早春の里やまで調査講習会を実施しました(前編)
こんにちは、保護・研究部の後藤ななです。
里やまは、田んぼや集落、ため池や雑木林などさまざまな環境でできています。モニ1000里地調査では、そんな里やまの複雑な環境をとらえるために9つもの調査項目を実施しています。調査項目によって調査時期も異なり、春から秋、そして冬と一年を通して全国の調査サイトで調査を実施しています。
早春に実施される調査が、鳥類調査やアカガエル類調査、植生図調査などです。
3月は、それらの調査についての講習会を開くため、山口、兵庫そして岩手県の早春の里やまにお邪魔しました。前編と後編に分けてご報告します!
まず3月1日は、山口県周南市にある一般サイト「中須北地区」での調査講習会を開催しました。
ここ中須北地区には、谷一体に広がる棚田と奥にある牧場とがセットとなっており、地元集落の皆さんによって農作業とともにさまざまな棚田の保全活動が展開されています。そこには脈々とここで営みを続けながら守られてきた風景が広がっていました。
▲中須北の棚田風景
今回の調査講習会では、ここでモニ1000里地調査を開始される「水地域環境ネットワーク」の皆さんをはじめ、地元山口県のアカガエルの保全活動をされている方々、隣の広島県で同じく里地調査を実施されている調査員の方にもお集まりいただきました。同じく山口県内でモニ1000里地調査を実施されている秋吉台エコ・ミュージアムの田原義寛さんに講師をしていただいたこともあり、地元の方同士で地域ごとのアカガエルの様子や保全のための情報交換の場にもなりました。屋外講習では、牧場のなかでアカガエルの卵塊を発見し、また近隣のため池や棚田の他の場所も移動中にみながら新しい産卵地も見つけることもできました。
▲こっちにもあっちにもアカガエルの卵!(写真:岡谷政宏)
次に、3月18日に兵庫県西宮市にある甲山自然の家で、関西地方北部の新規調査サイトの方にお集まりいただいて、モニ1000里地調査の説明会とアカガエル類、中・大型哺乳類調査の調査講習会を実施しました。
お集まりいただいたのは、会場である甲山で調査を実施されている「こども環境活動支援協会LEAF」さんや兵庫県市川町からお越しいただいた「棚田LOVER'S」さん、京都府摂津市の農村で暮らしながらモニタリング調査を実施されている「セヤノコ」さんです。哺乳類調査講習会では、新しくなったセンサーカメラの操作方法や屋外での設置方法をお伝えしました。また、実際に哺乳類調査で撮られた写真を見ながら種の同定などを行いました。
調査講習会のあとのお茶会では、セヤノコさんの地域に住まわれる方々の暮らしについての書き起こしや棚田LOVER'Sさんの生物多様性地域戦略と合わせて組み立てた生物多様性棚田活動戦略作成、LEAFさんの会場となった甲山での調査結果の展示など、それぞれの地域に寄り添って実施されている活動の数々をご紹介いただきました。
▲講習会後の情報交換会
▲甲山での里地調査展示
山口も兵庫でも、地域の里やまの自然を真摯に見つめている方々にお集まりいただき、調査や保全活動の情報交換だけではなく、その場所に馳せる想いなども交わす場となりました。
今後も里地調査が各地の里やまを見守る力の一つになることを願っています。
調査講習会レポート後編に続きます。