辺野古海域へのジュゴン食痕調査のための立ち入り申請への回答に対する声明を出しました。
辺野古海域へのジュゴン食痕調査のための立ち入り申請への回答に対する声明(PDF/153KB)
→在日米軍からの回答原文:
[REQUEST TO ENTER RESTRICTED WATERS IN THE OURA-WAN BAY 21-25 AUGUST 2014])(PDF/31KB)
※在日米軍からの回答の仮訳は下部に掲載しています。
2014年8月19日
辺野古海域へのジュゴン食痕調査のための立ち入り申請への回答に対する声明
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
日本自然保護協会は在日米軍に対し、ジュゴンの食痕の調査のために普天間飛行場代替施設建設事業に伴う臨時制限区域への立ち入り申請を出したところ、8月15日付けで、在日米軍海兵隊太平洋基地副司令官より許可しないという回答を得た。
日本自然保護協会と北限のジュゴン調査チーム・ザンは、今年5月から7月中旬に、絶滅危惧種ⅠA類(環境省)のジュゴンが、臨時制限区域を頻繁に利用していた食跡を確認した。これは、環境アセスメントの調査が実施された時期にはなく、環境アセスメントの予測を大きく覆す事実であった。今回の申請は、ジュゴンの食痕およびジュゴンの生息環境の科学的な調査を行うため、海外から招く専門家が、環境アセスメントでは予測されていなかった食跡のあった臨時制限区域内に立ち入るためのものであった。
海兵隊太平洋基地副司令官の回答には「日本側による建設事業が行われている(active Japan construction site)」、「現在行われている工事(the current construction activity)」とあるが、現在、実施されているのは本体工事に向けた海底ボーリング調査の段階であり、事業者の調査と同時に、研究者の科学的調査ができないという理由は論理的ではない。
また「現在行われている工事による影響について日本側で環境影響評価法に基づき検討がなされている」とあるが、普天間飛行場代替施設建設事業に伴う環境アセスメントと公有水面埋立承認手続きには科学的な側面だけ見ても多くの問題があることを、当協会をはじめとする環境団体や研究者などがたびたび指摘している。同様の指摘は、米国のシンクタンクCongressional Research Service が最近発行した報告書にもみられる。
さらに同文書には「沖縄防衛局に意見を求めたところ、立ち入りを希望する水域については同局が実施している海上作業により作業船舶と米軍の船が往来している」とあるが、それが生物調査が不可能なほどの状態であるなら、絶滅危惧種のジュゴンに十分に配慮するとしていた環境アセスメントの環境保全措置はまったく不適切であると言える。
辺野古・大浦湾はIUCNが3度にわたる勧告を出しているほどの貴重な自然であり、沖縄のジュゴン個体群は、世界のジュゴンのなかで最も北限に位置する重要なものである。
事業実施の根拠である環境アセスメントの予測と大きく異なる現状に対しては、科学的な調査を実施する必要があり、調査のための立ち入りを認めるべきであるとともに、在日米軍でも、世界中で生息数が減っている生物の取り扱いを、自国の基準に照らし合わせて対応することを、日本自然保護協会は強く希望する。
以上
参考:Government begins seabed survey for Futenma base transfer
http://www.japantimes.co.jp/news/2014/08/17/national/government-begins-seabed-survey-futenma-base-transfe/#.U_NUFfl_u-2
在日米軍からの回答
[REQUEST TO ENTER RESTRICTED WATERS IN THE OURA-WAN BAY 21-25 AUGUST 2014])(PDF/31KB)
(仮訳)
発信:海兵隊太平洋基地副司令官 クリストファー B. スナイダー
受信:日本自然保護協会理事長 亀山章 殿
件名:平成26年8月21日から25日までの大浦湾における立ち入り制限区域への立ち入り申請について
参照:(a)平成26年8月13日付け日本自然保護協会文書
亀山 殿
参照文書を拝見し、独自の自然資源調査を行うために沖縄県内に所在するキャンプ・シュワブ周辺の制限水域に立ち入りたいとの御要望について検討致しました。
立ち入り申請のありました制限水域においては現在、米軍の実施している水陸両用訓練等に加え、日本側による建設事業が行われております。
この建設事業は、沖縄防衛局が事業者となっております。当方が承知しているところでは、現在行っている工事による影響について日本側で環境影響評価法に基づき検討がなされております。
同局の意見を求めたところ、立入を希望する水域については同局が実施している海上作業により作業船舶と米軍の船が往来し、立入者の安全確保が困難とのことでした。よって、現時点において工事関係者と米軍の訓練以外の立ち入りは支援できません。従って、貴殿の要請はお受け致しかねます。
日本側による環境影響評価に関する御質問は、沖縄防衛局へ照会されますようお願い致します。