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「日本自然保護協会第13回沼田眞賞授賞式と講演会」とNカレ「日本の自然のちからを知る」を開催しました!

2014.01.27
活動報告
 
事務局長の鶴田icon_tsuruda.jpgと、保護・研究部の安部icon_abe.jpgです。
 
先週末の1月25日、穏やかな日差しの中、東京・清澄庭園大正記念館で、
自然保護に優れた実績を挙げた方を顕彰し表彰する「日本自然保護協会沼田眞賞」と
NACS-J市民カレッジ・沼田賞特別セミナー「日本の自然のちからを知る」を開催しました。
 
 
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午前の部のNACS-J市民カレッジ特別セミナーでは、亀山章理事長のあいさつに続き、
大澤雅彦理事から「戦略的保全地域情報システム(SISPA)のはじまり」について、
NACS-Jがなぜ保護地域にこだわり、SISPAを開発するに至ったかのなれそめをお話いたしました。 

 


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続いて講演では、吉田専務理事より「保護地域とはなにか ~保護地域がもつ”自然のちから”」 と題して、自然資本、生態系サービスをもたらす保護地域についてお話いたしました。
 
これまで、日本の自然環境では、開発計画などが何か起こってから慌てて調査が進むことが多いのですが、科学的自然保護を戦略的に行うためにはあらかじめどういう生物がどこにいるのか、という情報をきちんと整備し、保全計画をたててておくことの重要性が説かれました。
 
保護地域は昔から、王侯貴族や封建領主などによる保護地域や、聖域、地域共同体の共有地という形で存在し、学術的価値があるものを対象とし天然記念物の制度ができ、原生自然や美しい風景を守るため国立公園制度が出来てきました。
 
現在では国際条約による保護地域保護地域として国連リスト、世界遺産条約、ラムサール条約、生物多様性条約、生物圏保存地域(MAB)などがありますが、国際制度による保護地域管理も進んでいます。
例えばヨーロッパのNATURA2000(各国が生物多様性保全上、重要なところをあげる)、「ASEAN HERITAGE PARK」など。後者は登録した場所の間でレンジャー同士の交流がある。
また保護地域をつなぐ、European Greenbeltや白頭大幹構想というシステムもあります。
 
生態系サービスには経済的価値、伝統文化的価値、学術的価値などさまざまな価値があり、生態系サービスを与えてくれる自然のちからが自然資本であり、その自然を大事に守っていくことによって人間も幸せになる、保護地域は、その自然のちからを維持するしくみとして機能する、という話がありました。
 

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保護・研究部の朱宮丈晴より「『保護地域アトラス』からわかること ~日本の保護地域の現状」についてのお話でした。
 
日本にはさまざまな法体系のもと保護区が設定されていますが自然公園法や自然環境保全値域、鳥獣保護区、生息地等保護区など、環境省所轄のものを全て足すと国土の16.3%となりますが、この中には自然公園の普通地域などほとんど保全がなされていない場所も含まれています。厳正に保護されている部分だけを足し合わせると、国土の約3.6%にしかなりません。
 
また、地域により事情が異なり合意形成が困難なケースもあり、西日本は地土地所有者と管理者が異なる域性公園、東日本は土地所有者と管理者が同じ営造物公園という性格が強く出ています。
 
保護地域となっていても、リニア新幹線等、大規模開発が免れないケースもまだ多くあります。
海洋を見てみると、政府発表の海洋保護区はEEZの8.3%であるが、厳正に保護されているのは0.016%に過ぎません。
 
自然公園から外れている希少な植物群落も多く、例えば標高が高い場所にあるものは保護されているが、
標高が低いものは保護から外れているなどということがあります。
 
こうした分析を重ねてみると、日本の保護地域には、法制度間連携が難しく、適切なガバナンスが難しい、厳正に保護されている地域が少ない、活用されていない保護地域がある、重要な生態系が保護されていない、GISデータの整備、海の生物多様性保全を保全する保護地域は特に不足している、などの問題点が多くあります。
 

