スコットランドからIUCNメンバーを招いて中池見湿地の現地視察を行いました。
保護・研究部の高川です。
ラムサール条約登録湿地「中池見湿地(福井県)」に計画されている北陸新幹線の建設は、他の国の条約湿地の保全・利用のあり方にも大きな影響を与えうる国際レベルでの問題です。
そこで今回、海外よりIUCN(国際自然保護連合)の要職を務める方を招いての現地視察を行いました。
お招きしたのはスコットランド ワイルドライフトラストに勤める泥炭地の専門家ジョナサン=ヒュー氏です。
ヒュー氏はIUCN西ヨーロッパ地域理事を務めるほか、IUCN本部の生態系管理委員会や泥炭地プログラム、のけん引役でもあり、自然資本の専門家です。
IUCN日本委員会の事務局を長年務めるNACS-Jスタッフとのコネクションにより、このような場が実現しました。
▲ヒュー氏(右)を案内するNACS-J保護・研究部の道家哲平とNACS-J自然観察指導員でもあるウェットランド中池見の笹木ご夫妻
地元団体であるウェットランド中池見と中池見ネットのメンバー、地元集落の樫曲地区の元地権者の方々にも集まっていただき、湿地の案内をいただくとともに新幹線問題についての意見交換会を行いました。
ヒュー氏からは「10万年もの歴史をもつ中池見湿地の特殊性と、そこに築かれてきた人と自然との素晴しい関係にたいへん感銘を受けるともに、新幹線の路線建設による影響に強い懸念を持つ」「国際的な保護地域であるラムサール条約湿地は、地域の重要な資本として、保全されなければならない」といった言葉をいただきました。
地元の方々からも「新幹線も重要かもしれないが、私たちが先祖からずっと引き継いできた中池見湿地を損なってはならない」という強い答えが返されました。
▲メディア4社への取材対応
新幹線の路線建設のありかたは、この地域、そして世界の財産である中池見湿地に大きく関わるものです。しかし、現路線建設のあり方には地元集落、敦賀市、そして福井県すら関われる権限が無いのが現状で、事業者によって環境影響予測のための調査がほとんど情報公開されない状態で進んでしまっています。
▲中池見湿地の元地権者でもある樫曲集落の方々との意見交換
NACS-Jでは引き続きIUCNやラムサール条約事務局にも協力を仰いで国際的にも重要な問題であることを事業者や国に訴えていくと共に、影響評価のための調査が透明性をもって適切に実施され、路線建設のあり方に地域社会こそ関与できる状態となるよう、様々な取り組みを進めていきます。
■新聞報道
・福井新聞「新幹線建設で湿地の水環境に影響も IUCN地域理事、視察で懸念」
(他にも各紙が取り上げました)
・日刊県民福井
・中日新聞(福井版)
・読売新聞(福井版)
・朝日新聞(福井版)
・毎日新聞(福井版)