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【配布資料】今日からはじめる自然観察「冬芽の寒さ対策」

2014.12.19
解説

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【今日から始める自然観察】冬芽の寒さ対策(PDF/1.78MB)
<会報『自然保護』No.543(2015年1・2月号)より転載>
このページは、筆者に、教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可)。ダウンロードして、自然観察会などでご活用ください。

冬になると、常緑樹も落葉樹も冬芽をつくって春を待ちます。
葉が落ちて皆同じように見える落葉樹も、枝をよく観察してみると、とても美しく豊かな表情を持っています。
今回は落葉樹の冬芽を観察してみましょう。

亀山 章(NACS-J理事長/東京農工大学名誉教授)


冬を乗り切る多彩な工夫

寒さで生育に適さない冬の期間、樹木は休眠して過ごすので、冬芽は休眠芽とも言います。冬芽の中には、葉や花や枝になる芽が小さくまとまっています。それらの芽を寒さから守るために、さまざまな工夫がされています。

最も多いのは、芽を鱗のような芽鱗で包むことです。芽鱗は少ないものでは1~2枚ですが、多いものでは30枚にもなるものがあります。芽鱗で包まれた芽を鱗芽と言いますが、鱗芽は一般に、ブナやミズナラのような寒い地方の落葉樹に多く見られます。

もうひとつ多いのは、芽鱗を持たない裸の芽が縮こまっているもので、裸芽と言います。裸芽はクサギやエゴノキなどのやや暖かい地方の落葉樹に多い傾向があり、ムラサキシキブやハマセンダンのように毛を被って寒さを避けているものが多く見られます。鱗芽でもヌルデやセンダンのように芽が毛で密に覆われて、形や色が見えにくいものなどがあります。

冬芽は寒さ対策だけではなく、冬の乾燥から守るようにできています。硬い芽鱗や粘液で覆われたもの、毛が密生したものは、そのためでもあります。

冬芽には、葉になるだけの葉芽と、花になるだけの花芽と、両者が含まれた混芽があります。クロモジの葉芽は細長く先端がとがり、花芽は球形をしている、というように、葉芽と花芽が別々につくものは、それぞれの形に特徴があります。

冬芽をカッターで切って中を見ると、茎や葉や花の芽が縮まって春を待つ姿がよく分かります。

混芽(写真)
▲写真:アジサイの冬芽をカッターで切って中を見ると、茎や葉や花の芽が縮まって春を待つ姿がよく分かる。春が近づいてくると、冬芽が大きくなり、中の様子がよりはっきりと分かるようになるものもある。観察会の時、樹木からもらう冬芽は、グループにひとつほどにして、採取しすぎないようにしよう。

種名を知るヒントにも:夏の開いている葉は、ひとつの種でも形や色や大きさに固体差があるが、冬芽は大きさや形の変異が少なく、種ごとの違いを見分けやすい。

葉が落ちたあとを葉痕といいます。葉痕は動物の顔のようにみえるものがあり、ユニークでユーモラスなものが多くあります。

冬は自然観察の対象になる材料が少ないと思われがちですが、そうでもありません。冬芽は化粧を落とした寝顔のように、豊かな表情を素直に見せてくれます。これからの季節の自然観察には、ぴったりの素材です。野外に出て、思いっきりお楽しみください。

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冬芽のいろいろ:表情豊かな冬芽たち。どんな方法で寒さをしのいでいるのでしょう。(図解)

写真:a.b.c.d.m 亀山章/e.j.k.p 安藤仲良/f.g.h.i.l.n.o 伊藤信男

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