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「絶滅のおそれのある野生生物種の保全戦略(案)」 に対する意見を出しました。

2014.03.03
要望・声明

環境省が3月2日まで行っていた「絶滅のおそれのある野生生物種の保全戦略(案)」 に対する意見募集(パブリックコメント)に対して、NACS-Jから意見を出しました。

NACS-Jが出した意見のポイントは下記の通りです

1)国内希少野生動植物種の指定にあたっては科学的に検討する場を設置するとともに指定プロセスの透明性を確保すべき

2)従来1種も政令指定されてこなかった海洋生物の指定を科学的根拠に基づき積極的に進めることを明記すべき

3)本戦略の見直し時期を明記すべき

4)本戦略の中に、「世界植物保全戦略※」がCOP10において採択され日本政府が履行する責任があることを明記するとともに、「世界植物保全戦略」に対する国内対応も記述すべき(域外保全への対応など)
※2020年までの目標 (例:目標7、8:絶滅危惧種の75%が生育域内(外)で保全される。)

5)国内外の先進事例(EUのスチュワードシップや英国のSSSIなど)を収集し、多様な主体による保全活動を推進すべき

7)保護地域制度の活用として、国立公園だけでなく、「自然環境保全地域」の具体的な施策を記述すべき

 


以下、意見の全文

  1. 該当箇所
    P15 L20-24 国内希少野生動植物種の指定の推進
  2. 意見内容
    P15L23 「適切な情報管理を行ったうえで」を「各分類群の専門家からなる委員会(レッドリスト選定委員会など)において種指定の妥当性を科学的に検討し」に修正すべき
  3. 理由
    平成25年の衆参両議会における付帯決議3項※において「種の選定は、科学的知見を最大限に尊重する」ことが求められており、種の選定にあたっては科学的な検討が必要であるとともに、その選定プロセスの透明性を確保する必要がある。原案で示された「野生生物小委員会」は、この種指定以外の多数の議題を検討する委員会であり、この委員会の中で、2020年までに300種指定するため、国民から提案された種や、環境省の調査に基づく候補種を、科学的に1種1種丁寧に検討する時間はほとんどない。そのため、事実上環境省が決めた候補種を承認するだけの委員会となってしまうことが容易に想像できる。そのため、この委員会とは別に、専門の検討の場を設けて、科学的な検討を行う必要がある。
  1. 該当箇所
    P15 L20-24 国内希少野生動植物種の指定の推進
  2. 意見内容
    P15L24 に下記の「」内の文書を追加すべき
    「なお、提案された種に対して、指定の採否の結果と、理由を公表する(ただし、提案者が公表を望まない種に関しては公表しない)」
  3. 理由
    平成25年の衆参両議会における付帯決議3項※において「保全戦略に、政府による回答方法を明記すること」「明確な理由の存在しない限り、国民に対する情報公開を徹底すること」が求められている。国民による提案制度は、提案者が貴重な分布情報などの提供も含めた国民との協働による保全活動の推進する施策の根幹をなす重要な仕組みであるが、提案された内容の検討プロセスの透明化が欠かせない。しかし、原案では、提案者に対する回答方法が明記されておらず、提案者はどのような理由で提案した種が採用、却下されたのか全くわからないため、今後、環境省と提案者間で軋轢を生じさせる可能性があることと、透明性が欠如しているため提案制度を活用し、情報提供を積極的に協力する人はほとんどいなくなり、制度として機能しないと予想される。選定プロセスを透明化し、多くの国民の協力のもと保全を推進させるために、回答方法を戦略に明記することが必要である
  1. 該当箇所
    P16L38-P17L1-8 (2)他法令の保護地域制度等の活用
  2. 意見内容
    「自然環境保全地域」に関する施策を具体的(例えば、国立公園同様に、地種区分の見直し、区域の拡充など)に記述すべき
  3. 理由
    理由:生物多様性保全の保護地域の制度としては最も重要な制度であり、種の保存法と連携して活用が必要であるため、具体的な施策の方向性を記述すべき。
  1. 該当箇所
    P17L22 (3)保護地域以外での保全の取組
  2. 意見内容
    「各地で実施されている取組」を「国内外の事例や制度」に修正する
  3. 理由
    保護地域外の保全を推進する仕組みは重要であり、国内外の先進事例や制度を幅広く検討する必要があるため、その方針をより明確化させた方がよい。例えば海外の事例では、EUで行われている「スチュワードシップ」や、英国の「SSSI」など、農林業の中で絶滅危惧種保全を含む生態系保全を推進させるためのインセンティブとモニタリングをセットにした制度の事例がある。国内においては、保全のため土地所有者と保全活動団体の協定を促進させるための基金を制度化している京都の条例のような国内の事例を検討し、国における適用の可能性を積極的に検討する必要がある。
  1. 該当箇所
    P15L2-L24  国内希少野生動植物種の指定の推進
  2. 意見内容
    この項目の中に次の文章を入れるべき「海洋生物は、絶滅の危険性が高い種を含むにもかかわらず今まで指定の実績がないため、レッドリストなどの絶滅の危険性に応じて種指定を積極的に進める。」
  3. 理由
    原案では、平成25年の衆参両議会における付帯決議10項で示された「海洋生物を積極的に種指定の候補とすること」に対応していない。一方で、P17L9では、海洋生物について種指定ではなく保護地域制度を使って保全を推進すると記述されているものの、種指定に関する記述が原案にはなくバランスを欠いている。付帯決議に即して、海洋生物の種指定を積極的に進めることを明記すべきである。
  1. 該当箇所
    P3 L9-15 目的
  2. 意見内容
    以下の「」内の文章を修正すべき。
    P3L14「点検を行うこととし」を「点検とともに本戦略の改定を行うこととし」
  3. 理由
    本戦略は「2020年までに300種追加指定を進める目標」のもと従来の施策から大きく転換する画期的な戦略であるため、現状では想定されていない様々な課題が、数年後には多数でてくる可能性が高い。そのため本戦略は定期的に点検を行い、戦略そのものを改訂することを事前に想定し、戦略に明記する必要がある。
  1. 該当箇所
    P1 L33-35 目的
  2. 意見内容
    世界的目標は愛知目標だけでなく、「世界植物保全戦略」が採択されたことも追加で記述し、「世界植物保全戦略」に対する国内対応も記述すべき(域外保全への対応など)
  3. 理由
    COP10において採択された種の保全に関する目標は、「愛知目標」だけでなく、「世界植物保全戦略」も重要な目標(例:目標7では絶滅危惧種の75%の域内保全を行う)もある。そのため、愛知目標を記述するのであれば、政界植物保全戦略が採択されたことも記述するのが妥当である。日本が議長国として採択したこれらの戦略に対して国内の対応を行う責任があり、愛知目標への対応だけでなく、「世界植物保全戦略」に対する対応を記述する必要がある。

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