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ラムサール条約湿地「中池見湿地」の北陸新幹線計画条約登録後のルート変更に対し、要望書を提出しました。

2014.07.10
要望・声明

中池見湿地付近環境事後調査についての要望書(PDF/244KB)

 


ラムサール条約湿地「中池見湿地」の北陸新幹線計画
条約登録後のルート変更に対し、要望書を提出しました


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2012年7月にラムサール条約に登録された中池見湿地の一部に、2012年8月に北陸新幹線の新たな計画路線が公表されました。1996年3月に公開された当初のルートよりも条約登録湿地の内側を貫通する計画で、環境への影響が、より大きくなることが懸念され、2014年4月9日にはラムサール条約事務局長Christopher Briggs氏が来日して当地を視察に訪れるなど、国際的にも注目されています。

事業者の鉄道建設・運輸施設整備支援機構によって、建設工事の影響評価・予測のための調査計画などを話し合う専門家の委員会(中池見湿地付近環境事後調査検討委員会)が、2013年11月16日に設置・開催され、2014年2月14日に環境事後調査の計画書を公開しました。しかし、この事後調査計画書には予測・評価の基礎となる具体的な工法や、環境影響の予測・評価の具体的な方法、ラムサール条約湿地の要件でもある利用についての調査項目が記されていません。

そこで、7月中旬に予定されている第2回の専門家委員会の開催にむけて、中池見湿地に関わる市民団体・NGOが合同で、次の5項目を求める要望書を7月8日付で鉄道建設・運輸施設整備支援機構理事長および、環境事後調査検討委員会委員長に提出しました。

① 具体的な工法を追記してください
② 環境影響についての予測・評価の具体的な方法を公表してください
③ 予防原則に則した影響回避の方策を実施してください
④ ラムサール条約湿地の要件として重要な「自然との触れ合い分野」の調査も加えてください
⑤ 情報公開や透明性の確保を進めてください

●要望書は下記に掲載しています。
●事業の経緯についてはこちらをご覧ください。※「要望書」の下部にも掲載しています。


2014 年 7 月 8 日

独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構
理事長 石川 裕己 殿

北陸新幹線、中池見湿地付近環境事後調査検討委員会
委員長 松井 正文 殿

中池見湿地付近環境事後調査についての要望書

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
NPO 法人 ウェットランド中池見
理事長 笹木 智恵子
NPO 法人 中池見ねっと
代表理事 岡本 正治 藤木 康夫
NPO 法人 ラムサール・ネットワーク日本 共同代表
柏木 実 呉地 正行 花輪 伸一 堀 良一

福井県敦賀市の「中池見湿地」は、袋状埋積谷という珍しい地形と、世界でも有数の 10 万年もの歴史 をもつ 40mを越える厚さの泥炭層の希少性、そして豊かな生物多様性により、2012 年 7 月に世界的な保 護地域であるラムサール条約の登録湿地として認定されました。また国内では越前加賀海岸国定公園と して法的にも保全されています。

一方、当地域における北陸新幹線の計画路線は 1996 年 3 月に公表され、それにもとづいて 2002 年 1 月に環境影響評価書が公表されました。その後、計画路線が変更され、2012 年 8 月に新たな計画路線が 公表されました。この路線は、当初の計画路線よりも条約登録湿地の内側を貫通する計画となっており、 建設に伴う環境への影響が、より大きくなることが懸念されています。世界的な保護地域である中池見 湿地の開発は、国内外の保護地域の開発を助長し、保護地域のあり方に対して大きな影響を与える恐れ があります。

御機構では新たな計画路線についての路線建設工事による影響評価や予測のための調査計画などにつ いて話し合う専門家の委員会(中池見湿地付近環境事後調査検討委員会)を 2013 年 11 月 16 日に設置・開催し、その内容について 2014 年 2 月 14 日に議事録と環境事後調査の計画書を公開しました。しかし、 この事後調査計画書には予測・評価の基礎となる具体的な工法や、環境影響についての予測・評価の具 体的な方法が記されていません。
そこで私たちは次のことを要望いたします。

1. 具体的な工法を追記してください

路線やトンネルの規模や高さといった具体的な工法案が示されておらず、工事施工ヤードや工事用道 路などの場所、規模についても不明であり、工事による正確な環境影響の予測・評価が困難です。環境 影響の予測・評価の基礎となる具体的な工法を調査計画書の前提条件として追記してください。

2. 環境影響についての予測・評価の具体的な方法を公表してください

環境影響評価を行う上では、個々の自然環境調査の方法だけではなく、その結果からどのように影響 を予測・評価するかが重要です。調査・解析にあたっては精度の高い最新の方法で行うなど、万全を期 して行うとともに、事後調査委員会で検討した環境影響の予測・評価の具体的な方法を公表してくださ い。

3.  予防原則に則した影響回避の方策を実施してください

中池見湿地は世界でも有数の 10 万年もの歴史をもつ 40mを越える厚さの泥炭層が、成立が難しい暖 温帯域に形成されており、通常とは異なる泥炭層の形成・維持機構が存在していると推定されます。水 環境に変化が生じると中池見湿地の形成・維持機構そのものに不可逆的な影響を与える恐れがあるため、 調査・予測・評価に不確実性が認められる場合には、予防原則に則した影響回避の方策を実施してくだ さい。

4. ラムサール条約湿地の要件として重要な「自然との触れ合い分野」の調査も加えてください

中池見湿地は年間 2 万人の来訪者があり、観光・教育・持続的な利用の場として地域の財産となって います。特に「後谷」は、湿地唯一の水の出口であり、動植物のコリドーであると同時に、来訪者にと っては大切な入口となっています。現在の計画路線は、後谷と内池見側の谷を分断し、動植物の移動を 妨げるだけではなく、景観の悪化や振動・騒音によって中池見湿地の観光や環境教育など持続的利用の 取り組みへも多大な影響を及ぼすと予想されます。また計画路線の深山トンネルはその出口がビジター センターにも近く、景観の悪化や振動・騒音が中池見湿地の利用へ与える影響も懸念されます。ラムサ ール条約においては、湿地の保全とともにその賢明な利用も重要な要素の一つであり、2014 年 4 月 9 日 に現地を視察したラムサール条約事務局長 Christopher Briggs 氏からも上述した問題点が指摘されてい ます。このため、自然環境のみならず中池見湿地の利用にもたらす影響についても評価できるよう、ラ ムサール条約湿地の要件として重要な「自然との触れ合い分野」の調査も加えてください。

5.  情報公開や透明性の確保を進めてください
中池見湿地は地域住民の重要な財産であり、長年にわたって地元関係者が保全活動を行ってきた場所 です。新幹線の路線建設に伴う影響は将来にわたって継続するため、調査段階から地元への情報提供を 確実に行ってください。また、近年では環境アセスメント等の情報公開や透明性の確保のために、行政 だけでない地元関係者の会議の傍聴や、速やかな会議資料や会議録の公開などの工夫がされています。 本委員会においても、情報公開や透明性の確保を進めてください。

以上

【参考資料】

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