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ワシントン条約40周年記念シンポジウム「~ワシントン条約の動向と日本への期待~」に行ってきました。

2013.08.24
活動報告

icon_abe.jpg  保護プロジェクト部の安部です。

 

8月21日、トラフィックイーストアジアジャパン主催で開かれたワシントン条約40周年記念シンポジウム「~ワシントン条約の動向と日本への期待~」を聞いてきました。
 
無秩序な取引から種の存続を脅かされる野生生物を守るための国際合意として1973年に発効し、今年で40周年をむかえたワシントン条約(CITES)。この枠組みを通じて、加盟国が協力して取引を規制することにより、これまで多くの種の絶滅を食い止めてきました。
近年、殺される数が増加しているゾウやサイも問題ですが、ここにきて世界的に問題になってきたのは 大量に捕獲される水産種についてです。海は広大なので科学的分析が困難です。モニタリングひとつとっても、科学的な知識を得ることが大変ですが、国際的な体制を構築して、規制を加える必要が生じてきました。
 
 
ワシントン条約事務局長のジョン・スキャンロン氏のお話しですーーーーーー
 
ワシントン条約は35,000種の動植物(海から陸まで)を対象としている。ファッション、食品、薬品などの観点から多くの野生生物が消費されている。条約では、合法性の確認、持続可能性(科学的根拠ををもとに)、トレーサビリティの点を見る。
例えばサイはワシントン条約の付属書に掲載された時点では2,000頭だったのが、現在では20,000頭になったなど、規制をかけることは効果がある。種の保全だけではなく、それがそこに住む人々やその地域を大切に保全することにつながる。
3月の会議では1)重要な木材種を管轄に置くことができた、2)水産種を対象にできた、3)ゾウやサイなどの保全対策の強化、の3つが決まったことは大きな一歩となった。
 
また、最も議論を呼んだのが水産種である。提案のあった5種のサメとマンタが今後規制の対象となる(付属書のⅡに掲載)。種同定やトレーサビリティ、公海での責任の取り方などの問題への対処が必要であるので、発効は2014年9月となる。日本はサメに関しては留保したが、技術協力を約束してくれた(マンタについては日本も採択)。今後ますます省庁、民間、NGOの協力が大事となる。
 
ーーーーーーーーーーーー
 
トラフィック・インターナショナル海洋プログラムリーダーのグレン・サント氏(トラフィックインターナショナル)の話によると、サメ漁の8割に20か国が関与し、日本は第7位の輸出国です。
サメは他の魚よりも過剰漁獲の影響を受けやすい種で、例えば子供の数が少ない、寿命が長い、成熟が遅いなどの特徴があります。マグロなどと異なり、サメの管理体制は整っていないので、国、地域、グローバルな管理体制が必要です。
 
これに対し、異なる意見を持つ、水産庁の太田慎吾氏(水産庁 増殖推進部)さんのお話「サメの保存管理に関する日本政府の取り組み」も伺うことが出来ました。環境団体が感情的になり、一部のホテルではフカヒレのスープを出さないなど社会的に影響が広まっていることを憂慮されている。水産庁ではサメの種類ごとに管理措置を決めるなど科学的手法や実効性を踏まえた保全措置を検討などが必要であると考えているとのこと。
 

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▲サント氏の講演
 
これに対し、サント氏もスキャンロン氏も全てのサメを規制しようとしている訳ではなく、一部の種に関しては厳密なモニタリングや予防原則の適用が必要だということを強調。このようにすることにより、将来にわたり末永く食べ続けることができると言っていました。
水産庁が科学的なデータを大切にし、サメのデータを種ごとに取り、それをもとに検討したいという姿勢はわかりますが、現時点で長期にわたるデータは存在しないのです。日本がなぜサメに対し留保という姿勢を取るのか、説得力に欠けると思いました。
 

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▲パネルディスカッションの様子。
 
最後は、「私は魚食も大好きです。今晩どんな魚が食べられるのか楽しみ」というスキャンロン氏のまとめで閉められました。

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