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シンポジウム「絶滅危惧の水産生物と持続可能な漁業」に行ってきました。

2013.10.02
活動報告
icon_abe.jpg 保護研究部の安部です。
 
 
9月28日に横浜国立大学で開かれたシンポ「減る水産物、増える海獣-絶滅危惧の水産生物と持続可能な漁業-」を聞いてきました。
 
 
プログラムや講演要旨は以下からご覧いただけます。
●減る水産物、増える海獣-絶滅危惧の水産生物と持続可能な漁業-http://risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/2013/130928COSIE.html
 
松田裕之先生(横国大 教育研究センター長)により最初のご挨拶。
「ニホンウナギのように減る水産物もいるが、一方で北海道の海獣のように一時期減っていたものの増加しているケースもある。半世紀前から着実に事情は変わっている。今日は多様な立場の方から多様な海の生き物の現状についてご紹介したい。」
 
 
クロマグロからトド、ゼニガタアザラシなど多様な海の生き物の話を聞きましたが、印象に残ったのは中央水産研究所の廣田将仁さんからお聞きした「急成長する中国のナマコ市場と日本産のナマコの生産」と題した講演でした。
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日本ではナマコ量は瀬戸内海や東北などで行われてきた。日本は古くから乾燥ナマコも扱ってきた。江戸期には横浜などで加工され俵物として中国に輸出されていた。
マナマコは北京料理に使われ不老長寿の仙薬として食べられている。一方、広東料理では日常食品として食べられている。どちらも文化的なものである。
 
平成になってきて、ナマコの漁獲が増えてきた。しかしこれはこれは江戸期の俵物の時代の漁獲とは全く性質が違うものである。乾燥ではなく塩蔵という方法が取られている。値段も500円から4000円ー8000円という値段にはねあがった。塩蔵のナマコは下関を経由し、香港に直接送られる。
 
主産地では急激な漁獲量が急増し、ナマコによる収入も大きくなった。だが、ナマコの輸出量は2007年にピークに急落し、価格は大きく乱降下している。不老不死の薬だから口に入れば良いのかもしれないが、ナマコ製品には半製品開発、ファーストフード化、完全養殖、フリーズドライなどの方法が導入され、製品もナマコ牛乳、ナマコ酒、、などありとあらゆる形で加工・消費される。
 
このような状況のなか、 北海道利尻島では塩蔵から乾燥ナマコに立ち戻ろうという動きがある。乾燥ナマコの方が処理に時間がかかる。だが多くの地域の人が関わることができ、雇用も創出できる。地域でとれるものは地域で消費していくのことが望ましいと考える。
 

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WWFジャパンの山内愛子さんからも「約3千年の歴史を持つクロマグロ漁に日本の蓄養漁業が入ったことにより事情が大きく変わった。日本はありとあやゆる外国からクロマグロの稚魚を輸入している。 ほぼ100%近くのクロマグロを日本人が食べている。 クロマグロ資源保全にもっとも貢献すべき国は日本! 近年、大西洋クロマグロ資源が過去最低水準を下回るようになってきた。」 とナマコと似たような、お話しを聞きました。ナマコもクロマグロもウナギも人間の欲望のままに獲り尽されないように、どこかほどほどのところでブレーキをかけていくべきだと思います。
 
今日のお話しでは海獣の多くは絶滅危機を脱しつつあるということでしたが、増えたら増えたで共存する道を探すのが大変です。パネルディスカッションでも現状の把握や対策が遅れるのは、省庁の縦割りに起因するところが多いので、「陸と海で統合性のあるレッドリストを作ること」、「環境省と水産庁の連携・分担が課題であること」などが話題になりました。

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▲パネルディスカッションの様子

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