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ラムサール条約国別報告書(案)に対する意見を提出しました

2014.07.24
要望・声明

ラムサール条約国別報告書(案)に対する意見(PDF/209KB)


2014年7月24日

公益財団法人日本自然保護協会

ラムサール条約国別報告書(案)に対する意見

[意見]

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(9ページ)

1.3.3  「湿地に影響を及ぼし得る政策、事業及び計画を見直す際に、戦略的環境影響評価手法を適用しているか。」

1.3.4  「湿地に影響を及ぼし得る開発事業(建造物や道路の新設、資源採掘産業等)に際して環境影響評価はなされているか。」

2 日本では海岸法は環境影響評価法の対象になっていないため、大規模な防潮堤などの計画があっても環境影響評価がなされていないことを明記するべきである。
3 根拠となる出典等  環境影響評価法 第二条(定義)
1

(9ページ)

1.3.4  「湿地に影響を及ぼし得る開発事業(建造物や道路の新設、資源採掘産業等)に際して環境影響評価はなされているか。」

2 環境影響評価法が改正され、計画段階からの検討が始まったが、事業を前提とした手続きであることに変わりはなく、戦略的環境影響評価手法の適用とは言い難い現状であることを明記すべきである。
3

環境影響評価法が改正され、戦略的環境影響評価手法を取り入れるための検討がなされて、配慮書手続きが加わり、計画段階から検討されるようになったのは事実である。しかし、事業者自身による影響評価手続きであり、保全のための措置が限定的であることに変わりはなく、実態としては戦略的環境影響評価手法とはいえない。

根拠となる出典等  環境影響評価法

1

(21ページ)

2.4.1 「管理計画があるラムサール条約湿地数はいくつか。」

2.4.2  「管理計画のあるラムサール条約湿地のうち、それが実施されている湿地数はいくつか。」

2.4.3「管理計画を現在準備している条約湿地数はいくつか。」

2 2.4.1 – 2.4.3の追加情報に「国内法に基づく管理計画は全登録湿地が有しているものの、ラムサール条約湿地としての湿地の保全管理を主目的とした計画は一部の湿地でしか策定されていない」ということを明記すべきである。
3

報告書ではすべての登録湿地で管理計画が整備実施されていると回答されているが、保護のための国内法に基づく管理文書(例えば自然公園であれば施設計画や生態系維持回復計画)については全湿地が有しているものの、ラムサール条約湿地の保全・管理を主目的とした管理計画ではないため、必ずしも湿地の保全管理に有効であったり十分な計画であるわけではない。

ラムサール条約湿地としての保全管理計画を既に有している湿地は一部であり、また現在いくつもの登録湿地で協議会等によって保全管理計画を作成途中である旨を、2.4.1 – 2.4.3の追加情報に明記すべきである。

 

2.4.1 – 2.4.3の解答欄についても、国内法の事業計画を有するサイト数とは別に、条約湿地としての保全管理計画を有する湿地数を明記することが望ましい。

 

1

(24ページ) 

2.7.1 「ラムサール条約湿地に登録されていない 国際的に重要な湿地の生態学的特徴は維持されているか。」

2 辺野古・大浦湾は、沖縄のサンゴ礁では珍しい大きく深い湾があり多様な湿地環境を有する。重要湿地500、沖縄県の自然環境保全の指針ランクIに指定され、沖縄島周辺最大規模の海草藻場、絶滅危惧種や新種が多く棲息し、3ページGの「海洋生物多様性の保全を着実に推進すること」にも大きく関連する。しかし大規模な埋立計画で危機に瀕しており、この事実を報告書に記載すべきである。
3

辺野古・大浦湾はその沖縄のサンゴ礁では珍しい大きく切れ込んだラッパ状の深い湾を有する特徴的な地形を持つ。沖縄島周辺最大の規模の海草藻場を持ち、ジュゴンをはじめとする多くの絶滅危惧種が棲息し、近年になり新種や国内初記録の生物種が発見されている。重要湿地500に含まれる場所であり、沖縄県自然環境の保全に関する指針ランク(自然環境の厳正な保護を図る区域)に指定されている。

日本初のアオサンゴ群集や長島の洞窟などがある。埋め立て計画が進んでおり、貴重な生態系が影響を受けるおそれが高い。生物多様性保全上大事な場所であるので国別報告書への記入を求める。

 

根拠となる出典等
①2014年7月24日日本自然保護協会記者会見資料
https://www.nacsj.or.jp/katsudo/henoko/2014/07/2110ga.html

② 日本自然保護協会報告書 第97号 「沖縄島北部東海岸における海草藻場モニタリング調査報告書」、2007年発行

③「辺野古・大浦湾 アオサンゴの海 生物多様性が豊かな理由」、2009年発行、日本自然保護協会

④日本自然保護協会報告書 第100号「沖縄島辺野古における海草藻場モニタリング調査(ジャングサウオッチ)10年のまとめ~ジャングサウォッチ10年報告書」、2013年発行、日本自然保護協会

 

1

(24ページ)

2.7.1 「ラムサール条約湿地に登録されていない 国際的に重要な湿地の生態学的特徴は維持されているか。」

2 沖縄県・泡瀬干潟は、日本の代表的なサンゴ礁干潟で、絶滅危惧種が多く棲息し、渡り鳥が利用する。重要湿地500、沖縄県の自然環境保全の指針ランクIである。生物や地形の多様な環境だが埋め立てが進行中で貴重な生態系が損なわれつつあり、この事実を報告書に記載すべきである。
3

