千葉ニュータウン21住区の自然環境の保全を求めた要望書への回答に対する抗議声明
2014年1月31日
千葉ニュータウン21住区の保全を求めた要望書への回答に対する
抗議声明
公益財団法人 日本自然保護協会 理事長 亀山章
亀成川を愛する会 会長 一島正四
本日、千葉ニュータウン21住区開発用地(千葉県印西市)の自然環境の保全とそれを活かしたまちづくりを求めて全国から寄せられた1万筆を超える署名に対し、ニュータウン開発事業を進める千葉県及びUR都市機構から、要望の内容には一切応じられないという旨の回答がなされた。これに対して公益財団法人日本自然保護協会と亀成川を愛する会は強く抗議する。
千葉ニュータウン21住区開発用地には、開発をまぬがれ奇跡的に維持されてきた全国的にも貴重な自然環境(通称:奇跡の原っぱ)が残されている。日本自然保護協会と地元団体亀成川を愛する会では、この場所のうち特に重要な場所の保全と、豊かな自然環境を活かした新たなまちづくりを地元地域と共に考える協議の場を設けることをこれまで要望してきた。また2013年9月には、全国から寄せられた1万筆以上の署名簿を提出するとともに、2013年12月には印西市議会においても協議の場の設置を求める請願が採択されたところである。
これを受け、要望に対しての回答が本日2014年1月31日に、千葉県企業庁及び同県3関係部署、UR都市機構より、日本自然保護協会と亀成川を愛する会に対してなされた。回答の内容は、「既に一部地区の公園緑地確保など追加の環境配慮は行っており、これまでの開発計画に従い平成30年までに用地全面を造成・販売処分する予定であるため、保全のための用地確保は行わず、事業計画見直しのための関係者との協議の場も設けない」「土地の買い手が見込まれるかどうかによらず用地全面で販売に必要な造成整備を行う」との趣旨のものであった。
この場所とその周辺には千葉県の絶滅危惧種が100種以上確認されており、日本生態学会をはじめとする学会からもその全国的な重要性と保全の必要性が指摘されている。この事業が進行すれば希少種の数種については千葉県内から絶滅する可能性が高く、我が国の生物多様性にとって不可逆的な変化をもたらすこととなる。千葉県は全国の自治体で初めて生物多様性地域戦略を策定した県であり、その中で千葉ニュータウンを代表とする都市周辺の里山の生物多様性の保全に優先的に取り組むことを掲げている。今回の回答はこの戦略方針に完全に反する内容であり、自治体としての責務を放棄したものである。
この場所は、自然環境の重要性だけでなく、地域の人々に安らぎをあたえ、民話として語り継がれている「そうふけっぱらのきつね」の原っぱの姿をとどめ、首都圏内にもかかわらず第一級の自然環境が残されているという、この街の住環境に大きく貢献しているという面を持つ。実際に印西市民の66%もの人々が今後のまちづくりについて開発よりも環境との調和を望んでいる(印西市都市マスタープラン市民アンケート結果)ほか、印西市だけでなく首都圏全体にとっても大きな財産となりうる場所である。それにも関わらず、署名や地元市議会での請願採択といった形で示された民意を無視し、地元地域のまちづくりへの機会を与えないということは、都市機能・居住環境の向上と都市の健全な発展をミッションとして掲げる事業者・自治体としてはあってはならない行為である。
私たちは引き続き、印西市及び首都圏の大切な財産であるこの場所が地域のまちづくりの中で豊かな状態で保たれ活かされていくよう、この場所の重要性と自然資本としての価値を正しく評価し地元地域をしっかりと都市計画の意思決定に関与できるようにするよう、事業者及び千葉県に強く求めていく。
以上