ニホンウナギ資源ワークショップに参加、意見を述べてきました。
保護・研究部の安部・辻村です。
今年6月12日に、国際自然保護連合(IUCN)がニホンウナギ(Anguilla japonica)を絶滅危惧(IB)と判定したことは大きく報道されましたので皆さんご存知のことと思います。
これを受けて、7月26日、東アジア鰻資源協議会日本支部会がニホンウナギの資源に関する危機的現状を打開するための第一歩として、IUCNが進めている世界のウナギ・レッドリストアセスメントの中心人物であるMatthew Gollock博士(ロンドン動物学会)を招いて資源と保全に関するワークショップを開催。NACS-Jも参加してきました。
冒頭は塚本勝巳氏(東アジア鰻資源協議会・日本支部会長)の力強い開会挨拶から始まりました(下写真)。
「今は切迫した状態。何もしなければウナギは絶滅する。今日はウナギのこと、この1点を考えて、アクションにつなげることを考えていただきたい。さまざまな立場の方々にお集まりいただいているが、今日は遠慮せず、ご自分の立場からご主張を発言して欲しい。世界の7割のウナギを消費している日本には責任がある。」
そして司会の海部先生(中央大学)から、今日のワークショップは、まずは異なる立場のステークホルダーが情報共有を行うこと、そして今後議論ができる体制をどのように作っていくか、それらを決めることを目的とするというお話しがありました。
タイムフレームは30年後。30年後にウナギがいる日本を目指して、議論を進めていく必要性が確認されました。
そして、Matthew Gollock博士からは、レッドリストに掲載された科学的な経緯と判断についての発表がありました(右下写真)。この中で博士は、ウナギ減少の理由は複合的であるが、河川の横断工作物による生息地の環境悪化についての指摘をされていました。
NACS-Jからは、海・川・陸地のエコトーンが破壊されている現状について、東北の防潮堤建設や辺野古の埋め立てなどの事例をあげて具体的に指摘しました。
また、ニホンウナギが過去30年間で50%以上の減少率である現実を直視すれば、対処療法的な取り組みでは事態の改善には到達できないため、荒瀬ダム撤去でウナギの確認数が増えたという事実を示しながら耐用年数を超えるダムや堰を撤去し上流から河口沿岸までの連続性を回復させることを視野に入れた根本的な対策が必要であることを指摘しました。
今回は、今日は鰻の養殖に携わる方々、漁業組合関係の方々、省庁、ウナギの研究者、環境NGOなど異なる立場のステークホルダーが多く集まりました。このような機会が設けられたのは初めてのことです。そして今後もこうした場を継続していくことが合意されました。
必要に応じて専門家の枠を広げながら、根本的な対策につながるよう議論を深めていくことは順応的管理にとって重要なことです。ウナギはかつて内陸部の水田の水路にも普通に見ることができた生き物です。森、川、里、海が一つのつながりを持っていることで生きていくことのできるウナギは、いわば日本の自然環境の象徴です。これを守り育むことは、自然を守るだけでなく、文化も守ることになります。
日本自然保護協会は今後もこの会議にかかわって根本的な対策が行われるよう働きかけていこうと考えています。