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アカガエルの目線で里やまの環境を見る

2014.02.04
活動報告

icon_goto.jpgこんにちは、保護・研究部の後藤です。

2月1日、ぽかぽかとした陽気につつまれたこの日、佐賀県多久市でモニ1000里地調査講習会を開催しました。

今回の調査講習会の内容は、アカガエルの卵塊を数える調査です。

冬にカエルが卵を産むの? と不思議に思う方もいらっしゃるかもしれません。

アカガエルの仲間たちは、まだあまり生きものたちの気配がしないこんな季節に動き出します。冬のちょっと暖かくなって雨が降った日の翌朝は観察・調査のための絶好のチャンスです。

卵や自分自身をも食べてしまう敵もまだ少ない今だからこそ、アカガエルたちは産卵のために田んぼやため池に集まります。

こうしたアカガエルを調査するのには理由があります。

アカガエルたちは卵とオタマジャクシの間は水辺で暮らしますが、そのあと陸に上がると森林や草地に散り一年のほとんどを過ごします。そして、また冬がやってくると水辺に集まり産卵をする、というようにアカガエルは陸地と水辺を行き来して生きています。

水辺と陸地の「連続性」は多くの里やまの生きものたちにとって重要な環境の要素です。特にアカガエルたちは生きものも少ないこの季節に卵を産み、卵塊の形も他の卵と見分けが付きやすいため、市民でも簡単に調べられる指標として調査をしています。

2014akagaeruchosa1_R.JPG▲アカガエルの卵塊を数え中

今回は、長崎県や福岡県から15名もの参加者の皆さんに集まっていただき調査講習会を実施しました。調査講習会では、すでに述べたようなアカガエルの生態の話や、本州や九州・四国でよくみられるニホンアカガエルやヤマアカガエルの卵塊の見分け方、調査の方法などをご紹介しました。

講師をしていただいた秋吉台エコ・ミュージアムの田原義寛さんからは、秋吉台に通っている小学5年生の子によるカエルの種類によるジャンプ力の違いを比較した研究紹介や田んぼの側溝に落ちたカエルたちを救うために開発した道具の紹介など、盛りだくさんの内容で講習会をしていただきました。

そして、講習の中にはこんな印象的な話もありました。

「人も、子供の頃に育った環境や大人になって働く環境、そして子育てする環境があります。子供をもつと産婦人科があるかとか、ここは子育てに良い環境か、親と暮らせるかどうかいろいろ考えますよね。カエルにとっても、子供が産める場所、育てられる場所が大切なんです。」

2014akagaeruchosa2_R.JPG▲調査講習会の様子

アカガエルの目線で、里やま・田んぼを見てみると、親ガエルの住む森林や草地とオタマジャクシの育つ水辺の間をU字溝や道路などで分断されている場所がよく見られます。田んぼも冬の間カラカラに乾いたところではアカガエルは卵を産めません。一見、豊かな田園風景が広がるようなところも、よーく見てみるとこうした環境ばかりというところもあります。

アカガエルは、昔は里やまにごく普通にいた生きものの代表格でもありました。

しかし、今回調査講習会を開催した佐賀県や近隣の県でもアカガエル類は絶滅危惧種*に指定されています。

「どこにでもいるよ」「どこにでもあるよ」という生きものたちは、いつの間にか人に知られぬまにどんどんと姿を消していっています。

2014akagaeruchosa3_R.JPG▲ニホンアカガエル

これからも、私たちは里やまに暮らす生きものたちと人とが一緒に豊かに暮らしていける方法を探っていきたいと思います。

*ニホンアカガエルは福岡県で絶滅危惧Ⅱ類,長崎県では準絶滅危惧種に、ヤマアカガエルは佐賀県・福岡県・長崎県で絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。

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