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普天間飛行場代替施設建設事業の環境保全に関する要望を出しました。

2015.01.23
要望・声明

普天間飛行場代替施設建設事業の環境保全に関する要望(PDF/175KB)

 


2015年 1 月23 日

沖縄県知事 翁長 雄志  殿

沖縄・生物多様性市民ネットワーク
代表 吉川秀樹
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山章

普天間飛行場代替施設建設事業の環境保全に関する要望

公益財団法人日本自然保護協会と沖縄・生物多様性市民ネットワークは、沖縄県に対して、普天間飛行場代替施設建設事業について公有水面埋立申請承認の際に附した留意事項を沖縄防衛局に遵守させること、および沖縄県が「沖縄県の自然環境の保全に関する指針」ランク1(厳正な保護を図る地域)に指定している辺野古・大浦湾の、環境保全を積極的に行うことを要望する。

 

1.環境監視等委員会への積極的な関わりについて

普天間飛行場代替施設建設事業について公有水面埋立申請承認の留意事項には、「環境保全対策等について、各分野の専門家から構成される環境監視等委員会(仮称)を設置し助言を受けるとともに、特に、外来生物の侵入防止対策、ジュゴン、ウミガメ等海生生物の保護対策の実施について万全を期すこと。」とあり、これにもとづいて環境監視等委員会が設置されている。しかしながら、現在行われている作業をみると、とても保護対策が取られているとは言えない状態である。沖縄県は留意事項を課し、埋立を承認した責任者として、環境監視等委員会の進捗を把握し、保護対策が取られていない場合には事業者に異議を申し立てる等、その責任を果すべきである。

同委員会はこれまでに3回行われているが、2回目の会合の議事要旨が未だに公開されておらず、例えば、昨年5月に再び辺野古・大浦湾の建設予定地で確認されたジュゴンの食痕をもって示された同域でのジュゴンの生態について議論されたのかどうかが不明確である。沖縄県からも、第2回目および第3回目の議事要旨の公開を求めるべきである。

留意事項には上記に続き、「またこれらの実施状況について県及び関係市町村に報告すること」と記載されている。しかし、実施状況の報告についても実現されているとは言い難い。沖縄県が主導し関係市町村への公開の確保を行うことを要望する。

 

2.ジュゴンの保全措置について

昨年5月~7月に自然保護団体が行ったジュゴンの食痕調査により、ジュゴンがこれまで以上の高い頻度で埋立予定地内および周辺を餌場として利用していたことが確認された。また環境影響評価後の沖縄防衛局の事後調査によっても、2012年4月、5月、6月、2013年3月、5月、11月に埋立予定地をジュゴンが餌場として利用していることが確認されている( U.S. Marine Corps Recommended Findings 2014)。

このようにジュゴンが採餌域を拡大し、大浦湾の埋め立て予定地内および周辺を利用していることは、沖縄防衛局の環境影響評価では予測されていたとはいえない(日本自然保護協会2014年7月9日記者会見資料)。この環境影響評価の予測とアセス後の調査で示されたジュゴンの生息状況の乖離について、沖縄県は沖縄防衛局からの見解を求めるのは勿論のこと、沖縄県独自の見解も示すべきである。

環境影響評価書(補正後)には「工事中は、ジュゴンのその生息範囲に変化がみられないかを監視し、変化がみられた場合は工事との関連性を検討し、工事による影響と判断された場合は速やかに施工方法の見直し等を行うなどの対策を講じます」とあるが、沖縄防衛局は埋立承認後に行ってきたボーリング調査は工事には当たらないとし、「対策」を講じていない。また沖縄県も環境NGOとのこれまでの交渉において防衛局の見解を踏襲する認識を示してきた。しかしボーリング調査やブイ設置を含む沖縄防衛局の作業は、辺野古・大浦湾におけるジュゴンの生息範囲に変化を与えている可能性が高い。

国が指定する絶滅危惧種ならば工事前の調査の時点でも、その生態について監視されるべきであり、保全措置が取られるべきである。沖縄県は埋立てを承認した責任者として、環境影響評価書(補正後)に記載された「対策」を沖縄防衛局に行わせるべきである。

国が指定する絶滅危惧種ならば工事着工前の調査の時点でも、その生態について監視させるべきであり、保全措置が取られるべきである。沖縄県は埋立てを承認した責任者として、環境影響評価書(補正後)に記載された「対策」を沖縄防衛局に行わせるべきである。

上記、1と2は密接に関係している。メディアでも大きく報道されたジュゴンの同海域の利用頻度の増加とその保全対策について、環境監視等委員会で議論がなされたのか、それとも事業者が議題にあげなかったのか、沖縄県は明らかにさせる必要がある。同委員会への報告、同委員会での検討がなされたかどうかは留意事項が機能しているかどうかを検証する手立てとなる。機能していない場合には、公有水面埋立承認自体の正当性が問われることになる可能性があることを、沖縄県自体が認識し、沖縄防衛局へも伝えるべきである。

 

3.仮設岸壁について

昨年11月末になり、設置が明らかになった。約300mの規模の「仮設岸壁」は、仮設とは名ばかりの実質的な埋め立てである。沖縄県としてはこの「仮設岸壁」をどのように考えているのか、見解を示す必要がある。さらにこの「仮設護岸」については環境監視等委員会で早急に議論されるべきである。沖縄県は留意事項を課し、埋立を承認した責任者として、環境監視等委員会にも議論をさせ、その内容を把握する必要がある。

海の埋め立ては不可逆的であり、一度埋め立てが行われた自然は二度と元に戻らない。

昨年10月末にラムサール条約事務局から日本政府宛に届いた手紙からも、この場所が世界的に貴重であり、この事業の進捗に世界中が注目していることが伺える。また日本が議長国であった生物多様性第10回締約国会議にて採択された愛知ターゲット目標10「脆弱なサンゴ礁の保全」は今年2015年に達成することが当初の目標であった。目標の達成が難しくとも、今年2015年に自らサンゴ礁を埋める行為は国際社会の流れに逆行することである。

沖縄県には、大切な財産であるサンゴ礁を大事にしていただきたい。

 

以上

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