シンポジウム「オオタカ 希少種指定解除の課題」に参加してきました。
保護・研究部の辻村です。
10月4日、立教大学でシンポジウム「オオタカ 希少種指定解除の課題」(主催:日本野鳥の会/日本オオタカネットワーク)が開催され、パネラーとして参加してきました。
冒頭の遠藤孝一氏(日本オオタカネットワーク代表、日本野鳥の会理事)(右写真)の趣旨説明に続き、環境省野生生物課の安田直人氏、徳田裕之氏からは、指定解除検討に至った経緯や、環境省が把握した科学的調査結果等について説明がありました。
日本野鳥の会の金井裕氏からは、パブリックコメントに寄せられた数々の意見から課題や問題点を整理した報告がなされました。
これらの発表を受け、後半はパネルディスカッションとなりました。
私からは、オオタカの生息数評価には生息環境の質の評価が含まれていないこと、種の保存法による希少種指定されたことで環境アセスメントでオオタカが保全対象になったためオオタカの保護が進められたが、指定解除すれば環境アセスの保全対象でなくなり、オオタカの生息環境が悪化するなどの懸念があることを指摘しました。
昨年、NACS-Jが開催したシンポジウム「オオタカをどうする」で、環境省は、オオタカの数が増え環境省のレッドリストのランクが下がったにもかかわらず希少種指定を続けることは罪刑法定主義に反するという考えを表明されていたが、オオタカの保護により私益が制限される分、オオタカの生息環境である里山の保全=生物多様性保全が図られるという公益性を考慮した場合の罪刑法定主義の議論がまったくされていない現状では、指定解除は時期尚早であると指摘しました。
このほか、今森達也氏(日本オオタカネットワーク)からは、環境アセスメントの手続きで今後保護が担保されるとは考えられず、事業アセスの問題点も同時に考えていくべきと指摘されていました。
会場からは、環境省が独自にきちんとした調査をするべき、現状でも密猟が後を絶たない状況であるにもかかわらず指定解除は問題である、といった多くの懸念があがり、想定した時間を越えての議論が続きました。
オオタカの希少種指定解除の問題は、種の保存法だけの話ではなく、オオタカが生態系の頂点にたち環境の指標となることからも、環境アセスメント手続きの中でどのように保全措置の充実を担保していくのかという視点も必要です。環境省の中でも、野生生物課だけではなく横断的な議論を経ての対策が必要であり、やはり、指定解除には時期尚早ということになると思います。