絞り込み検索

nacsj

「種の保存法」改正にあたってのコメントを出しました

2013.06.04
要望・声明

「種の保存法」改正にあたってのコメント(PDF/202KB)


「種の保存法」改正にあたってのコメント

2013年6月4日

2020年までに300種追加などの意欲的な目標は、「日本の生物多様性保全の歴史の転換点」である ~一方で「種の保存法」の抜本改正は3年後に先送り~

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

本日の衆議院環境委員会で可決された「種の保存法」の改正法は、罰則の強化を主体とした部分的な改正に留まり、国内希少種選定の基準・方法・プロセスを透明化し、保全計画を策定するための「科学委員会の設置」などの抜本的な改革は3年後に先送りされた。

一方で、「2020年までに国内希少種を300種新規指定する」など、意欲的な目標が附帯決議に明記されたことは、「日本の生物多様性保全の歴史の転換点」として評価できる。この目標を確実に実現し、生物多様性条約第10回締結国会議で決議された愛知目標(目標12既知の絶滅危惧種の絶滅を防止する)の達成に期待したい。当会は、今国会における法改正の成果と課題を以下の3点と考えている。

1. 「2020年までに国内希少種を300種新規指定」

同法改正前には、同法で指定する国内希少野生動植物種は90種であり、日本の絶滅危惧種の2.5%と非常に少なく、生物多様性国家戦略2012で定めた指定種の目標も、2020年までに25種の追加に留まっていた。今回の法改正の附帯決議によって、2020年までに300種を新規指定することを目指すとした目標は、「日本の生物多様性保全の歴史の転換点」として評価できる。

一方で、この目標を達成し、指定した動植物を絶滅の危機から救うためには、従来の仕組みや体制では実現できない。そのため、当会を含むNGOからも提案し、今国会審議でも取り上げられたように「環境省の努力目標ではなく、全省庁横断の達成目標として閣議決定する」と共に、参議院の附帯決議に明記された「希少野生動植物種の保存のため、財政上、税制上その他の措置を講ずる」、「希少野生動植物種の指定に関する国民による提案の方法及び政府による回答の方法等を明記する」など、多様な主体が参画する仕組みづくりが必要である。

2. 「海洋生物を積極的に選定候補とする」

海洋生物はジュゴンやニホンアシカなどが絶滅危惧種に指定されているにもかかわらず、1種も国内希少種に指定されていないのが現状である。今回の法改正の附帯決議によって、海洋生物を積極的に選定候補の対象とすると明記されたことは評価できる。ジュゴンなどの海洋生物の指定を急ぐことが望まれる。

3. 3年後の抜本改正に向けた課題

同法の抜本改正を目指した「科学委員会の設置」について、附帯決議で「3年後に検討すること」が盛り込まれたことは、今後の改正に向けて期待できる。

本年はじめの時点では、罰則強化以外には見るべきものが少なく、1992年の法律成立後、20年にわたり解決されなかった課題は、そのまま置いておかれるかに思われた。しかし、当会をはじめとするNGO各団体や、日本生態学会、日本植物分類学会などの学会、第二東京弁護士会からの幾多の提言に、環境省が真摯に耳を傾けたこともあり、いくつかの要望が実現した。

同法に関心を寄せる与野党各会派の議員が、立法府として責任ある対応をしたこともあり、大きな収穫が得られた。関係各位のみなさまのご尽力に深く敬意を表し、感謝申し上げたい。

前のページに戻る

あなたの支援が必要です!

×

NACS-J(ナックスジェイ・日本自然保護協会)は、寄付に基づく支援により活動している団体です。

継続寄付

寄付をする
(今回のみ支援)

月々1000円のご支援で、自然保護に関する普及啓発を広げることができます。

寄付する