北海道ハサンベツでモニ1000調査講習会・研修会を開催してきました。
保護・研究部の後藤ななです。
9月6・7日に、北海道夕張郡栗山町にあるコアサイト「ハサンベツ里やま計画地」にてモニタリングサイト1000里地調査(以下、モニ1000里地調査)の説明会・調査講習会、および調査技術向上のための研修会を開催しました。
今回、お互いに100~200 kmも離れている北海道各地の調査員の方々が一同に会し、2日間を通して、それぞれの調査サイトの様子や日頃の活動内容、調査体制の現状などを共有する貴重な時間となりました。
会場となった栗山町は、「オオムラサキ」の生息地として日本の北東限に位置しており、このオオムラサキをシンボルに約25年も前から町ぐるみで里やま作りを実施されています。
その中でも、町に流れるハサンベツ川の沢沿いに位置する「ハサンベツ里山計画地」は、2001年から市民が中心となって川の護岸改修(自然河川の復元)など積極的な里やま作りを続けてこられてきた場所です。そうした活動の成果から、今では、さまざまな水草が復活し、秋を感じる高空に多様なトンボが乱舞し、近所の子どもたちも学校帰りに魚とりに来る、まさに原風景のような景色が広がっていました。
▲ハサンベツ里山計画地
1日目には、このハサンベツ里山計画地でモニ1000里地調査の説明会および植物相と哺乳類の調査講習会を実施しました。ハサンベツ里山計画地の自然の豊かさに他の地域からいらした参加者の方が驚かれる場面もありつつ、終始和やかな雰囲気に包まれていました。今回お集まりいただいた調査員の方々が、それぞれのサイトで長年調査や活動をされているからこそ、一緒に同じ場所を歩くだけで様々な発見があり、新鮮な視点の共有があったように感じました。
また今回は、1日目の植物相の調査講習会と2日目に開催した調査技術向上のための研修会(植物の同定能力について)では、帯広百年記念館の持田誠さんに講師をしていただきました。
1日目の調査講習会では、新しくモニ1000里地調査に参加された方に加え、すでに調査を継続的に実施されている方も参加されていましたが、絵解き検索表などを使ってその植物の特徴を見て触れながら基本をじっくり確かめながらの調査講習となりました。
▲植物相の調査講習会の様子
2日目の植物の同定能力に関する研修会では、持田さんから網羅的なフロラ調査とモニ1000里地調査との違いに着目した解説とそれぞれの調査に必要な調査スキルについてお話しいただいた後、本格的な植物の同定作業についての実習を、後継者にレクチャーするときのコツを織り交ぜながら、検索表や図鑑を使って行いました。
▲研修会での同定作業
また、後半には、博物館などの地域の専門機関との連携のあり方について皆で意見交換をしました。参加者からは、「5年間のモニ1000里地調査のデータが溜まってきたが、どのようにまとめたらいいのか」や「行政と連携しつつ自治体でデータや標本を管理できる体制が組めないか」など調査の継続に関する質問などが寄せられました。
モニ1000里地調査では、全国での調査を2008年から開始して、各地での調査体制づくりや調査手法の講習など“はじめる”段階だった5年が過ぎ、新たに“続けていく”ための多くの課題が見えてきました。この研修会も、調査継続に重要な技術となる「同定能力」について焦点をあてつつ、さらには後継者育成や地域での専門機関との連携などを視野に入れて、昨年度の全国サイト間交流会、そして今回と、プログラムを作ってきました。また、今後も全国の調査員の皆さんとともに、今回の研修会でいただいた意見を基にしながら、全国での里やま調査に合うフォローアップを実現していきたいと思います。
▲調査の様子