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国際湿地保全連合・事業部長であり泥炭地保全の第一人者のマーセル氏を中池見湿地にお連れしました。

2014.12.24
活動報告
icon_douke.jpg 保護・研究部の道家です。
 
12月21日に開催した国際シンポジウム「ラムサール条約湿地でひらく地域の未来」の海外ゲスト、マーセル・シルビウス国際湿地保全連合・事業部長に、シンポジウムの前にシンポジウムの主題ともなる「保全と利用」について中池見湿地の現状を知っていただくために、福井県敦賀市を訪れました。(NACS-J、NPO法人中池見ねっと、ラムサール・ネットワーク日本 共催)
 
マーセル氏は、EUはもちろんロシアから南アメリカ、東南アジア、北極圏など世界あらゆる地域の泥炭地保全に長年取り組んでいる専門家です。今回、世界最古ともいえる中池見湿地が新幹線開発問題に揺れていることを相談し、シンポジウムへの登壇を依頼したところ二つ返事で快諾してくださった湿地保全に経験と情熱をお持ちの方です。
 
シンポジウムの前々日12月19日、福井県敦賀市にマーセル氏をお連れして、木村敦賀副市長と面談する機会を得ました。現状の湿地保全活用計画の状況や北陸新幹線計画について話し合った後、泥炭地保全の具体的な方策について自由闊達な意見交換を行いました。
 
マーセル氏からは、泥炭地保全の要は、第一に水の管理、その中でも水のダイナミックな動き(自然の変動による水位の上下や水の移動・循環)の確保が重要であること、また、小さく試していって少しずつ良い方策を探ることが重要というアドバイスを行いました。その上で、新幹線の現ルートの変更の重要性、とくにアセスルート(旧ルート)でない、第3のルートも検討して欲しいということを伝えてくださいました。
 

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▲敦賀市との意見交換の様子
 
翌20日の午前中は、雪化粧の中池見湿地を訪れました。マーセル氏とは「夏に呼んで欲しかったな~」と車中で冗談を交わしていましたが、現場では冬の中池見湿地も大変美しいと絶賛。
地域の保全活動の様子や田んぼ復元の様子などを紹介しながら2時間程度の現地散策を行いました。
 
泥炭地の専門家だけあり、目に見えないはずの泥炭地の様子が頭に浮かぶのでしょう、水の動きや湧水の様子などについて簡単な説明でも十分に理解されていたようです。
 

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▲雪の中池見湿地。水路があふれるほど久しぶりに水が多い冬となった。
 
 
午後は、中池見ねっと主催の中池見湿地フォトコンテスト、中池見フォーラムに参加しました。
フォーラム第1部の中池見ねっとの活動紹介と、小中高校生らによる活動紹介が行われ、マーセル氏はその発表内容に大変感激されていました。
 
小学生からは、中池見湿地の生きもの観察や田んぼの復元活動の様子の発表があり、中学生たちは、中学生自らによる「食べられる野草探し、外来種(アメリカザリガニやセイタカアワダチソウ)駆除」の取組み発表がありました。高校生になると、外来種駆除手法の調査(セイタカアワダチソウを、100%駆除したとき、50%駆除したとき、何もしなかったときで比較し、何もしなかったときよりも、50%駆除したときのほうが、セイタカアワダチソウがより繁茂してしまったという調査結果を発表)や、水質と植生の調査などの発表がありました。
 

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▲地元中学生の質問に丁寧に答えるマーセル氏
 
それを受けて、マーセル氏からは、中池見湿地の得意な自然だけではなく、その地域の人に守られ、調べられ、愛されているという点でも世界で例の見ない場所であることが分かって本当にすばらしいと発言。若い人々が環境のすばらしさを学ぶと共に、その繊細な様子を新幹線建設という課題があるけれど、こういう地域の人の声をしっかり反映した結論がでるべきだと思うということを強く語られました。
 
休憩の時間に、高校生からマーセル氏に質問したいと英語でやり取りをするなど、地域のNGOや学生にも沢山の刺激を与えた視察になったのではないかと思います。
 
視察にはたくさんのメディアの方も取材に訪れ、マーセル氏の新幹線問題や中池見湿地への評価が地元へ伝えられました。
 
現地での人々と中池見湿地の自然との出会いは、今後も中池見湿地のファンとして中池見湿地の保全に力になってくれるに違いありません。
 
●中日新聞(12月21日掲載)
「中池見は特別な場所」 オランダ専門家視察
 
 

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