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赤谷の森のめぐみ”カスタネット”を小学校に寄贈しました

2014.04.04
活動報告

icon_dejima.jpg保護・研究部の出島です。

赤谷の森のふもとに日本の学校教育で使われているほぼすべてのカスタネットをつくり続けてたカスタネット工場があります。近年は北米のブナ材でつくられてきましたが、昨年、地域の木材でつくられたカスタネットが復活しました。

このカスタネットを地元みなかみ町の新治小学校に寄贈しました。この活動には、資生堂花椿基金のご支援を活用させて頂きました。

赤谷の森のカスタネット

朝日新聞(群馬版)でも掲載して頂いています。
群馬)赤谷の森からよみがえるカスタネット作り
http://www.asahi.com/articles/ASG3W4SPZG3WUHNB00G.html

DSC_0215s.jpg左:おなじみの教育用カスタネット今も現役、右:2013年につくったカスタネット、ともにブナ材

カスタネットの物語

群馬県みなかみ町(旧 新治村)で生まれた日本の「カスタネット」

群馬県みなかみ町(旧・新治村)「赤谷の森」の麓に、教育用カスタネットの製造を50年以上続けてきたカスタネット工場「プラス白桜社」があります。皆さんが子供の頃に手にした赤と青のカスタネットは、1955年(昭和30年)頃、スペインの民族楽器を基に、日本の音楽教育で使いやすいように、この工場で開発・製造されたものです。2枚の板をゴムでつなぎ、開いた状態が維持される仕組みをもつ教育用カスタネットは、この工場が発祥の地なのです。

そして現在まで、日本の教育現場で使われている木製カスタネットのほぼすべてはこの工場でつくられ、最盛期には栃木県などにも工場をもち、年間200万個以上を生産していました。材料には、当初、音の良さからサクラを使っていましたが、日本全国の学校で使用するようになり、材料の入手が追いつかず、手に入れやすい木材をもとめて、カエデ、そしてブナへと変遷しました。木材は、赤谷の森を含む、主に群馬県北部や新潟県の森から調達されていました。 

しかし、1990年代になると群馬県・新潟県のブナ材は手に入りにくくなり、福島県まで8トン車で買い付けに行ったり、業者に依頼して秋田・岩手のブナを調達したりしました。その後、さらに国産のブナ材は入手が難しくなり、2000年代前半からは業者が輸入した北米のブナ材で生産を続けました。少子化や、学校の備品として利用されるようになり、生産量は減少しましたが、2012年まで年間10万個以上の生産を続けていました。しかし、海外からも木材の調達が難しくなったことから、2013年3月でプラス白桜社のカスタネット製造は終了しました。

日本のほぼすべての子供たちが手にした「カスタネット」

平成25年版少子化社会対策白書によると、「我が国の年間の出生数は、第1次ベビーブーム期(1947-49年)には約270万人、第2次ベビーブーム期(1971-74年)には約 200万人であったが、1975(昭和50)年に 200万人を割り込み、それ以降 、毎年減少し続けた。1984(昭和59)年には150万人を割り込み、1991(平成3)年以降は増加と減少を繰り返しながら、緩やかな減少傾向となっている。なお、2011(平成23) 年の出生数は、105万806人と前年の 107万1,304人より2万498人減少した。」とあります。

プラス白桜社は、カスタネットを子ども1人が1つずつ持っていた第2次ベビーブーム期に年間200万個を生産し、学校の備品として利用するようになってからも2012年時点で10人に1つ分の年間10万個以上を生産していたことになります。つまり、日本のほぼすべての子どもが、プラス白桜社でつくられたカスタネットで音楽を学んできたと言えます。

DSC_0211s.jpgのサムネール画像

日本の森の管理と「カスタネット」のつながり

カスタネットに国産のブナを利用してきた時期は、日本中でブナ等の広葉樹を伐採してスギやヒノキの人工林に植え替えてきた、いわゆる「拡大造林政策」の時期、1957年(昭和32年)から1980年代中頃とほぼ重なります。そのため、比較的安価で手に入りやすく、効率的に生産できる木材として、国産の樹齢200~300年の大きなブナが利用されてきたようです。

一方で、この時期に日本中で、原生的な自然の森が伐採され、残された自然の林はとても希少なものになってしまいました。現在の「赤谷の森」においても、原生的な森林は2割しか残っていません。残念ながら、カスタネット製造に使われてきた木材は、持続的な森林利用によるものではなかったといえます。

日本の森をより良くするための「カスタネット」

赤谷プロジェクトは、豊かな森の復元と、持続的な地域づくりを目標に発足し、今年で10年を迎えました。この節目の年に、カスタネット工場(旧・プラス白桜社)のご協力により、赤谷の森の木材でつくったカスタネットを復活させることができました。

今後、日本の森の恵みを持続的に利用し、その対価が地域と森の管理に還元され、森がより豊かになるような仕組みを、この「カスタネット」で実現したいと考えています。森を持続的に利用するためには、かつてのように大量に生産はできません。価格もこれまでより少し高くなると思います。森を持続的に管理し、その恵みを地域づくりに繋げることの意義を、この「カスタネット」で発信していきたいと思います。

「カスタネット」の様々な楽しみ方

カスタネットの語源はクリの木です。スペイン語でクリの木は「カスターニャ」、クリの木の学名は「カスタネア クレナータ」。カスタネアは「クリ属(クリの仲間)」、クレナータは「先の丸いギザギザの葉」の意味です。今後、語源であるクリの木や、プラス白桜社の社名になったサクラの木など、様々な種類の木を使ってカスタネットをつくると、硬さの違いによる音の違いや、色、手触りの違いも楽しめるのではないかと考えています。また、絵付けをしたり、加工をしたり、虫食いや少し腐った木材を利用しても楽しめそうです。

皆様のご協力をよろしくお願い致します。

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