【配布資料】今日からはじめる自然観察「これは何の木のどんぐり?」
<会報『自然保護』No.535(2013年9・10月号)より転載>
このページは、筆者に、教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可)。「どんぐり検索表」をご使用される場合は、下記画像をダウンロードして自然観察会などでご活用ください。※画像は上下切り取り不可。上部の当会ロゴ、下部のクレジット及び参考文献まで入れてご使用ください。
ドングリとは、ブナ科の果実の俗称です(クリ・ブナ・イヌブナを含まないこともある)。
日本に自生するドングリの木は、23種1亜種4変種とされ、コナラ・クリ・マテバシイ・シイ・ブナの5グループ(属)に分けられます。拾ったドングリは何の木のドングリかな?
北岡明彦(NACS-J自然観察指導員)
日本列島の天然林は「ドングリの木」の王国です。森の概要をつかむためには、ドングリの木を知ることが大切です。
亜熱帯から暖温帯にかけての天然林の高木層は、大部分をドングリの木が占めています。奄美以南の山地のではオキナワジイ(スダジイの亜種)とオキナワウラジロガシがよく茂っています。九州から、日本海側はおおよそ北陸以南の平地、太平洋側はおおよそ宮城県以南の平地では常緑樹のカシ類とシイ類が多く、それより寒い地域では夏緑樹のミズナラやブナ類がよくみられます。二次林では、コナラ・アベマキ・クヌギが優占する森林が多くみられます。
ドングリの落ちる順番を観察してみよう。
秋になると次々にドングリは木から落ちますが、その順番は地域ごとにおおむね決まっています。例えば愛知県西部では、モンゴリナラ(フモトミズナラ)→アベマキ→コナラ→カシ類→シイ類の順に落下します。この時間差のおかげで、種子の運搬者であるネズミやカケスなどの野鳥にまんべんなく食べて運んでもらうことできるのです。最後においしいシイ類が落下します。
ところで、ドングリを生で食べたことがありますか? ブナの実はクルミとピーナッツを足して2で割ったような味で超美味! シイ類は生でも食べられますが、炒ると香ばしくおいしくなります。多くのナラ類・カシ類はタンニンをたくさん含みえぐくて生で食べられません。でも、水にさらしたり、加熱したりしてあく抜きすれば、食べられるようになります。縄文時代の遺跡からは食用ドングリの貯蔵遺構が発見されているほか、韓国では現在もナラ類の粉を豆腐状に固めた「トトリ・ムク」という料理が食べられています。
動物も大好きなドングリ
人以外にも多くの動物がドングリを食べます。一番よく見るのが、ドングリから小さな穴を開けて出てくるウジムシのような幼虫です。これはシギゾウムシの仲間で、昔から釣りの餌に使います。
また、シイ類の実は、樹上でムササビが好んで食べ、地上に落ちるとネズミやカケスなどが食べます。ミズナラやブナの実は、ツキノワグマの主要な食料で、これらの実が不作の年は人里に降りてくるクマが多くなります。ドングリの森は多くの動物の生命をはぐくんでいます。
▲ハイイロチョッキリは、シギゾウムシの仲間(コナラシギゾウムシ、クリシギゾウムシ、クヌギシギゾウムシなど)より先にドングリに卵を産んだ後、小枝ごと切り落とすので、シギゾウムシが同じ実に産卵してしまうことはありません。シギゾウムシは産卵した後、ドングリをそのままにします。枝がついているドングリから白い幼虫が出てきたらハイイロチョッキリ、枝がついてなければシギゾウムシの幼虫です。
参考文献
- 環境庁自然保護局生物多様性センター(2000)『第6回緑の国勢調査 身近な林 (秋冬調査編)調査の手引き』
- 徳永桂子・著 北岡明彦・解説(2004)『日本どんぐり大図鑑』偕成社
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