「地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する基本方針(案)及び法律施行規則等(案)」に対する意見を出しました。
「地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する基本方針(案)及び法律施行規則等(案)」に対する意見
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
平成26年6月に地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律が制定された。この法律によって、身近な自然環境や歴史遺産の保全活動が、生物多様性地域戦略のような公的活動と連携することによって、地域の自発的な取組が促進され、自然環境の保全と持続可能な利用がより一層促進されることに繋がるのであれば意義がある。しかし、今般公表された「地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する基本方針(案)及び法律施行規則等(案)」では、こうした活動を抑制しかねない内容が含まれていると思われるため、以下、意見する。
1.該当箇所
地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律施行規則等(案)の、1.(3)「自然環境トラスト活動を行う区域においてあらかじめ協議を要する公共施設等及び協議先となる当該施設等を管理する者の規定」
2.意見
あらかじめ協議を要する公共施設及び協議先となる当該施設を管理する者の規定は、削除するべきである。
3.理由
これまでトラスト活動をはじめとする、地域の自然や文化遺産を保全する活動は、身近な自然環境や歴史遺産の保全の手法として取り入れられてきた経緯がある。こうした活動の中では公共事業に対する自然保護活動としての手段としてもトラスト活動が行なわれてきた。今回の規定では、既存もしくは今後の計画として存在するダム事業や海岸での護岸事業等が協議の対象とされているため、地域の自然・文化遺産を守る活動が、こうした公共事業の対象地となった場合、トラスト活動そのものが実施できないことに繋がることが想定できる。優れた自然環境の保全・創出、希少な野生動植物の保護、生態系を攪乱する外来種の防除、自然環境調査、環境教育、普及啓発、利用上必要な施設の管理等の事業等をすすめようとする地域の活動が、制限されかねない規定であるため、本規定は削除すべきである。
1.該当箇所
地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する基本方針(案)のⅠ-4-(1)「検討にあたっての視点」
2.意見
これまでの補助金との整合性や、不具合がおきないようにする整理検討が必要
3.理由
既存の地方自治体が集めた入域料は、国に補助金をもらっている事業に使うことはできない。例えば富士山では、山梨・静岡両県が環境保全協力金を集めている。利用者からは、トイレや登山道などの整備に使ってほしいという希望が多いが、国から補助を得ている事業にこれを使うことができず困っている。さらには、入域料を徴収した場合は、自治体の特別会計に入ることとなるが、これまで自然再生事業や保全活動に使われてきた一般財源による予算との整合性の整理がなされないと、特別会計があるから一般会計は削減となり、その結果、十分な予算と人員を配置できないことが想定される。つまり、お金をとったものの、使えず、かつ必要な予算が確保されないという事態を引き起こす可能性がある。このため、基本計画ではこうした想定できる事態への考え方を明記するべきである。
以上