2020年は生物多様性条約愛知目標の達成年。 日本は、その達成と自然共生型のオリンピック開催に向け、世界に約束した責務がある。
2020年、愛知目標の達成と自然共生型のオリンピックの実現に向けた緊急声明 (PDF/153kB)
2020年、愛知目標の達成と自然共生型のオリンピックの実現に向けた緊急声明
2013年 9月11日
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
2020年、東京でオリンピック開催が決定した。くしくも2020年は、2010年に名古屋で開催した生物多様性条約第10回締約国会議(CBD-COP10)で決議された、愛知目標の達成年である。
生物多様性条約COP10では、日本が議長国を務め世界をリードし、2020年に向けてあらゆるセクターが生物多様性保全に向けた取り組みを行い、これ以上の生物多様性の損失を食い止めることが192の国々とEUによって合意された。また、日本が提案し、国際社会が協力して生物多様性保全に取り組むという国連決議となった「国連生物多様性の10年」の最終年でもある。
オリンピック招致のプレゼンテーションでは、首相自らが福島第一原子力発電所の汚染水は港湾内で完全にコントロールされていると宣言し、立候補資料でも「環境を優先する2020年東京大会」、「自然環境と文化遺産の特筆すべき特徴の保護及び強化」、「自然と共生する都市環境計画」や「水と緑の生物多様性に関わるプロジェクトの普及・発展」などの実現が述べられている。
しかし、すでに会場に関しても葛西臨海公園でのカヌー競技場の問題や、新国立競技場の大面積のイメージ図などからも既存の良好な環境の損失が懸念される。環境影響評価については「東京が2020年大会開催都市に選定された場合には、新たに建設する会場を対象に、きめ細かい実施段階環境影響評価を行う」ことが宣言されており、透明性の高い公開プロセスが求められる。過去のオリンピック景気の誘導施策のように、新規施設やインフラの建設一辺倒の公共投資や、地域や多様なステークホルダーの声を反映しないままの実行では、とうてい世界に向けて約束した「環境」をレガシー(遺産)として次世代に継承するオリンピックを開催することはできない。愛知目標に対しても達成はおろか、生物多様性の損失を招く結果を生み出すことになりかねない。新規・既存会場を含む都市環境計画は、単なる「緑化」や「緑被率の増加」にとどめず、地域の生物多様性を損ねない計画として実現されなければならない。
国は、汚染水対策をはじめとする原子力事故の終息に向けた根本的な対策と、進捗の説明責任を世界に負っている。宣言してきた通りの「完全にコントロールされている」状態に一刻も早く近づけるよう、汚染水対策および廃炉に向けた実行策こそ「強靭化」する必要がある。オリンピック開催においても「エネルギー、資源、水の保全の観点から持続可能なデザインとする」ためにも、一極集中のエネルギー生産、送電システムを見直し、原子力発電の再稼働計画を中止して、持続可能な再生可能エネルギーによる地域の自律的なエネルギー生産を加速すべきである。
2020年に日本が世界に約束した愛知目標実現のために、日本自然保護協会はあらゆるセクターとの生物多様性保全の取り組みを加速している。自然と共生するオリンピック開催に向けた取り組みに対しては協力を惜しまない。関係するセクターの連携に向け活動を展開する。
以上
■参考資料:東京2020年オリンピック・パラリンピック招致委員会ウェブサイト
立候補ファイル テーマ5-環境 (PDF 2.2MB)