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講演のあと、こうした問題点や課題の整理から、フロアからも質問や意見が活発に出て、国内外の保護地域の活用事例などが解説されました。
 

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午後の部は、第13回の沼田眞賞の授賞式と記念講演会が取り行われました。
 
亀山理事長の清澄庭園・大正記念館の歴史や文化についての解説につづき、田畑貞寿顧問より講評が行われました。
 

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今回は、長年自然保護活動を支援した功績をたたえ、公益財団法人 自然保護助成基金(プロ・ナトゥーラ・ファンド)の創設と運営に携わった岡本寛志氏に特別賞が授与され、
沼田眞賞に表浜ネットワーク、水辺に遊ぶ会、千葉県自然観察指導員協議会小学校自然観察支援ネットワークの3団体が授賞されました。
 

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▲沼田眞賞特別賞受賞 岡本寛志氏
 
記念講演会のトップバッターは、表浜ネットワークの田中雄二さん。
ネットワークでの活動と表浜の特性、砂浜の現状とウミガメの産卵地の保護活動についてご発表いただきました。
 

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一見単調に見える砂浜という環境ですが、毎日異なる顔を見せるほど多様であり、表浜海岸(遠州灘海岸)は天竜川の広い沖積平野西端の渥美半島沿岸にあって、常に動くので研究の対象になりにくい場所でした。
 
多くの生き物たちが毎日、砂浜に漂着物としてつきます。特に深海の生き物が多く、砂浜は生物多様性に富んでいます。
 
天竜川から流れる土砂の量は、ダムや堰で止められるため、どんどん減っています。
離岸堤など人工構造物も海の環境にとってはよくありません。
 
砂浜は釣りやビーチパーティなどの沿岸活動の対象となり、ゴミ捨て場にもなりやすいです。ウミガメの人工ふ化や放流が最近は保護活動として人間の手で行われます。ですが、昼間の放流や食害誘発などの問題があり、かえってウミガメに悪影響を与えている場合もあります。
 
ウミガメとは直接話が出来ませんが、彼らが残す足跡=タートルトラックが多くのことを教えてくれます。
ウミガメが産卵できるような環境を残すことが大切であり、面的でモザイクの保全が必要なのです。
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砂浜は一見、単調に言える。しかし、その世界はとても活発な動的な世界であり、
特異な声明が強かに生きている。
陸と海をつなげる緩衝帯としても今後は大切に保全していく必要がある。
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という力強い言葉で締められました。
 
 
続いて次の受賞者、水辺に遊ぶ会の足利由紀子さんのお話しです。
 

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瀬戸内海随一の規模と環境を誇る中津干潟。
戦後はアサリをとってもとっても獲りつくせないほどアサリが採れたそうです。
現在でおハマグリ、カブトガニ、ズグロカモメ、タイラギ、スナメリなど多様な生き物の生息場所になっています。砂泥、礫、塩生湿地、砂浜など多様な環境があります。
 
水辺に遊ぶ会は、漁業者などの地元の方々と対立するのではなく、生物調査などを通じてわかった面白いことを、地域の人たちに提供することで地域の理解を得てきました。
 
最初はアサリも獲れないような海は危ないし埋め立てたら良いという意見だった人たちもいました。
 
この15年間で142回の観察会を実施、環境学習のサポ―ト(小学校、中学校等)、教材の製作提供、海岸清掃、漂着ごみ調査などを行ってきました。専門家の手を借り調査研究活動を行い、国際的な場でも情報発信を行ってきました。漁業体験や食育などの子どもたちへの教育活動を通じて、漁業者の方々ともともに活動できる場をつくっていきました。
 
