「国内希少野生動植物種」に追加指定すべき種を提案しました
絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(以下、「種の保存法」)では、日本に生育生息する絶滅のおそれのある野生動植物種を「国内希少野生動植物種」に指定し、捕獲や譲渡し等を禁止しています。
環境省では、絶滅危惧種の保全をより一層促進するため、今後、平成32年までに新たに300種を「国内希少野生動植物種」に追加指定することを目指すこととしており、2014年11月28日を〆切として国民の提案を受け付けていました。
日本自然保護協会からは絶滅危惧種であるジュゴン、世界的に漁獲による資源の枯渇が懸念されている宝石サンゴ類、海水温の上昇に弱いミドリイシ科とハナヤサイサンゴ科のサンゴ類、八放サンゴ亜綱に属するアオサンゴ科アオサンゴの4点について提案をしました。
参考:国内希少野生動植物種の選定に関する提案の募集について(外部リンク)
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=18694
提案の理由の要点はそれぞれ以下の通りです。
ジュゴンについて
- 本種が生存するためには、広域にわたる浅海のサンゴ礁域を必要とするため、本種の保全は、絶滅危惧種が多数分布する琉球列島のサンゴ礁の保全につながることや、フラッグシップ種として保全活動の推進や地域づくりや地域の誇りにもつながる可能性がある。
- 日本(沖縄諸島)の個体群は世界的に北限に位置し、我が国から本種が絶滅すれば、分布の北限がフィリピン諸島北部に南下してしまう。我が国のみならず、ジュゴンを保全する意義は世界的に非常に高い。
写真:東恩納琢磨
アオサンゴ科アオサンゴについて
- 沖縄島・大浦湾に棲息する個体群と石垣島・白保に棲息する個体群間でも大きく遺伝子型が異なることが確認された(Yasuda et al. 2012)。つまり外見からは同種に見えるものでも、遺伝的には異なるということである。
- 石垣島では観光客による過剰利用の影響などが顕著にあらわれており、今後世界遺産指定などによる観光客の増加によって、過剰利用や違法採取が進むことや、気候変動による水温上昇に伴う白化現象などの人為によって、急激に減少する可能性があり緊急の保全が必要である。
- 自生地において、市民によるモニタリング活動などが行われているため、種の保存法の指定により、指定後の監視活動が期待できることや流通の規制によって、上記にあげた危機を回避することができる。
- 世界的に造礁サンゴの生息状況に関するデータが不足しており、IUCNのレッドリストにおいてもunknownやData Deficientという評価も多々見られるなか、アオサンゴについてはVulnerableであるということが判明している。
- また本種は八放サンゴ亜綱であるが造礁サンゴの1種である。生物多様性条約第12回締約国会議で示されたよう、目標10「サンゴ礁を含む脆弱な生態系の保全」の達成が危ぶまれているなか、本種の保全は必須であると考えられる。
写真:牧志治
ミドリイシ科とハナヤサイサンゴ科のサンゴ類について
- 生物多様性条約第12回締約国会議で示されたよう、目標10「サンゴ礁を含む脆弱な生態系の保全」の2015年までの達成が危ぶまれている。中でも海水温の上昇に弱いミドリイシ科、ハナヤサイサンゴ科のサンゴ類は特に保全をする必要がある。これらの科に属するサンゴ類はアクアリストからの需要も多い。緊急の保全が必要である。
- 世界的に造礁サンゴの生息状況に関するデータが不足しており、IUCNのレッドリストにおいてもunknownやData Deficientという評価も多々見られる。しかし造礁サンゴが大幅に減少しているのは事実であるので、特に地球温暖化の影響を受けやすい枝状のものや、希少であることがわかっているものは保護すべきである。
写真:小橋川共男
ご寄付のお願い
日本の希少野生動植物を守れるのは、わたしたち日本人だけです。自然を守り日本から絶滅種をこれ以上出さないために、どうぞご支援をお願いします。