日本の代表的なサンゴ礁干潟であり、かつては沖縄島周辺で2番目の面積の海草藻場が広がっていた。多くの絶滅危惧種が棲息し、渡り鳥が利用している。海草とヒメマツミドリイシが共生する、珍しい海域もある。この場所は重要湿地500に含まれており、沖縄県自然環境の保全に関する指針ランクI(自然環境の厳正な保護を図る区域)に指定されている、生物や地形の豊かな多様な環境である。埋め立てが進行中で貴重な生態系が損なわれつつある。国別報告書に記入すべきである。

 

根拠となる出典等

『うまんちゅぬ宝 泡瀬干潟の自然 ガイドブック』  2010年9月10日

著者:泡瀬干潟自然環境調査委員会、発行:日本自然保護協会

1

(24ページ) 

2.7.1 「ラムサール条約湿地に登録されていない 国際的に重要な湿地の生態学的特徴は維持されているか。」

2 大嶺海岸(那覇空港滑走路増設事業)や浦添海岸は、沖縄としては豊かな海草藻場が残り、サンゴ類も過去には被度50%を超えていた分布の記録もあり、希少な魚類や貝類も生息している。沖縄に残る数少ない良好なサンゴ礁生態系であるが、いずれも埋立計画が進行中で危機的状況にあることを明記すべきである。
3

埋立計画が進行中の大嶺海岸(那覇空港滑走路増設事業)や浦添海岸は、沖縄には豊かな海草藻場が残り、サンゴ類も過去には被度50%を超えていた分布の記録もあり、希少な魚類や貝類も生息している。沖縄に残る数少ない良好なサンゴ礁生態系である。

どちらも沖縄県の自然環境の保全に関する指針ランクIやIIを含む、自然環境の保護が図られる区域である。

 

根拠となる出典等

①「那覇空港滑走路増設事業に係る環境影響評価書(補正後)」への意見書
https://www.nacsj.or.jp/katsudo/wetland/2013/10/post-24.html

② しかたに自然案内 カーミージーの海
http://www.shikatani.net/minatogawa/kamiji.html

1

(24ページ) 

2.7.1 「ラムサール条約湿地に登録されていない 国際的に重要な湿地の生態学的特徴は維持されているか。」

2 岐阜県や三重県の東海丘陵要素湿地群は、ラムサール条約湿地の愛知県の東海丘陵要素湿地群と同様の価値を持ちながら国内法の保護担保措置が十分でない。特に中津川市坂本のハナノキ林は他地域にみられない良好な更新状態を維持しているが、県の高規格道路計画地に含まれ開発の危機にあることを明記すべきである。
3

東海丘陵要素は、第三紀に誕生した植物群が氷河期の気候変動による絶滅を免れ、地球上の限られた地域にのみ残存している、いわば地球の宝ともいえる植物群である。氷河の拡大に伴い欧州では絶滅し、今は北米の一部と日本の東海地方に特異的に分布している。これは、白神のブナ林が世界自然遺産に登録されたことと同様の価値を持つものであり、国際的に重要な湿地の生態学的特徴を有している。しかしながら、国立・国定公園などの保護担保措置が取られていない。この事実を国別報告書に記載すべきである。

 

根拠となる出典等

①希少樹種の現状と保全 http://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/raretree/12_APindex.html

②濃飛横断自動車道計画(リニア関連工区)への要望書

https://www.nacsj.or.jp/katsudo/kokuritsu/2014/06/post-27.html

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(7ページ)

1.1.3  「過去 3 年で、全体的に湿地の状態は変化したか。」「追加情報」

(24ページ) 

2.7.1 「ラムサール条約湿地に登録されていない 国際的に重要な湿地の生態学的特徴は維持されているか。」「追加情報」

2 東日本大震災の津波等の影響についての記載は、この内容では十分ではない。震災後に成立した砂浜や湿地には、希少種をふくむ動植物の回復が見られているが、復旧工事の名目で震災以前よりも大規模な防潮堤や、嵩上げ工事が計画・進み、現状把握すら十分行われる前に消失の危機にあることを記載するべきである。
3

2011年に発生した東日本大震災の津波等の影響による干潟・アマモ場の消失や底生生物の減少、一方地盤沈下で新たに出現した湿地について記載されているが、この内容では十分な現状報告とはいえない。

震災後に砂浜や湿地が成立した場所があり、そこに新たに出現した湿地もあり、新たな生態系が形成されているとあるが、そこには、希少種をふくむ動植物の回復も見られている。そうした湿地がラムサール条約湿地の要件を満たすものであるのか等十分な調査が行われるべきであるが、復旧工事という名目で震災以前よりも大規模な防潮堤や、嵩上げ工事が計画・実施されているために、現状把握が十分行われる前に消失の危機にあることを明記するべきである。

 

根拠となる出典等

①東日本海岸調査報告書「震災後の海岸植物、海、そして人」』2013年2月 発行:日本自然保護協会 https://www.nacsj.or.jp/katsudo/higashinihon/pdf/20130204higashinihonhoukokusyo.pdf

②会報『自然保護』特集:このままでいいのか!? 防潮堤計画 2013年7/8月号発行:日本自然保護協会  https://www.nacsj.or.jp/katsudo/higashinihon/2013/07/201378.html

 

以上


参考

環境省報道発表資料 平成26年7月11日 ラムサール条約実施に関する国別報告書(案)に対する意見の募集について

ラムサール条約の国別報告書(案)に対する意見の募集(パブリックコメント)について(※外部サイトに移動します。)

ラムサール条約COP12 ラムサール条約国別報告書(案)(PDF/543KB)

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