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北海道のトムラウシで計画されている地熱発電に関するシンポジウムに参加してきました。

2015.04.20
活動報告

icon_tsujimura.jpg自然保護部保護室の辻村です。

4月18日に、北海道の新得町で「大雪山国立公園トムラウシの地熱発電計画を問う」シンポジウムが開催され(主催:新得おもしろ調査隊・十勝川源流部を考える会・十勝自然保護協会)、パネラーとして参加してきました。

大雪山国立公園のトムラウシ地区では第3種特別地域で地熱発電の開発計画があります。調査の予定地域のすぐ東側には日本で5か所しかないうちの1つである原生自然環境保全地域があります。非常に原生的な自然環境が残されている地域での開発計画であるため、地元の方々も非常に危惧しています。

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シンポジウムではまず、北海道自然保護協会会長の在田一則氏(左写真)が「地質学から見た地熱発電」と題して講演を行い、地熱発電の資源が貯留されている地下の構造についての解説をされ、そのうえで地下環境の不確実性についてのご指摘がありました。

続いて、大雪と石狩の自然を守る会代表の寺島一男氏(右写真)の講演では、地熱発電の日本での現状や同じ大雪山国立公園内で計画されている白水沢での地熱計画の現状と問題点が報告されました。

私からは、「国立公園における地熱開発の規制緩和の経緯と問題点」について講演をさせて頂きました。環境省による「地熱発電の自然環境への影響検討会」での科学的な議論による結論と、規制緩和を認めた環境省通知との不整合やさらなる規制緩和を求められている現状について報告させて頂き、実際の自然度と国立公園の地種区分との間には大きなギャップがあるため、区分ごとの開発可否判断ではなく、場所ごとの自然度にあわせた可否判断が必要であることなどを指摘しました。

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当日は、80人を超える地域の方々が集まり、この問題の関心の高さが示されましたし、会場からも温泉への影響への懸念や地域にあった再生可能エネルギーの在り方について活発な発言がありました。

環境省の通知では地元の合意形成を果たすことが優良事例の条件になっていますので、こうした地域の声に事業者がどれだけ真摯に対応するか、できるかがカギになります。この模様は、北海道新聞にも掲載されましたので、多くの方に自然環境の保全と両立した形でのエネルギーの在り方を考えるきっかけになったのではないかと思います。

翌日の19日には、帯広でもシンポジウムが開催され(主催:十勝自然保護協会)、30名ほどの方に集まって頂きました。この日の講演は私の話だけでしたが、前日の内容に加えて、国立公園でなぜ自然を守る必要があるのかについてもお話しさせて頂きました。

生物多様性が豊かになった奇跡の島国日本の自然の個性を考えれば、これ以上の自然破壊はやめるべきです。地球温暖化によって失われる自然を守るという目的で進められる再生可能自然エネルギーの開発行為が、守るべき自然を破壊することになっては本末転倒だと思います。

シンポジウムの様子は北海道新聞にも掲載されました。

「トムラウシの地熱開発を批判 新得町 自然保護団体がシンポ」
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/area/doto/1-0125335.htmlリンクきれ

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