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普天間飛行場代替施設建設事業の環境保全措置について要望しました。

2014.11.13
要望・声明

普天間飛行場代替施設建設事業の環境保全措置についての要望(PDF/198KB)


2014年11月12日

沖縄県知事 仲井真 弘多殿

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

 

普天間飛行場代替施設建設事業の環境保全措置についての要望

 

公益財団法人日本自然保護協会は、沖縄県が、普天間飛行場代替施設建設事業について公有水面埋立承認の際に附した留意事項を遵守することを要望する。留意事項には、「環境保全対策等について、各分野の専門家から構成される環境監視等委員会(仮称)を設置し助言を受けるとともに、特に、外来生物の侵入防止対策、ジュゴン、ウミガメ等海生生物の保護対策の実施について万全を期すこと。」とあり、続いて「またこれらの実施状況について県及び関係市町村に報告すること」と記載されている。しかし、いずれの事柄についても実現されているとは言い難い。

2012年2月に、仲井真弘多知事は「(環境影響)評価書で示された環境保全措置等では、事業実施区域周辺域の生活環境及び自然環境の保全を図ることは不可能と考える」と公表した。その後、評価書は補正されたが、本計画が有する根本的な問題は何も解決されていない。次に行われた公有水面埋立承認手続きにおいても、数々の問題が生じ、さらには公有水面埋立承認が下りた後も新たな深刻な問題が浮上し続けている。

1.100mを超える規模の工事用の桟橋の埋め立てについて

埋立工事本体とは別に、100mを超える規模の工事用の桟橋が、砕石等で埋め立てて設置されることが明らかになっている。このような規模の工事が、環境影響評価も行われないまま行われることには大きな問題がある。埋め立ては海域の環境への影響が不可逆的な行為であり、直接の改変地のみならず、周囲の環境へも影響が及ぶことから、同事業で計画されている工事との複合的な影響を予測する必要がある。

2. ジュゴンの保全措置について

今年5月~7月に自然保護団体が行ったジュゴンの食痕調査により、ジュゴンがこれまで以上の高い頻度で埋立予定地内および周辺を餌場として利用していたことが確認された。このようにジュゴンが採餌域を拡大し、大浦湾の埋め立て予定地内および周辺を利用することは、環境影響評価が行われた時点では予測されていなかったことである(日本自然保護協会 2014年7月9日記者会見資料)。環境影響評価書(補正後)には「工事中は、ジュゴンのその生息範囲に変化がみられないかを監視し、変化がみられた場合は工事との関連性を検討し、工事による影響と判断された場合は速やかに施工方法の見直し等を行うなどの対策を講じます」とある。国が指定する絶滅危惧種ならば着工前の調査の時点でも、その措置が取られるべきである。ジュゴンの生息状況の変化に応じて、施工方法の見直しが行われたのかどうか、またどのように行われたのか明らかにすべきである。

今年7月中旬以降は、臨時制限区域が設置され、事業者と海上保安庁の船が同海域を広い範囲に渡り頻繁に航行し、浮桟橋の設置やボーリング調査等が行われている。着工前にジュゴン等に影響を与える行為をしながら、事後に保全措置を取っても意味がない。

3.普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境監視等委員会について

普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境監視等委員会は今年4月に第1回目の会合が行われ、6月に2回目が行われた。しかし第2回目の会合の議事要旨が未だに公開されていないことから、今年5月より新たな生態が判明したジュゴンのことが議論されたのかどうかが不明確である。沖縄県からも、第2回目の議事要旨の公開を求めるべきである。また留意事項に記してあるため、県が主導し関係市町村への公開の確保を行うことを要望する。

4.埋立計画の計画概要変更承認申請書について

9月3日に沖縄防衛局より、普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面の埋め立てについて、計画概要変更承認申請書が沖縄県に提出された。

今回の変更点は、1)工事用仮設道路の追加、2)中仕切り護岸の追加、3)美謝川切り替えルートの変更、4)埋立土砂運搬方法の一部変更の4つであるが、いずれも当初の計画よりも環境に及ぶ影響が大きくなる。中仕切り護岸は、ジュゴンの餌場となる海草藻場の海草の種数が多く被度が高い場所であり、仮設道路の建設は海草藻場に隣接する場所に位置し、さらにウミガメの上陸が確認されている場所でもある。環境影響評価の前提予定にはない構造物の予定にない時期の設置に伴う潮流の変化、海草藻場への影響や土砂の流出等による海への影響などについて再度予測する必要がある。棲息場所を失うウミガメなどの生物の保全策の担保は必須である。美謝川の切り替えの計画変更についても、河口が地下水路となり、地下水路部分が現行案よりも長くなるため、環境への負荷が高くなる。

本来、環境影響評価書に記載のない環境改変の計画が持ち上がること自体があってはならないことである。慎重に対処していただきたい。
先月開催された生物多様性条約第12回締約国会議においては、愛知ターゲット目標10(サンゴ礁等への人為的影響の最小化)の達成が困難であることや、水中の騒音が生物に与える影響が議論され、優先的に回避することが決議として取り上げられた。また報道されているように、10月末にラムサール条約事務局から日本政府宛に手紙が届いている。この事業の進捗に世界中が注目している。沖縄県の同海域の環境保全や公有水面埋立承認に伴う留意事項に対する姿勢が問われている。

以上

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