赤谷の森で侵入初期段階のニホンジカの予防的な対策の検討を始めました。
ニホンジカは過去30年で分布域を急速に拡大し、過剰な摂食によって、植物が地域絶滅したり、林床植生が消失し、土砂崩れが起きるなど生態系だけでなく私たちの暮らしにも大きな影響を与えています。シカの対策は通常、被害がひどくなってから実施されるため、元の状況に回復することは困難です。そのため、ニホンジカの侵入の初期段階において、その影響を適切に把握し、現状に合わせた対策を行うことが必要ですが、日本ではこのような対策が行われた事例はありません。
近年、赤谷の森およびその周辺部においてニホンジカが増加しており、今後、農林業や生態系への被害が懸念される状況です。このため、昨年度から、赤谷プロジェクトの3者(NACS-J、地域住民、林野庁)に加えてニホンジカや植物の専門家、群馬県からなるニホンジカ検討チームを設置し、赤谷の森におけるニホンジカの現状分析と管理目標の検討を始めました。その結果、赤谷の森においてニホンジカが過去5年間で数倍に増え、植物への摂食も拡大している状況が分かりました。
また、このまま何も対策を講じなければ十数年で丹沢や奥日光のように植生がなくなり土壌が流出するといった甚大な被害に発展することが予測されたため、ニホンジカを低密度で維持することを掲げた管理目標をまとめました。
今年度は、この目標を達成するため、猟友会や行政も含む関係者とともに意見交換会を開催し、来年度は日本初となる侵入初期段階のニホンジカの予防的な対策を策定する予定です。
(保護・研究部 藤田卓)