人一人が、未来の世代から問われているのだと思います。私は、今の風景を残したいと思います。