【配布資料】今日からはじめる自然観察「個性豊かな樹皮を見る」
<会報『自然保護』No.537(2014年1・2月号)より転載>
このページは、筆者に、教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可)。ダウンロードして、自然観察会などでご活用ください。
冬、樹木の名前を知りたいとき、遠くから観た木の全体の姿や、葉っぱがあるのかないのか、冬芽がどんな形なのか、そして樹皮の模様もヒントになります。今回は樹皮に注目します。
伏見 勝(自然観察指導員講習会講師・樹医)
木の温度を感じる
幹にそっと手を当ててみてください。冬の寒い日、表面がすべすべのサルスベリやシラカンバなどはひんやりと冷たく感じるのに比べて、ゴツゴツしたクヌギやコナラなどはむしろ暖かく感じるかもしれません。温度は、木の種類だけでなく、木の立っている場所でも違ってきます。同じ場所でずっと立っている木には、一定の方向から陽が当たります。同じ幹でも、陽の当たる側とその反対側では、温度や湿度が異なります。コケは、幹のどちら側に生えているでしょうか? その付き具合から光の当たる方向を推測してみましょう。
また、樹皮の模様は、種によってさまざまです。若い木か老木かによっても違ってきます。表面の小さな割れ目状の模様は皮目といい、葉の気孔のように空気を流通させ、呼吸するところです。成長とともに樹皮が剝がれる木があります。その様子も木によって違い、ウロコ状に剝がれたり、横や縦に剝がれたりします。
動物たちの食物・住居に利用
シカやサルにとって、樹皮は食物となります。でも、どんな樹皮でも良いわけではなく、選んでいるようです。シカが食べるリョウブの樹皮をかじってみたら、とても苦い味がしました。サルは、冬、食べ物が少なくなるとコシアブラの樹皮などを好んで食べます。
カケスやヤマガラなどは、樹皮の隙間などに種子を隠して蓄えます。樹皮は、野鳥たちの巣材にもよく利用されています。リスやヤマネも、樹皮を使って巣をつくります。八ヶ岳のある森では、ヤマネは主にダケカンバの樹皮を、リスはスギの樹皮を巣材に使っていました。スギとヒノキが両方生えている場所でも、リスはスギばかりを剥いでいました。
人の暮らしにも樹皮は利用されてきました。スギの樹皮は屋根に使います。ノリウツギなどは、樹皮からネバネバしたノリが採れるので、昔は和紙のつなぎに使われていました。ヤナギは歯痛に効くとされ、爪楊枝として使われていたそうです。ヤマモモやキハダなど、いろいろな樹皮が染料として使われてきました。奄美大島の特産の大島紬はシャリンバイの樹皮で染められています。
暮らしの知恵を守っていくとともに、木の恵みをこれからもずっと使い続けていけるよう、大切に使っていきたいですね。
クイズの答え:①→D クマ ②→A リス ③→B シカ
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