オーストラリアの2つの世界遺産が危機にさらされています。
保護・研究部の安部です。
世界遺産の登録審査を行う国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産委員会が日本時間の16日、中東カタールのドーハ(Doha)で始まりました。NACS-Jからは専務理事の吉田が出席しています。
今回は古代インカの道や、世界最古のフランスの洞窟など約30か所が、これまでに登録済みのユネスコの世界遺産981か所に加わる見込みです。
良いニュースの一方で、有名な二つの世界遺産が危機にさらされているオーストラリアの問題も取り上げられます。豊かな生物多様性を誇る世界最大のサンゴ礁グレートバリアリーフ(Great Barrier Reef)は鉱山開発のために港の拡張工事が行われるなど、保全がおろそかになっているために、ユネスコは世界遺産から「世界危機遺産」への格下げを検討しています。グレートバリアリーフのサンゴ礁は気候変動の影響やオニヒトデの大発生、農業排水などの影響を受けており、今年はエルニーニョの影響も懸念されています。
オーストラリアでもう一つ、危機に瀕している世界遺産は、タスマニア島のタスマニア原生地域(Tasmanian Wilderness)です。この森林はタスマニア島の20%に相当する140haの規模です。森林伐採を後押しするトニー・アボット豪首相はユネスコに対し、7万4000ヘクタール分を世界遺産から外すように要請しています。
タスマニアの件のことで、5月にオーストラリアのウィルダネス協会の方たちがNACS-J事務所に相談にいらっしゃいました。(右写真:来協されたウィルダネス協会のみなさんとご一緒に。)
オーストラリアも海も陸も心配な状況です。

▲白化しているオーストラリアのサンゴ(2002年撮影)
参考:
●ユネスコ世界遺産登録会議始まる、古代インカの道などが候補
●グレートバリアリーフに浚渫土砂を投棄
●環境破壊に突き進むオーストラリア
●Australian natural wonders under UNESCO spotlight (英文)