リニア中央新幹線環境影響評価書に対して意見を出しました
2014年4月28日
東海旅客鉄道株式会社
代表取締役社長 柘植康英 殿
国土交通大臣 太田明宏 殿
環境大臣 石原伸晃 殿
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
リニア中央新幹線環境影響評価書に対する環境保全の立場からの意見
日本自然保護協会は2013年11月に提出したリニア中央新幹線準備書に対する意見で、5つの大きな問題点を指摘し、本事業の一旦凍結と路線決定段階からの議論のやり直しを求めた。
これら5つの問題点に対する事業者の見解は、「活断層は横切らざるを得ない」、「南アルプスの隆起量はトンネルの妨げにならない」、「土捨て場は今後関係自治体と協議し進める」、「希少猛禽類については専門家の意見を踏まえ進める」、「地下水への影響は破砕帯部分で多少の減少が予測されるが対策を十分取るから問題ない」というものであった。しかし、この見解の根拠となるデータの追加もなく、対応の具体性も追加されておらず、準備書の記載と何ら変わっていない評価書が発表されたことは、重大な問題である。
準備書に対して、都県の知事は2014年3月に、東京都101項目、神奈川県51項目、山梨県280項目、静岡県118項目、長野県59項目、岐阜県67項目、愛知県55項目に及ぶ意見を提出した。これらの意見に対しては、データの追加や具体的対応などの修正はわずかであり、実質的にはゼロ回答に近いものである。
たとえば、工事用車両の通行時間帯等の協定締結を求める意見に対しては、協定を締結するか否か明言しない曖昧な表現で終始している。
また、工事用車両の台数の調整のためとして、今回新たに、ストックヤードを設置する計画が出されたが、ストックヤードは本事業においては本来必要なものであり、当初から計画が示されるべきものであった。広面積が必要で環境への影響が大きいこうした計画が環境影響評価手続きの最終段階で、後出し的に出されたことは非常に大きな問題である。
さらに、非常口の個数削減計画では十分な検討がなされず具体性に欠く記述になっている。発生残土の処理に至っては、他事業での有効利用を進めるので、その事業者の環境保全に協力するという記述に留まっている。発生残土は、この事業で処理計画を立案して影響を評価するべきものであり、この内容では事業者として責任放棄である。
全国から注目をされている本事業において、わずか1ヶ月という短い期間で準備書を修正して、今回の評価書が提出された。準備書への多くの意見に対し一部の修正だけで済ませるのは、自らが侵そうとしている環境破壊への自覚がなく、環境影響評価法を単なる手続きとしか考えていないことの現れであり、本法の考え方を踏みにじる行為として看過できない。
日本自然保護協会は、事業者が準備書、評価書に対しての関係都県、市民からの意見を真摯に受け止め、評価書の根本的な修正が行われることを求める。
以上