初の全国調査から、里山の生物の減少が明らかに
モニ1000里地調査の全国調査成果を公表しました!
保護・研究部の高川です。
日本自然保護協会が環境省および各地の市民調査員と共同で進めてきた「モニタリングサイト1000里地調査(環境省受託)」の、2012年までの調査成果をとりまとめた報告書をこのたび発表しました。
この報告書は、約2,500名の市民調査員と実施した全国約200ヶ所の里やまでのモニタリング調査結果を取りまとめたものです。
モニタリングサイト1000里地調査 第2期とりまとめ報告書(PDF/12.6MB)
調査結果からは、例えば以下のようなことが明らかとなりました。
- 植物や鳥類・哺乳類の種数といった、生物多様性の基本的な要素である種の多様性の全国的な減少傾向がみとめられた
- ノウサギ、テン、キツネやゲンジボタルの個体数が全国的に減少していた
- カヤネズミの生息面積が23サイト中5サイトで大きく減少していた
- イノシシ・シカなどの大型哺乳類やアライグマなどの外来種は分布を拡大していた。
▲調査結果から明らかとなった種数の減少傾向(左)と、造成工事により消滅したカヤネズミの生息地の一例(右)
※結果の詳細については環境省の報道発表をご覧ください。
環境省 報道発表
>>モニタリングサイト1000里地調査 第2期(2008-2012年度)とりまとめ報告書の公表について
わずか数年間の調査結果であるにもかかわらず、生物多様性の状況を表す様々な指標で全国的な減少傾向が認められたことは注目に値します。この結果が全国規模での生物多様性の喪失を本当に示しているのかを断定するにはまだ早いものの、引き続き各地の市民調査員や環境省と協力しながら調査を継続し、今年や来年の調査結果に最大限の注意を払う必要があります。
このような里やまでの全国規模の調査が我が国ではじめて実現できたこと自体、たいへん大きな成果であるといえます。引き続き様々な博物館・研究者とも連携しながら全国での市民調査活動の普及啓発活動を進めていきます。
また、いくつかの調査地では開発行為や耕作放棄などによって明らかに生物多様性が危機にさらされていることから、日本自然保護協会ではそのような実情をシンポジウム等で発信すると共に、独自のそれらの調査サイトの保全の支援を進めていきます。