「奇跡の原っぱを守ってほしい」という1万通の署名に対し、「要望の内容には一切応じられない」という旨の回答がなされました
保護・研究部の高川です。
千葉県のニュータウン開発予定地にひろがる「奇跡の原っぱ」の保全を求めて、全国からお寄せいただいた10,000通以上の署名に対し、事業者であるUR都市機構・千葉県企業庁と千葉県知事部局から、1月31日に回答が得られました。
私たちはこれまで、この重要な自然環境を活かしたまちづくりを進めていくため、
- 地元の市民・市役所も含めた協議の場を持つこと、
- 特に重要な場所は保全の手立てを講ずることを求めてきました。
全国から10,000通もの署名が寄せられただけでなく、市議会でも協議の場を求める請願が採択され、日本生態学会など各学会からも保全を求める要望書が出されていました。それにも関わらず、回答は下記のような信じがたいものでした。
- これまでの事業計画に沿って、平成30年度までにすべての場所を造成・販売する。
- そのため市民と協議の場を設けることは困難だ。
- 保全のために土地を確保することはできない。
- 土地の買い手の見込みがなくとも、販売準備のため、整備工事を全面で行う。
といった趣旨の回答でした。
この場所には、関東では珍しいキツネをはじめ、800種類以上の生きものが日々生活をしています。県指定の絶滅危惧種は100種以上あり、工事が進めば豊かな自然環境がすべて失われるだけでなく、数種類の希少種が千葉県から絶滅してしまうことになります。
「絶滅の可能性の自覚があっての決断か」という質問には、残念ながら回答はなされませんでした。
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私は全国各地の里山を調べ守る活動をしていますが、はじめてこの奇跡の原っぱに立ち入ったとき、まさかこんな場所が首都圏に残っていたのか、と言葉を失うほどの衝撃を受けました。
見渡す限りの草原と、関東ではまず見られない花々が足元に咲いていました。ごく最近までは地元の子供たちの格好の遊び場となっていたそうで、地域の方々はもちろん、全国から訪れた子供たちが走り回れる原っぱになれば、どんなに素晴らしいことか、と想像をかき立てられました。
キツネの巣穴も見つかっており、冬には雪の上に2匹が連れ添う足跡も見つかっています。この冬の季節、もしかするとキツネの子どもも生まれている可能性もあると思うと、今後計画されている全面造成のもたらす惨状を想像して胸が痛むばかりです。
この草原の価値は、単なる自然環境の重要性だけではありません。地域の方々の心の豊かさや街の魅力につながっており、また、関東・日本の大切な宝物の一つです。
その価値が何ら理解されておらず、地元市民・自治体がこのニュータウン計画のあり方に関与することが完全に否定され、これまでの計画通りこのまま工事を行う、という今回の回答には、深い憤りを感じます。
日本自然保護協会と地元団体の亀成川を愛する会では、即日抗議声明を発表しました。
千葉ニュータウン21住区の自然環境の保全を求めた要望書への回答に対する抗議声明
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私たちは引き続き県と事業者に対して、地域の人々が地域のまちづくりに責任を持って関われることの大切さを訴えていくとともに、この場所の価値を、経済や文化の面からも明らかにし、多面的な財産であることを伝えていきます。このそうふけっぱらの保全活動へのご支援をぜひお願いいたします。
また、日本自然保護協会へのご入会もこうした各地の貴重な環境の保全活動へのご支援になります。
ご入会のご案内はこちら(こちらもネットからのご入会ができます)>>ご入会案内へ
ぜひ、保全活動へのご賛同とご支援をお願いいたします!