大新田地区における合意形成も行い、セットバック護岸の導入によりカブトガニの生息地を守ることが
できました。
 
「漁師さんと第6次産業を作ることと、中津干潟にネイチャーセンターをつくることが今後の夢です」と語るうれしそうな足利さんのお顔が印象的でした。
 
最後の発表は千葉県自然観察指導員協議会小学校自然観察支援ネットワークの佐口美智子さん、
山田益弘さん、松川裕さんの発表です。
 

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千葉県自然観察指導員協議会(自然観察ちば)は、小学校自然観察支援ネットワーク(SSN)の学校教育の場で支援を行っています。
 
小中学校、保育園などで後日児童と先生が継続観察できる場所を観察フィールドにし、10人ほどの児童にきめ細やかに対応するため、自然観察指導員がチームで教育支援活動をするようになりました。
人材の登録、理念の共有化、勉強会の実施、フォーマットの作成などの4つの柱で、よりよい支援体制を構築してきました。自然観察指導員のフォローアップ研修会などでSSNへの登録を呼びかけ、仲間を広げています。できること、めざすことを理念として共有し、自然の不思議さ、文化や歴史、伝承遊びなども重要視しています。勉強会では、教科書の内容や、生活科と総合的な学習の時間の内容の確認、子どもたちをひきつける方法、雨の日の活動を共有してきました。
 
年4回の勉強会を行い、各校の近くのフィールドなど視察、模擬支援なども実施し、学校との打ち合わせ、支援者名簿、家庭への連絡、プログラム、実施報告書などフォーマットを作成。
低学年には保護者の協力を得て、グループに1人ずつの保護者の協力を得て授業を行っていますが、
最近では、参加を楽しみにしている保護者も増えてきました。またアレルギーや障害を持った児童の情報ももらって対応をしています。
こうしたノウハウを詰め込んだ、「SSN指導員のしおりとアクティビティ集」を作成して、会員に配布。
14年間続く活動で、合計件数は803件、参加人数は約5万人、参加指導員数は4200名を超えました。
郷土の自然の素晴らしさを伝える姿、子どもたちのために力を出す姿、仲良く活動している大人たちの姿を見せられることも、チームを組んで活動する役割です。
 
地域の実践事例を報告が続きます。
千葉市立横戸小学校(児童数は160人)は、千葉市に唯一、学校林を持つ自然いっぱいの学校で、
子どもたちは学校林が大好きで休み時間にもよく遊んでいます。2004年から自然観察の指導支援が始まりました。年間全学年11時間の授業です。
子どもの心をつかむ工夫に力を注いでいます。子どもが喜べば、先生や保護者も喜びます。
校長先生や教頭先生なども時間の許す限り参加してくれています。
 
続いて、四街道でのSSN活動を紹介します。染み出し水が非常に豊富な谷津があり、生きものが非常に豊か。市内9カ所でヘイケボタルが生息しています。
東京の通勤圏でもあり、開発が進んだが、かえって子どもたちに自然の大切さを教えるべきという機運が高まり、98年から和良比小、山梨小で自然観察支援がスタート。
2000年から千葉県自然観察指導員協議会のSSNが組織され、市外の指導員の支援を受けてきましたが、地域の子どもは地域で育てようと、市内の指導員を増やしてきました。
ホタルとセミの観察会など夜の観察や歴史探検の支援も行っています。
今年の感想では小4の子から「大きくなったら自然観察指導員になりたい」との声をいただきました。
 
最後に、授賞したみなさまと記念撮影で、お互いの活動をたたえあい、これからの活動の一層の活性化を願い、祝賀会で交流を深めました。
 

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▲受賞者一同


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▲特別賞 各位


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▲表浜ネットワーク、水辺に遊ぶ会 関係各位


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▲千葉県自然観察指導員協議会(自然観察ちば) 関係各位

●オリジナルの写真は下記のNACS-JのFacebookページのアルバムをご覧ください。

https://www.facebook.com/media/set/?set=a.652564058138795.1073741836.219683004760238&type=3

●動画記録は、下記のUstreamのnacsjonair の過去の番組からご覧ください。

http://www.ustream.tv/channel/nacsjonair

 
 
 

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