こんにちは、保護・研究部の後藤ななです。
6月14-15日に、静岡県富士市にて、地元の調査員の方にむけたモニタリングサイト1000里地調査(以下、モニ1000里地調査)の説明会・調査講習会を実施してきました。
ちょうど梅雨の中休みとなり、晴れ渡った空の下、2日間とも多くの方にご参加いただきました。
1日目の会場「浮島ヶ原自然公園」は、愛鷹山や周辺の川から供給される砂礫が古くより堆積してできた場所です。明治の頃までは、公園のある富士市から沼津市まで広がる広大な湿地帯「浮島沼」の一部だったそうです。
開発などでその大部分が失われてしまいましたが、今も、浮島ヶ原自然公園には希少な植物やカヤネズミなどの草原の生きものたちが生育・生息しています。
▲浮島ヶ原自然公園。見渡すかぎりのヨシ原!
その浮島ヶ原自然公園では、午前中は鳥類調査、午後にカヤネズミの調査講習会を実施しました。モニ1000里地調査の調査員の方に加えて、地元で調査をされている富士自然観察の会の皆さんの呼びかけで市民調査に関心のある一般の方にも多く参加いただきました。
午前中の鳥類調査講習会では、天気が良すぎたために鳥たちも木陰で休んでしまっていたのか、野外での記録は少ないようでした。公園の近くを縄張りにしていたケリの夫婦が近づくものに飛び回りながら威嚇していたのが印象的でした。
▲鳥類調査講習会の様子「調査範囲の50mとはどれくらいでしょう?」
午後にはカヤネズミの調査講習会を実施しました。
会場には、浮島ヶ原のヨシ刈のときに出てきたカヤネズミの巣がたくさん展示されていたため、カヤネズミが器用に作った巣を観察したり、越冬のためにオギの穂が敷きつめられたふかふかの巣を実際に触れてみたりと、見て触ってカヤネズミの巣や生態について学びました。
▲カヤネズミの巣は子どもにも大人気!
←オギの穂が敷きつめられてふかふかのカヤネズミの巣
野外では、繁殖期をむかえているカヤネズミを刺激しないように観察する方法を学びながら調査体験をしました。参加者からは「いつもヨシ刈のときに古い巣ばかり見ていたけれど、カヤネズミのことを知れてよかった」という感想をいただきました。
2日目は、会場をかえて「丸火自然公園」で開催しました。
富士山の麓に位置するこの公園では、午前中にチョウ類、午後に植物相の調査講習会を実施しました。
チョウ類の調査講習会では、はじめに講師の石井実先生(大阪府立大学(右写真))よりチョウについての講義をしていただきました。チョウは昼行性で種数も蛾などに比べると少なく、観察・調査するのに適しています。しかも、チョウは古くから人に愛され、生態や分類についての研究が多くされてきたため、「ここに○○チョウが飛んでいる」という記録だけでとても多くの情報が得られます。
野外での調査体験では、ジャコウアゲハがたくさん飛び交うなか、ジャコウアゲハによく似たオナガアゲハやアゲハモドキという蛾の仲間も見つけられたため、種の見分け方などを学びながら歩きました。
▲ジャコウアゲハ(左)とアゲハモドキ(右)
▲調査範囲の5mをそれぞれの歩幅で測ってみましょう!
午後の植物相の調査講習会では、単に記録をとるだけではなく、それぞれの植物が「明暗」や「乾湿」、そして「寒暖」どんな環境を好んでいるかを注意してみることの大切さを学びました。そうした視点をもちながら、野外での調査体験にのぞんでみると、丸火自然公園は涼しいところが好きな植物や平地からやってきた植物などが入り交りとても豊かな生物相が育まれていることがわかりました。
▲丸火自然公園での調査講習会の様子
2日間におよぶ調査講習会は、天気にも恵まれ、気持ちよく実施することができました。
今年も里やまには生きものたちが溢れ、すくすくと育ち、そして次の世代へと命をつないでいます。そうした里やまの生きものたちを真摯に見つめる全国の市民調査員の方々とともに、今後もモニ1000里地調査を展開していきたいと思います。