人と人がつなぐ全国調査・データが紐解く里やまの姿~モニ1000里地調査全国サイト間交流会2015・後編~
こんにちは、保護・研究部の後藤ななです。
前編に引き続いて、モニタリングサイト1000里地調査(モニ1000里地調査)の全国サイト間交流会の様子をお届します。
2日目となる1月18日には、モニ1000里地調査の関係者だけではなく一般の方も交えたシンポジウムとポスター発表会を開催しました。
地元北九州市にある「平尾台」では、調査を長く楽しく続けていくために、調査のルートごとに足腰が弱い人でも歩けるコースや標高差があって丈夫で元気の人向けのコースなどとコース分けをしたり、皆さんが趣味の写真を調査後に見せ合って意見交換をしながら楽しんでいる様子をご紹介いただきました。
各地の活動報告の最後には、大分県内での地域版サイト間交流会の様子をご紹介いただきました。この県内交流会の場は、市民調査員の交流や普及の場であることはもちろん、県内の密な情報交換の場としてシカの侵入具合の共有やその対策について話し合う場となっているそうです。
シンポジウムの最後には、モニ1000里地調査の検討委員もされている国立環境研究所の竹中明夫さんより「市民の調査を自然の評価と保全に活かすには」というタイトルで、市民調査の特徴や長い期間、広い範囲で調査することの重要性について発表をいただきました。
竹中さんの発表で印象深かったのが、「そこに住む多くの生き物と“顔見知り”になる」という言葉でした。市民調査の特徴である「地元で密に」自然を見ることの大切さが紹介されていたところで、例えば、過去に一度しか来たことがないような風景なら、もしその間に起こった小さな変化には気づけないことがあろうかと思います。しかし、もしその場所に通い詰めて、多くの生きものたちと“顔見知り”になっていれば「○○を見かけなくなった/初めて見た」といった、その変化は一目瞭然かもしれない、というものでした。
モニ1000里地調査は、全国で毎月、毎週、もしかするとほぼ毎日、調査サイトである里やまに通ってらっしゃるような方々も調査に参加されています。データとして集計するだけでは気付けない自然のとても些細な変化やその原因にも、そうした市民調査員の皆さんと一緒に調査しているからこそ、気付くことができることがあります。モニ1000里地調査が、そうした細やかで丁寧な自然を見つめる目がつながって、全国調査が築き上げられていることを改めて認識しました。
午後からは、シンポジウムに引き続き、会場に展示されている各地の調査活動を紹介したポスターを用いたポスター発表会を行いました。会場には、北海道から熊本までの全国27ヵ所からのポスターが集まりました。発表会では、調査員の方同士が情報交換をしたり、専門家の方と議論を深めたりと、どのポスターの前でも白熱した議論が繰り広げられていました。中には参加されていた一般の方から「新しく調査に参加したい」という出会いも生まれたようです。
ポスター発表会は、今回初めての試みでしたが、それぞれが会話をしながらお互いの活動の様子を知り合うことができ、新しい輪が広がる場となりました。
モニ1000里地調査は、2004年から調査を作り始め、今年度で10年目となります。全国の調査サイトでは季節が巡る度に生きものたちのドラマが溢れ、そして、それらが地元の市民調査員の方々の手で丁寧に紡がれ、綿々と全国データとなり蓄積しています。これからも、そのデータから少しでも多くの里やまの「今」を明らかにし、また市民調査員の皆さんと協力しながら、豊かな里やまを保全する力に変えていきたいと思います。
これからも、全国サイト間交流会は、順次全国で開催していく予定です。お近くで開催の際には、ぜひ身近な里やまでの市民調査の活動を知る機会として、ご参加ください!
※会場の北九州市立いのちのたび博物館では、2月8日(日)まで、企画展「市民が見つめ、調べ、支えてゆく 身近な里やま~モニタリングサイト1000里地調査の取り組みと5年間の成果~」が開催中です。お近くの方はぜひお立ち寄りください。