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シンポジウム「沖縄の自然のこと~海・陸・人の関わり」を開催しました。

2014.06.09
活動報告
icon_abe.jpg 保護・研究部の安部です。
 
 
5月31日、沖縄県立博物館にてシンポジウム「沖縄の自然のこと~海・陸・人の関わり」を開催しました。
 


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最初に水中写真家の小橋川共男さんより挨拶をいただいたあと、基調講演の伊澤先生より、面白いお話しをいただきました。(右写真:泳ぐイリオモテヤマネコの映像を紹介する伊澤先生)
 
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琉球諸島の生物多様性の高さはボルネオなどの生物多様性の高さとは質が異なる。琉球諸島の生き物たちの種数は少ないが、小さな島々の集まりに多様な生き物が生きていて、それぞれが違う小さなものの集合体である。
 
保全するうえで大切なのは保全対象の生活を考えることが必要。例えば海外の事例で言うと、リカオンの生息数が減ってきたため、外からリカオンを導入した例があるが、これは成功はしなかった。その理由は、リカオンはグループの中で役割が決まっているため、生息数のみを気にして同じ種を導入しても、既存のグループとうまくやっていくことはできない。
 
今日お話しするイリオモテヤマネコ(ベンガルヤマネコの仲間)は、1965年に発見された。雨が多く、約400の川をもつ「水の島」である西表島にのみ棲んでいる。他の島と異なり、最高次消費者がいない西表島には、ネズミがいない。
では、イリオモテヤマネコはいったい何を食べるのか? カエルや爬虫類など実にいろいろなものを食べる。これは海外のベンガルヤマネコの他の仲間たちとは大きく異なる。多様な餌を食べるため、イリオモテヤマネコは行動範囲が広く、森林だけではなくマングローブ林も湿地も川も必要である。イリオモテヤマネコは川を泳ぐ。
 
イリオモテヤマネコが車にひかれる交通事故が増えてきており、昨年が過去最多であった。新石垣空港ができたため観光客が増加し、その影響が出るのはこれからだと思う。
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渡久地先生からは海のいろいろな場所に名前がついているということから、昔から人が海とともに生きてきたというお話しを伺いました。しかしながらこのように自給的に漁業を営んできた人の数が減っているので、きちんと位置づけることが必要であるとのこと。
 
中野先生は、愛知ターゲットやにじゅうまるプロジェクトから始まり、サンゴのケンカ、生態系の分断化、沖縄の観光がレンタカーに依存していることに伴う問題点や、同じくサンゴ礁の海に生きるモルディブの人たちの生き方の選択肢など多岐にわたるお話しをいただきました。
 

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パネルディスカッションでも多くのことが話し合われましたが、観光と開発の両立の問題が特にフロアとパネリストの両方の議論の中心となりました。
 
1つにはエコツーリズムの中身が問題になりました。レンタカーを利用して好きな時に少人数で自然に親しむことが出来ることは良いことのように思われるかもしれませんが、自然環境に与えるインパクトという点では、バスで集団で移動する方が良いです。「私がヤマネコだったら、来るのならばバスで来て、邪魔するのを1度ですませて欲しいと思う」と伊澤先生。
 
嘉陽海岸の保全に取り組むパネリストの浦島悦子さんからはエコトーンを残す豊かな自然海岸を丸ごとエコミュージアムとして残したいというお話しがあり、東恩納琢磨さんからは大浦湾の自主ルールや観光と自然保護の両立についてお話しがありました。
 
研究者の聴衆からは研究者ができる社会貢献について問う声がありました。研究者はまずは科学的データを出すことが最重要であると言う意見が出て、またパネリストからは市民と一緒に物を見て話して研究者や、自分の名前を明かさず匿名でしか意見がいえない研究者にはなって欲しくないという意見が出ました。
 
日曜日にも関わらず80名を超える参加者に来ていただきました。森、川、海を考える、このようなシンポジウムをまた開きたいと考えています。
 

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▲沖縄・生物多様性市民ネットワークの岡本由紀子さんから閉会の挨拶。
 
 

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▲ご共催&お手伝いいただいた沖縄・生物多様性市民ネットワークなどのボランティアのみなさんと。
 
●講演要旨集は以下からダウンロードできます。
https://www.nacsj.or.jp/katsudo/wetland/2014/05/531.html
 

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