おもしろカメ話vol.1 「カメの暮らしをのぞいてみよう」
おもしろカメ話vol.1「カメの暮らしをのぞいてみよう」
ニホンイシガメの暮らし 春夏秋冬
種類ごとに暮らす環境も違う
ニホンイシガメ(以下イシガメ)やクサガメ、ニホンスッポン(以下スッポン)、北米産のミシシッピアカミミガメ(以下アカミミ)は皆、水陸両生のカメです。クサガメ、スッポン、アカミミは、どちらかというと流れがそれほど強くない平地の河川や池沼にすみ、イシガメは山間部の河川の上流部のような環境にもすんでいます。
琉球列島のカメでは、リュウキュウヤマガメ(以下ヤマガメ)とヤエヤマセマルハコガメ(以下ハコガメ)は、陸生で、両種とも水かきが発達しておらず、泳ぎは下手で水には浸かる程度です。ヤエヤマイシガメは水陸両生で、本州のイシガメと比べて、より水中を好みます。
本州のカメは昼行性 沖縄のカメは夜行性
本州・四国・九州にすむカメは基本的に昼行性ですが、スッポンは臆病なので日中でもよく水底の砂や泥に潜って隠れています。真夏の日中は水底に隠れて暑さをしのいでいます。琉球列島は日差しが強く暑いので、ヤエヤマイシガメはほぼ完全な夜行性です。ヤマガメやハコガメは明け方や夕暮れ時に活動する薄明薄暮性のようです。
水中で越冬 カメはどこで呼吸する?!
冬、イシガメやクサガメ、スッポン、アカミミは代謝が下がりほどんど動かなくなります。琉球列島のヤマガメやハコガメ、ヤエヤマイシガメも、亜熱帯気候とはいえ1〜2月は気温が下がるので、冬ごもり状態に入ります。イシガメやクサガメは陸地の地中で越冬すると思われることが多いのですが、そのような個体はごくごく一部で、水陸両生のカメは通常は水底の岩の間や落ち葉の堆積の下、浸食されてできた横穴などに隠れて越冬します。陸生のヤマガメとハコガメは陸地の穴や地中に隠れて越冬します。
爬虫類で肺呼吸のカメが水底で1〜2カ月も過ごすのは驚きです。カメは肺の空気を出し入れするのに喉をふくらませたりすぼめたりしますが、この行動を水中にいるときにもすることがあります。(水族館などで観察してみましょう)水中では水を出し入れすることによって、食道から水中の酸素を補助的に吸収することができるのです。おしりの穴(総排出孔)の奥の対になった袋状の器官(副膀胱)でも水中の酸素を吸収できます。カメは変温動物ですから、寒ければ代謝速度がかなり下がるので、食道や副膀胱から得られるわずかな酸素で生きていけるのです。
春になると本州・四国・九州のカメは池や川の岸辺や、岩、倒木などに上って積極的に日光浴をします。双眼鏡で観察すると、種まで分かるでしょう。
本求愛・交尾は春と秋
イシガメは野外での研究から、主に秋と春に求愛・交尾をすることが分かっています。断片的な観察からほかの種のカメも秋と春に交尾が多いようです。カメのメスは精子を、長いときには数年間も貯蔵できるので、夏の産卵の直前に交尾しなくてもよいのです。
イシガメとクサガメは浅い水辺でオスがメスに求愛します。イシガメのオスは、メスの正面に来て、手のひらを外に向けて両手を交互に揺らして求愛します。
クサガメは手を使わず、オスは頭でメスの頭をコツンコツンと刺激します。
アカミミは水面に浮いた状態で、メスに向き合ったオスが手のひらを外側に向けて両手を揃えて爪をふるわせて求愛します。メスが求愛を受け入れたらオスもメスも沈んで水底で交尾します。
スッポンについては詳しく分かっていませんが、求愛交尾期のスッポンの甲羅には噛み痕が付いていることもあり、荒々しい交尾をしているようです。
ヤエヤマイシガメの交尾も荒々しく、オスは背後からメスに馬乗りになって、うなじに噛みついて交尾をします。ヤマガメとハコガメも、オスがメスの甲らの縁を咬むなどして交尾をします。
産卵は初夏
日本産のカメはすべて6~7月を中心とした初夏に産卵します。カメはヘビやトカゲ、鳥などと同じく炭酸カルシウムの殻を持った卵を陸上に産みます。どのカメも後ろ足をスコップのように使って地面に穴を開け、産卵後はその穴(産卵巣)の入り口を後ろ足でこねた土でふさぎます。
野生のカメは夜明けごろ、裸地や田んぼの畦、畑などで、天敵を避けて密やかに産卵をします。しかし公園や社寺の池で人に慣れているカメなら、日中でも平気で産卵することがあります。陸地に上がっているカメを見つけたら、要注意です。境内とか低木の下とか物陰とかで産卵していないか、注意深く観察してみましょう。
多くの生物は、性染色体をどのような組み合わせで持つかによってオスになるかメスになるかが決まります。スッポンはそのように遺伝的に性が決まるのですが、イシガメ、クサガメ、アカミミ、ハコガメ、ヤエヤマイシガメは性染色体を持っておらず、地中に産み付けられた卵がさらされる温度によって性が決まります。高温だとメス、低温だとオスになります。